波照間島へ行ってきました。島はそれぞれ独自の時間の流れがあり、そこにしかない文化や暮らしがあります。船や飛行機やヘリでしか行けませんし、空港のある恵まれた環境の島はとても少ないのが現状です。

島にいるお母さんや子供達はとっても天候に詳しいし、自然の美しさだけじゃなく怖さもよく知っています。島は私にとっては想像しきれない非日常的な場所。私にとってはそこがデザインのアイディアの源でもあります。しかしこの時期の波照間島は非常に過酷なものでした。

ま、まさか、ここか! という様子の場所にある貨物船のチケット売り場。すっかり見落として迷子になりました。 入り口にはなんだか不安になる内容の張り紙が。帰ってこれるのか。 年季の入った貨物船を発見! あまり人を乗せるつもりのない雰囲気が伝わってきます。よく揺れそうです。

2月。石垣島の天気予報は晴れ。でも空は曇り。風は強く、離島ターミナル前のバイクも倒れるくらい。案の定、波照間島行きの高速船は全便欠航。明日帰ってこれるのかという不安と共に最後の手段の貨物船に乗り込みます。この貨物船、かなり年季が入っており乗組員たちも軍隊のよう。かなり揺れるから覚悟しろと強制的にビニル袋をひとりひとり渡されます。いろいろ島を巡っていますがこんなことは初めてだったので、なんだか気が引き締まります。

波照間行きの高速船は以前ご紹介した青ヶ島の船と同じくらいの欠航率の高さで有名。日程に融通が利かない観光客は仕方なく欠航になりにくい貨物船におじゃますることになるのです。石垣島周辺の島と違い波照間島のまわりは海流が違うので急に揺れるようになるそう。船に乗り、しばらくすると上下左右に予測不可能の大きな揺れが襲ってきます。「ガターーン! バーーン!」と、どこかで荷物が激しくぶつかり合う大きな音が続き、波が強すぎて何度も船内に警報ベルがけたたましく鳴り響きます! 渡されたビニール袋にお世話になっている方続出! 揺れすぎてトイレすらいけない! 船の揺れに弱い方は全くオススメできません。

青い海! 日が差したらもっとトロピカルグリーンに光ります。 あいにく雲は多かったのですが、岩の上で寝ている人もいるくらい天国のような場所です。 砂浜もサンゴがたくさん。白くて細かい砂は小麦のよう。 波照間島ならではのマンホール。南十字星が描かれています。 島内の唯一の酒造所、波照間酒造所では、泡盛の中でも製造量が少なく入手困難なことで有名な「泡波」という銘柄を生産している。外まで泡盛の香りがすごい。 波照間島には商店が何軒かあります。入り口には掲示板のように島の情報がたくさん貼られています。

波照間島は有人島として日本最南端の島。島名は「さい果てのウルマ(サンゴ礁)」に由来しています。日本国内では南十字星を観測できる数少ない島で有名です。人口は約490人。すぐ隣は台湾です。信号機もない小さな島ですが、島人達はみんな優しくて気さくな人達ばかり。「よく貨物船で来たねえ。島の人たちは揺れるからみんな乗らないよ」と笑われました。

日本の最南端と言われても、なんだかピンとこないのが正直な所なのですが、この島の人々にとってはこの最南端という価値は日々当たり前の事なのだと思うと、様々な環境下に日本人は住んでいるのだなあと感慨深くなります。 断崖絶壁に打ち付ける波を恐る恐る覗いていると、バスの運転手さんが「一人で何やってるんだー、飛び降りたりしたらいかんぞー」とわざわざ声をかけに来てくれました。女性一人でこんなところにいると勘違いされてしまう様子。 「みんぴか」というカフェではこぼれるほどの大きなかき氷が有名。「波照間黒糖スペシャル」これでもかというほど黒糖ときな粉とミルクが乗ってます!

波照間島の海は日本で一番美しいと言われています。観光客も少なく、サンゴを使った垣が特徴的な集落もゆっくりと時間が流れているかのよう。大きな観光スポットがあるわけではないのですが、沖縄の昔ながらの暮らしを見て、感じることができます。道ではたくさんのヤギが自由に濶歩しており、ところどころでヤギの襲撃に遭います。夜には聞いたことがないほどのカエルの大合唱が優しい風とともに民宿の部屋まで聞こえてきます。本州では雪が降っているというのになんて不思議なんだろう、と一瞬自分がいる場所がどこかわからなくなるような錯覚に。

子山羊の襲撃。かわいい顔をして近づいてきたかと思うと、ハミハミかみついてきてなかなか放してくれません。 道なき道を進めと言われ、進んでみると。 サンゴの墓場と言われる島人しか知らないと言われる場所が! これ一面全部砂ではなくサンゴ! こんな浜、初めて見ました!

全てサンゴで埋め尽くされていました。どれもとてもキレイ。持って帰りたくなっちゃいます。

さて、波照間島は朝から晴れているのに帰りの高速船も欠航となってしまいました。また貨物船に乗って帰ります。帰りの貨物船も早朝から整理券を取りに並ばなくてはいけなく、定員に達すると帰ることができなくなります。船のチケットを取ることも困難な島での生活。島に行くと、船で物資が届くことのありがたさ、本州とのつながりを安定させることの難しさを毎回感じます。

波照間島のベストシーズンは3〜5月と言われています。泳ぐには少し早い気もするのですが、高速船の就航率は一番高いのです。温かい時期に改めて島の方々とゆっくり話をしに伺いたいと思います。

空は青空でも波やうねりがあると高速船は欠航になります。再び揺れながら石垣島に戻ります。

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