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フランスの古代小麦「プチ・エポートル」の魅力とレシピ【TOKYO VEGAN】
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フランスの古代小麦「プチ・エポートル」の魅力とレシピ【TOKYO VEGAN】

2018-07-20 05:30
    先日、南フランスを訪れた際、Sault(ソー)という村で、ある穀物にときめきました。

    小粒に秘められた魅力的な香りと味。今回は、わたしがすっかり夢中になってしまった「Petit Epeautre(プチ・エポートル)」についてご紹介します。

    南フランス高原地帯の宝物

    Sault(ソー)のラベンダー畑のなかで、農家さんが経営するレストランでいただいた魚料理に添えられていたリゾットが、プチ・エポートルとの出会いでした。

    生クリームと塩だけで味つけたシンプルなリゾットでしたが、口に運んだときの印象的な香りと噛むほどに深い味に、思わず声が漏れました。あくまで個人的な印象ですが、焼きたてのブリオッシュのような香ばしさ。キヌアより大きく米より小粒で、蕎麦の実のような歯ごたえがあるそれが、プチ・エポートルという名の穀物でした。

    ソーは、どこまでも広がるラベンダー畑で有名な、南フランスの高原地帯。上質な精油は標高700m以上で育ったラベンダーからでないと採れないそうですが、ラベンダーと同様に、プチ・エポートルもソー村周辺の気候だから栽培できるとのこと。この地が産んでくれた宝物ですね。

    ソー村のお菓子屋さんにはプチ・エポートルの粉で作ったビスケットも販売されており、それはそれはよい香りで、驚くほどサクサクでした。

    食事パンにも「Petit Epeautre」の文字が。お菓子屋さんのマダムに聞いてみたところ、プチ・エポートルは「古代小麦」の一種で、栄養豊富でグルテンが少なくヘルシーだと、いま、フランス国内で人気急上昇中だそうです。

    古代小麦とは?

    「古代小麦」とは、英語で「Spelt(スペルト)小麦」とも呼ばれる、現在の一般的な普通小麦の原種にあたる古代の穀物。最近の研究によって、9000年以上も前にヨーロッパで栽培されていたことが証明され、それが現在発見されているなかで最も古い農耕の歴史とのこと

    ちなみに、ラスコーの壁画で有名なクロマニョン人が洞窟で暮らしていたのは1万年前と言われています。そこから1000年の間に農耕文化が芽生えて、小麦は人類史とともにあったのだと思うと感慨深いですね……!

    スペルトは、イタリアでは「Farro(ファッロ)」と呼ばれ、ドイツでは「Dinkel(ディンケル)」、スイスでは「Spelz(スペルツ)」、フランスでは「Epeautre(エポートル)」と呼ばれています。 そのフランス産古代小麦の種類のひとつが、プチ・エポートルです。 もともと、古代小麦はとても強い植物で、天候異変や土壌条件に対処することができ、またとても分厚い皮殻の為、汚染物質や昆虫から内部の穀粒を守り、化学肥料や除草剤といった農薬を殆ど使用せず栽培することが可能なのだそうです。

    ソー村の農家さんがプチ・エポートルの畑へ案内してくださったのですが、確かに力強いエネルギーを感じました。南フランス特有の山から吹く強い風のおかげもあって、農薬は一度も使用していないとのこと。収穫1ヶ月前の鮮やかな緑が、本当に美しかったです。

    さらに、古代小麦の栄養価は、現代の小麦よりもたんぱく質、アミノ酸、ビタミンB、ミネラル、食物繊維、ポリフェノールを多く含み、水溶性が高いことから、これらの栄養素をすばやく身体へ吸収できるとも言われています。 普通の小麦とは少し違うグルテンの性質を持っているため、グルテン量が少ないとされていたり、小麦アレルギーが発症しにくいとも言われたりすることもあるようです。

    今一般的に手に入れられる小麦粉は、良質、安定、多量収穫の目的で品種改良が施されたものなので、この古代小麦とはかなり違う作物になっているよう。 日本でも「古代小麦」「スペルト小麦」という名前で、パンやお菓子などに使われていることがありますので、出会ったらぜひ食べてみてください! (参考:西尾製粉株式会社HP

    簡単&おいしいレシピ「プチ・エポートルのタブレ」

    「タブレ」という、たくさんの刻み野菜と合わせるお惣菜をご存知ですか? フランス各地で食べられている一般的なタブレは、トマトやきゅうり、玉ねぎなどのみじん切りと、クスクス(極小パスタ)をオリーブオイルやハーブと合わせて混ぜたものなのですが、写真のタブレ、南フランスで出会ったシェフのレシピはクスクスではなく、プチ・エポートルでした。 前菜として出されたそのタブレは、独特の歯ごたえと深い味でご馳走の一皿でした。

    <シェフ直伝レシピ “プチ・エポートルのタブレ”>

    沸騰させた塩水で、プチ・エポートルを30〜40分茹でる。その間にトマト、きゅうり、エシャロット(なければ赤タマネギ)、タマネギを5mm角に刻んでおく。 プチ・エポートルの芯がなくなったらOK。茹であげたプチ・エポートルに塩をふり、刻んだ野菜を混ぜる。 多めのオリーブオイルにマスタードと塩・胡椒、少量のヘーゼルナッツオイルとアボカドオイル、ディルなど好みのハーブの葉を加え、よく混ぜる。 2に、3を合わせて全体を混ぜたら完成。

    プチ・エポートルは日本ではなかなか手に入らないのですが、プチ・エポートルを大麦やもち麦に置き換えても美味しい! 雑穀のタブレを楽しんでみてください。

    Vegan(ヴィーガン)とは、完全菜食。 動物性のものを一切使わないライフスタイルや、そのような食事のことをさす言葉。 本連載『TOKYO VEGAN』では、おうちでつくれるVeganレシピのほか、おいしい野菜や調味料、世界のVegan事情についてなどをゆるゆると綴っています。

    大皿彩子 Saiko Ohsara
    Alaska zwei 店主 / 株式会社さいころ食堂代表、“おいしい企画”専門のフードプランナー。Veganカフェ「Alaska zwei」の運営のほか、食に関わるブランドプロデュース、レシピ開発、空間コーディネート、イベントのトータルコーディネート等を行う。saikolo.jp

    RSSブログ情報:https://www.mylohas.net/2018/07/171571petit_epeautre.html
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