しかし糖質ってどんなものに含まれているのか、どのくらい制限すればいいのか、わからなくなっている人も少なくないのでは? そこで今回は、北里大学研究所病院の山田 悟先生に糖質制限の基本について話を伺いました。
糖質はなぜ太るの?
食べ物にはさまざまな栄養素が含まれています。その中で、人間が活動するために必要とするのが炭水化物と脂質、たんぱく質の3つで、これらをまとめて三大栄養素と呼びます。
「『糖質は炭水化物のことだよね』と思っている方も多いかもしれませんが、炭水化物は糖質と食物繊維で成り立っているので、イコールではありません。
また、糖質という字から『糖質は甘いもの』というイメージもありますが、お米や麦などの穀類、いも類などに含まれるでんぶんも糖質のひとつです。ですので、ごはんやパンだけでなく、おせんべいやスナック菓子なども糖質を多く含む食べ物です」(山田先生)
ではなぜ「糖質が太る」とされるのでしょうか。
「糖質は、体の中で基本的にブドウ糖になりますが、ブドウ糖は人間などあらゆる動物が活動するためのエネルギー源となる物質のひとつです。
車やさまざまな機械などの文明が発達する以前は、人間の活動量も大きく、多くのエネルギーを必要としていました。例えば江戸時代以前は、車がありませんでしたので、移動にも膨大なエネルギーが必要でした。その頃は必然的に糖質を多く含む食品が主食に選ばれてきたのです」(山田先生)
しかし、現在は文明が高度に発達して、体をあまり動かさなくてもいい時代になりました。多くのエネルギーを必要としなくなった私たちは、摂取した糖質を消費できず、体の中に余るようになっているそうです。
「糖質で太るのは、この体の中で消費されずに残ってしまった糖質が、インスリンというホルモンの働きで脂肪となり、体内に蓄積されるため。脂肪が多く蓄積されると、インスリンの働きが悪くなり、結果として糖尿病のリスクを大きく上げてしまいます」(山田先生)
やってはいけない生活習慣とは?
現在、太っていなくても30〜40代の女性に糖尿病予備群が増えています。健康にいいと思ってやっていることでも、実は太りやすいか、糖尿病になりやすい生活習慣のこともあるのです。
みなさんはこのような生活習慣をしていませんか。下記のリストをチェックしてみてください。
・朝ごはんにスムージーを飲んでいる ・全粒粉のパンや雑穀米、玄米などを積極的に摂っている ・断食をしたことがある ・朝ごはんを抜くなど、1日の食事が3食以下 ・油ものは控えるようにしている ・甘いものが好きなのでその分食事は控えるようにしている山田先生によれば、これらに共通するのは、すべて血糖値を上げる生活習慣だということ。
「血糖値とは、血中のブドウ糖濃度のこと。糖質の多い食事を摂ると、血糖値は急激に上がります。それをインスリンというホルモンが働いて血糖値を下げます。
糖質の多い食生活を続けると、インスリンを過剰に分泌させることになりますが、これが続くと膵臓が悲鳴を上げ、だんだんインスリンを出す力がなくなって、血糖が高いままとなり、結果として糖尿病になるのです。ですから、血糖値を急激に上下させない食生活が重要なのです」(山田先生)
たとえば、スムージーは、野菜だけならばいいのですが、飲みやすいようにと果物やはちみつなど糖類を加えることが多いため、糖質が多くなるとか。
また、全粒粉や玄米など、精製していないものは健康にいいと思われがちですが、多少のミネラルは摂れるものの、糖質の量自体は変わらないため、それが太る要因だという意外な事実も。
「断食をする、1日の食事が3食以下など、空腹の時間が長いと、体はエネルギーをより取り込もうとするので、血糖値は急激に上がります。断食後に酵素ドリンクを飲むなどもってのほか。酵素ドリンクは糖質のカタマリですので、美容面でも健康面でも何かメリットがあるとは思えません」(山田先生)
健康面だけでなく、美容にも悪影響の「糖化」
「酸化」という言葉を聞いたことがある方も多くいらっしゃると思いますが、最近注目されているのが「糖化」です。糖化とは、体の中のたんぱく質に余分な糖がくっつくことでたんぱく質が劣化し、体を老化に導く物質を作ることで、結果的に体の酸化も導くといわれています。
「酸化が体のサビなら、糖化は体の焦げのようなものです。糖化が起こると、しみが増え、顔にしわができたりと美容面でも悪影響を与えますし、健康面でも糖尿病や高血圧、がんや動脈硬化などの大きな影響があるといわれています。このように糖質は、摂りすぎることで、体に大きな悪影響を与えてしまうことになるのです」(山田先生)
そこで出てきたのが糖質制限という食事法です。糖質制限をすることは、ダイエットにつながるだけでなく、美容面でもたくさんのメリットがあるそうです。
次回は、その方法をご紹介します。
山田 悟(やまだ さとる)先生
医学博士。内分泌・代謝内科部長、糖尿病センター長、予防医学センター長、予防医学科部長、人間ドック科部長、透析センター長、医療社会事業部部長、医療福祉相談室長、医療連携室長。 1994年、慶應義塾大学医学部卒業。糖尿病専門医として多くの患者と向き合う中、カロリー制限中心の食事療法では、食べる喜びが損なわれている事実に直面。患者の生活の質を高められる糖質制限食に出会い、積極的に糖尿病治療へ取り入れている。 日本内科学会認定内科医・総合内科専門医、日本糖尿病学会糖尿病専門医・指導医・研修指導医、日本糖尿病協会療養指導医、日本医師会認定産業医。『緩やかな糖質制限 ロカボで食べるとやせていく』(幻冬舎単行本)、『糖質制限の真実 日本人を救う革命的食事法ロカボのすべて』 (幻冬舎新書)、『忙しい人こそ知っておきたい 糖尿病がわかる本』(法研)など著書多数。