でも、個人に合わせた食事法のすべてが、専門家から認められているわけではありません。このところ議論の的になっている食事法は「血液型ダイエット」。
血液型ダイエットの考え方はシンプルなもの。遺伝子が体重や食べ物の消化能力などに影響を与えるのと同じように、理論的には、血液型も影響するというものです。
血液型ダイエットとは?
自然療法医で代替医療研究者のピーター・ダダモさんが開発した食事法で、血液型別に(A、B、O、AB)異なる食べ物の取り方を提唱したもの。
例えば、ダダモさんの研究によると、血液型がA型の人は心臓の病気、がん、糖尿病になりやすいとされます。そのため、A型の人は「免疫系を強化するために」「新鮮、清浄、かつオーガニックな」食べ物に重点を置いたベジタリアン食がおすすめ。
一方、O型の人には動物性たんぱく質が健康の元。ダダモさんのウェブサイトに書かれているその理由は、「この血液型は、たんぱく質と脂質の両方を含む肉類を消化する能力がとてもよく発達している」から。
減量については、ダダモさんのウェブサイトによると、それぞれの血液型で作用するレクチン(免疫系を悪化させ、炎症を助長し、ホルモンを混乱させると考えられているたんぱく質)を含む食品をやめて、おすすめの食品に代えれば、エネルギーが高まり、体重を落とす役に立つそう。
血液型別ダイエットの詳細
A型:ベジタリアンの食べ物を自然な状態で食べる(新鮮かつオーガニック)。 B型:チキン、トウモロコシ、小麦、ソバ、レンズ豆、トマト、ピーナッツ、ゴマを避けて、緑黄色野菜、卵、低脂肪の乳製品、ラムや鹿肉などの肉類をもっと食べる。 O型:脂肪の少ない肉類と健康的な脂質をたっぷり摂り、穀類、豆類、乳製品を取らない。 AB型:カフェイン、アルコール、肉類の燻製や塩漬けを避ける。減量には豆腐、海産物、発酵乳製品、緑黄色野菜などの食品に重点を置く。血液型ダイエットは、減量と健康改善に役立つの?
「血液型別ダイエットの前提は、みんなにまったく同じ食べ物をすすめてはいないという点で興味深いものです」と、国際食品情報協議会(IFIC)財団の栄養情報伝達部シニアディレクターで管理栄養士のクリス・ソリッドさん。
理屈としては、血液型ダイエットは減量に役立つ可能性はあるのです。「どんな食事法でも、減量につながります。ただし、取るカロリー量、年齢、どれくらい活動的かが関係しますが」とソリッドさん。そして、もっと重要な点として、ある食事法がその人にとって本当によいかどうかを決めるのは、減量できることだけではありません、という指摘も。
血液型ダイエットを詳しく調べてみると、科学的な裏付けに乏しいとわかります。「個人の血液型と特定の食べ物との相互作用が体重とどのように関連するのか、裏付けになる説明はないのです」と、認定肥満医のナンシー・ラーナマさん。
臨床栄養学の有力誌『アメリカン・ジャーナル・オブ・クリニカル・ニュートリション』で報告された2013年のレビュー研究(これまでのさまざまな研究を見直したもの)によると、「血液型ダイエットが主張する健康効果を裏付ける証拠は今のところ存在しない」という見方です。
翌年には、血液型ダイエットで心臓病と糖尿病に関連する健康マーカー(コレステロール値や血圧など)が改善されるかどうかを調べた研究が、科学雑誌『プロス・ワン』で報告されました。1400人以上のデータを分析した結果、A型用やO型用など血液型別の食事法と同じ内容の食事を摂っていた人で、BMIや血圧が下がるといったよい効果が確かに見られたのですが、それは血液型とは無関係だったのです(つまり、その人の血液型と食事法が合っていない場合でも、効果が見られたということ)。
さらに、アメリカ栄養学会(ASN)が発行する専門誌『ジャーナル・オブ・ニュートリション』で報告された2018年の研究によると、体重が多すぎる成人で血液型別の食事法と同じ内容の食事を摂っていた人でも、特に健康効果は見られませんでした。
血液型ダイエットの主張では、A型の人はベジタリアン食で健康に。血液型ダイエットは効果があるの?
血液型ダイエットに関しては全体的に証拠が不足しているにもかかわらず、科学的な裏付けのある要素も含まれています。例えば、A型の人にすすめられている植物系の食事にはそれなりの利点が。ただし、A型ではない人にも。アメリカ栄養士会(ADA)によると、ベジタリアン食は栄養が豊かで、たいていは低カロリーですから、特定の病気の予防になり、減量につながるのです。
また、すべての血液型にわたって加工食品は避ける方がよいとされていますが、これは害になるはずがありません。有名医学誌のインターネット版、BMJオープン誌で報告された研究によると、本物に似せるために普通は調理に使用されない物質(例えば、乳化剤や着色料などの添加剤)を加えた「超加工」食品は、アメリカ人が摂る総カロリーの60%近くを占め、加糖から取るカロリーの90%を占めているとか。
「裏付けとなる証拠が足りなくても、血液型ダイエットを試した多くの人が、実際に調子がよくなったと感じています。それはジャンクフードや加工食品、砂糖を避けた健全な食事になるためです」と、ラーナマさん。重要な注意点は、それが血液型とは無関係だということ。
もうひとつ、血液型ダイエットは健康的とは言えない食習慣につながりかねないと覚えておく方がよさそう。「栄養面では、血液型ダイエットのような制限食や、ある食品グループ全体を食べない食事法は、何らかの栄養素が足りなくなる危険があります」とソリッドさん。
ラーナマさんも、各血液型にすすめられている食事法を、健康によいと科学的に証明されているほかのやり方より優先させてはいけないと同意しています。例えば、「グルテンを摂っても大丈夫とされている食事法もありますが、どの血液型でもグルテンアレルギーの人はいます」
自ら血液型ダイエットを試したソリッドさんによると、主張を裏付ける研究がない、そして主張に反対する証拠がある、そこに大きな意味があるそう。「証明できない主張よりも、常に証拠が重要です。おそらく最も多くを語っているのは、アメリカの保健福祉省(HHS)と農務省(USDA)が2年ごとに発表している『アメリカ人のための食生活指針』最新版で血液型ダイエットにまったく触れていないこと、そしてそれには理由があるということです」(ソリッドさん)。
結論として、血液型ダイエットを試す方がいい?
食事の支度をするときに血液型を気にする必要はないというのが結論。ラーナマさんが代わりにすすめるのは、「健全に食べることに重点を置いた、たんぱく質、新鮮な果物、野菜が豊富な食事。調子がよくなって、体重が減るすばらしい方法です」。
Macaela Mackenzie/The Blood Type Diet: Can Eating Based on Your Genetics Help You Lose Weight?