いろいろな研究結果をみてみると!
まず、もし牛乳が骨の健康のために大切なら、乳糖不耐症の人は骨粗しょう症の率がずっと高くなるはずですし、骨ももろかったり弱かったりするはず。でも、アメリカ連邦厚生省の国立衛生研究所によると、乳糖不耐症と骨の弱さの関係についての医学的根拠にはブレがあるといいます。
医療専門誌『BMJ』の2014年版に掲載された研究によると、牛乳の大量摂取(1日コップ3杯以上)はむしろ女性の場合は高い骨折リスクと関連していることがわかっています。ただし、これは女性の場合のみで男性の場合はそうではないそう。さらに『BMJ』の研究は、牛乳の摂取量と酸化ストレスマーカーや炎症マーカーに相関関係がみられることを示しています。
これはWEBサイトでよく投稿されている、牛乳は酸を生成する食品のため、炎症をうながしたり、骨を壊したりしてしまう、という内容とも合致しています。
乳製品をやめるのは少し待って
でも乳製品は体内で酸を生成する、という主張はインチキです。牛乳はむしろ、消化後の乳酸を減らすと、『American Journal of Clinical Nutrition』の研究では示している。つまり、牛乳が体内の酸性度を上げて、骨に影響を与えるということは正しくありません。
また、そもそも『BMJ』の研究の発見を疑問視する専門家もいます。これは、この研究が牛乳の大量摂取といくつかの骨の問題との関係しか示してないためです。そため、牛乳を飲むことが要因になっているとは証明できません。
「その他の研究の多くを見ると、毎日牛乳を飲むことはむしろ、ミネラル量を増やしたり、将来的な骨量の減少を防いだりしてくれるということを示しています」と話すのは、ハーバードメディカルスクールの加齢を研究する研究所の栄養プログラムのディレクター、シヴァニー・サーニ医学博士。
乳製品の摂取量と骨の健康に関する研究の監修経験があるサーニー医学博士は、牛乳を飲むことで、骨のミネラル量や骨密度が改善されるだけでなく、「乳製品の摂取は骨粗しょう症による骨折、特に大腿骨の骨折を防いでくれます」と話します。
『American Journal of Clinical Nutrition』に2017年に発表された論文の結果では、牛乳は高齢女性の骨には特によいというものもあります。この論文では、閉経後の女性が毎日乳製品をとったところ、乳製品をあまりとらなかった人に比べて骨が強いということがわかりました。
「強い骨と健康的な筋肉にはタンパク質とカルシウムが必要」というのはスイスのジュネーブ大学で骨にかかわる疾患を専門とするレネ・リッゾーリ教授。乳製品以外もタンパク質やカルシウムも含むものはありますが、乳製品ほど手ごろに摂取しやすいものはない、というのがリッゾーリ教授の意見です。
乳製品に含まれるのはタンパク質とカルシウムだけではない
リッゾーリ教授もタンパク質とカルシウムが強い骨をつくるのに大切であることには賛成しています。でも、乳製品にはどちらも豊富に含まれていますが、それだけなく、カリウムやマグネシウムが含まれていることもよい点だと指摘しています。これは、カリウムやマグネシウムが、骨が弱くなったり、折れたりすることを防いでくれるためです。
さらにそれだけでなく、ヨーグルトのように発酵させ乳製品に含まれるプロバイオティクスが腸内の細菌やカルシウムの吸収を左右する点も見逃せない。ただし、こちらに関してはさらなる研究が必要でが、骨の健康のためには毎日ヨーグルトを食べることは確かによさそうです。
では、1日どのくらい乳製品をとればよいのでしょうか。乳糖不耐症でなければ、アメリカ食事ガイドラインは、1日3食分、つまり約3カップ分を食べることをすすめています。
「乳製品に関しては、いろいろな説があるけれど、今ある研究結果を見るかぎり、毎日乳製品をとると骨が弱くなったり、折れたりすることへの予防にはなると言えそう」とサーニー医学博士は結論づけます。
Markham Heid / Is It A Myth That Dairy Builds Strong Bones?
訳/Noriko Yanagisawa