自分の体をきちんと知ろう! をテーマに、増田美加(女性医療ジャーナリスト)さんによる連載「カラダケア戦略術」。前回はPMS(月経前症候群)への賢い対処法、をお届けしました。今回は「更年期に向かう生理の変化と生理不順」についてお届けします。

生理不順の原因& 更年期の生理が乱れるわけは、卵巣にあり!

生理が終わりに近づくサインは、人によって大きく異なります。閉経は、45歳以上で1年間、生理の出血がない状態だと、診断されます。でも、生理の出血が完全になくなる前に、40代になると生理の乱れや変化が生じます。どのような生理のリズムの乱れが生じるのか不安ですよね?

更年期の生理周期の乱れは、卵巣の働きが衰え始めれば、すべての人に必ず起こります。でも、どのように生理周期が乱れるかは、個人差があって、同じような月経異常、月経不順が起こるわけではありません。

でも、ある一定の順序は、あるのです。その秘密は、卵巣から分泌される女性ホルモンにあります。卵巣の中の卵胞は、生まれてから毎年減っていきます。この減り方はひとりひとり異なり、生まれる前の胎児のときにすでに決まっていると言われています。

女性は、生まれるときに、この原始卵胞を卵巣に約200万個蓄えています。しかし、生理が始まる思春期には、約170万個から180万個が自然に消滅し、生殖年齢のころには約20~30万個まで減少しています。その後も1回の生理の周期に約1000個が減り続けていると言われています。

そして更年期には、卵巣の機能が低下して、卵巣から分泌されるエストロゲン(卵胞ホルモン)やプロゲステロン(黄体ホルモン)の量も減ります。

脳がいくら頑張っても、卵巣から女性ホルモンは分泌されない...

女性ホルモンには、エストロゲンとプロゲステロンがあって、卵巣から分泌されますが、実は、卵巣は脳からの指令でコントロールされています

更年期になって卵巣からの女性ホルモン(エストロゲン、プロゲステロン)が減ると、脳はそれを感知し、焦って卵巣に「ホルモンを分泌しなさい!」と脳の視床下部⇒脳下垂体からホルモン(卵胞刺激ホルモン=FSH、黄体形成ホルモン=LH)を分泌させ、指令を出します。

けれども、更年期で卵巣機能が衰え、卵胞の老化、減少が進んでいると、脳がいくら頑張ってFSHやLHを増加させても、卵巣からの女性ホルモンは残念ながら分泌されません。

生理の乱れが自律神経の不調にも関係しています

ホルモンバランスが崩れると、脳は混乱して、自律神経系(体温コントロールにも関係)に乱れを起こし、これがほてり、発汗、冷え、めまい、不眠、うつなどなど、更年期の不調につながります。これが更年期障害の症状の一部です。

最終的には、脳からのホルモンも卵巣からのホルモンも低下し、ほとんど分泌されなくなり、生理の出血がなくなって、閉経します。極めて少量のエストロゲンは、閉経後も脂肪組織などから分泌されていると言われています。

閉経までの月経のパターンは...

さて、この女性ホルモンの分泌が減少していく過程で、生理は、周期や出血量(経血量)などがさまざまに変化して、閉経へといざないます。

その典型例をご紹介します。1~5の順に生理が変化することが多いですが、すべての女性がこの順序で進むわけではありません。

01.正常な生理(月経)

正常な生理の条件は、

自然に始まる(ホルモン剤や低用量ピルなどを服用して起こる出血は月経とはいいません) 生理の開始日から次の生理の開始の前の日までの日数は25~38日。長い周期と短い周期との差が6日以内です。たとえば、ほとんどの月経周期は35日なのに、ときに27日周期があるとすれば、正常とはいえません。 生理が続く日数は3~7日です。 生理は自然に終わる。

02. 生理(月経)周期が短くなる

更年期の生理の変化は、周期が短くなる(頻発月経)ことから始まることが多いです。 たとえば、今まで30日周期だったのが、22~23日周期などと短くなります。 同時に生理の出血量(経血量)が少なくなり、生理が続く日数も短くなります。

周期が短くなる理由としては、

卵巣機能が低下し、卵胞の数が減ると、エストロゲンの分泌量が減るため、脳は視床下部、下垂体からFSH(卵胞刺激ホルモン)を多く分泌します。 すると、卵巣が一時的に刺激され、卵胞の発育が短期間に進みます(卵胞期短縮)。そのため生理から排卵までの期間が短くなり、基礎体温の低温期(卵胞期)が短くなりますが、排卵後の高温期(黄体期)は、この段階では変わらないため、周期が短くなるのです。

まだ、この時期には排卵している可能性があります。ただし、極端に短い周期(15~19日)で生理が来る(頻発月経)場合は、排卵していないことが多いです。

03.生理(月経)期間がダラダラと長く続く

さらに卵巣の機能が低下すると、ホルモンバランスが崩れ、生理周期が長い短いにかかわらず、生理(出血)期間が8日以上続くというケースも出てきます。過長月経と呼ばれています。長い人になると、2週間~1か月も生理が続く人がいます。

プロゲステロンの分泌量が減り、エストロゲンだけが少量分泌され、子宮内膜ができても内膜が厚くならないうちに、すぐに剥がれてしまうので、生理は排卵のない機能性出血のことが多いのです。多くの場合、排卵はありませんが、たまに排卵している場合もあり、どちらとも断定できない状態です。

機能性出血は、更年期世代は閉経に向かう過程でもありますが、若い世代はストレスや生活習慣によるホルモンバランスの乱れで起こることが多いです。

04.生理(月経)周期が長くなる

生理周期が39日以上と長くなり、2か月に1回程度しか出血がない場合もあります(稀発月経)。卵巣機能がかなり衰えた状態です。

でも、「更年期だから......」と自己判断は禁物です。何かの病気による不正出血の可能性もありますので、更年期になっても婦人科検診は年1回は行きましょう。

05.閉経する

最終の生理開始日から1年経っても月経がない場合は、閉経とみなします。

この順序には、個人差があります。2→3→2→4→5などのように行きつ戻りつ、閉経する人もいますし、 2→5といきなり閉経する人もいます。

更年期だからとあなどらないで! 病気が隠れていることも

更年期世代は、隠れた病気による不正出血と、生理的な月経の乱れの区別がつきにくい時期です。年1回は婦人科で、子宮や卵巣を経腟超音波検査などでチェックすることをおすすめします。

出血が長引く場合は、子宮筋腫や子宮内膜症、子宮体がん、子宮頸管ポリープなどの病気が原因のこともあります。また、周期が短い生理が長期間続くと、貧血の可能性がありますので注意が必要です。

40代からの体の変化を、これから30年、40年、50年の人生を楽しく、元気に生きるためのいいきっかけにしましょう!

増田美加(ますだ・みか)さん女性医療ジャーナリスト。 2000名以上の医師を取材。予防医療の視点から女性のヘルスケア、エイジングケアの執筆、講演を行う。乳がんサバイバーでもあり、さまざまながん啓発活動を展開。著書に『医者に手抜きされて死なないための 患者力』(講談社)、『女性ホルモンパワー』(だいわ文庫)ほか多数。NPO法人みんなの漢方理事長。NPO法人乳がん画像診断ネットワーク副理事長。NPO法人女性医療ネットワーク理事。NPO法人日本医学ジャーナリスト協会会員。公式ホームページ http://office-mikamasuda.com/

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