そういう溜め込んだ感情は、時として、自分ばかりでなく周りをも傷つける「毒」となりえると考えるのが、ジェレミー・メルシエ(Jérémie Mercier)氏。その著書『L'hygiène émotionnelle(感情の衛生)』で、感情を正しく排出することがどれだけ大切であるかを説きます。
溜め込むと毒になる感情L'écolomag紙のインタビュー記事によれば、「感情の衛生」とは、「身体の衛生」と対比させた命名で、メルシエ氏は、その理由を排尿に例えて説明しています。
尿と同じで、感情を入れておく「膀胱」は、定期的に空にしなくてはなりません。ずっと溜め続けていると、何らかの害を生むからです。感情をきちんと表現しないでおくと、毒にもなりかねません。
(中略)
感情を内に引き留めたままにするのは辛いものですし、その痛みのあまり、果ては、周りの人に感情をぶつけてしまったりするのです。最初から感情を排出し、ストレスを緩めておけば、誰を傷つけることもないのです。
(「L'écolomag」より翻訳引用)
個人的な話ですが、これを読んで私が真っ先に思い浮かべたのは、ある身近な女性です。聡明で思いやりのある人ながら、まさしく不満を口にせず溜め込みすぎるところがあるのです。実際、過去に何度か深刻な体調不良を起こしており、ストレスのせいだと診断されてきました。
不満がたまる前に、上手にその感情を排出していれば、彼女も体調不良を起こさずに済んだのではないかと考えずにはいられませんでした。
ネガティブな感情は存在しないメルシエ氏の話で、もう一つ私の心に強く残ったのは、次の言葉です。
ネガティブな感情というものは存在しません。問題があるとすれば、それは、感情を内に引き留めすぎる時か、第三者に向けてぶつけてしまった時だけです。
(中略)
感情というのは必要だからあるんです。
(「L'écolomag」より翻訳引用)
人の心は不思議なもので、普段はどうということはなくとも、気分が落ち込んでいる時は、ネガティブな思考をする自分にさらに落ち込み、ますます悪循環から抜け出せなくなったりします。
そういう時に、メルシエ氏の主張「どんな感情も必要があって生まれ、その存在自体はネガティブではない」ということを思い出せば、救われた気分になるのでないでしょうか。
参考にしたいのは馬の鼻息!では、その感情の排出は、どう行うべきなのか。メルシエ氏がインスピレーションを得たのは、なんと馬の鼻息だそうです。L'écolomag紙に語った氏の説明を短くまとめると次の通り。
1.ひとりきりになれる静かな場所に立ち、心を落ち着ける。
2.深く息を吸い、続いて半開きの唇を震わせるようにして、強めの息を吐く。その時、声が出るのを抑えないこと。しかめっつらでもなんでもしたいと思った表情で。また頭や腕も、思いのままに動かしてみること。
3.2を何度か繰り返す。1日何度行っても良い。
この時注意すべきは、下の3点。
・吐き出す息は、強すぎでも弱すぎでもよくない。
・目を開いたまま行う。
・感情を言葉で表現しない。
数十秒のエクササイズをするだけで、内部のエネルギーの変化を感じられるでしょう。もしかしたら、あくびをしたくなる人もいるかもしれません。エクササイズ前に感じていた感情が、急に遠いものに感じられたら、あなたの「感情の排出」エクササイズは成功です。
(「L'écolomag」より翻訳引用)
私も当然、試してみましたが、一番効果を感じたのは、いろいろしなければならないことが雪崩のように襲ってきて、あー!と叫びたくなったときです。まだ名前のない感情のほうが、上手に出ていってくれるようで、何度か息を吐き出すと、すっきりした気分を取り戻すことができました。
短い時間で簡単にできる感情の排出エクササイズ。これからは、もやもやすることがあるたびに、試してみたいと思っています。
[『L'hygiène émotionnelle』L'écolomag]
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