何が最初の引き金となって細胞の突然変異が起こり、乳がんになるのか。その点については、専門家の間でもまだ完全に明らかになっていません。ですが、乳がんのリスクを高めるいくつかの要因については、はっきりしています。
乳がんを引き起こすリスク要因は、ふたつのカテゴリーに分けて考えます。それは、ライフスタイルと遺伝的な要因。「乳がんに関しては、自分で変えられることと、変えられないこと、このふたつに分けて考えます」と、オハイオのクリーブランド・クリニックのがん専門医で、クリーブランド・クリニック・ラーナー医科大学の内科で助教をつとめるミーガン・クルーズさん。「リスク要因には、生まれつきのものと、自分で何か対策できるものがあります」。
ただし、乳がんのリスク要因をいくつか抱えているからといって、必ず乳がんにかかるとは限りません。逆に言うと、リスク要因がまったくないからといって、100%乳がんにかからないわけでもない、ということ。
それでも、乳がんのリスク要因を知ることは、乳がんの予防に役立つはずです。乳がんを引き起こすリスク要因をご紹介します。
飲酒 太りすぎ、肥満 運動不足 出産年齢が遅い 授乳の経験がない ホルモンを利用した避妊法 閉経後にホルモン療法を受けた 女性であること 加齢 特定の遺伝子を受けついだ 乳がんの家族歴がある 乳がんになったことがある 人種、民族 デンスブレスト(高濃度乳腺) 初経年齢が早かった 閉経が55歳をすぎていた 子供のとき、胸部に放射線を浴びた 合成女性ホルモンDESの影響01. 飲酒
週に数杯のお酒でも、女性が乳がんになるリスクの増加につながります。
米国がん協会によると、1日にお酒を2、3杯飲む女性は、お酒を飲まない女性に比べて、乳がんにかかるリスクが20%高くなるとのこと。お酒を飲むと体の中でエストロゲンの量が増えるので、乳がんにかかるリスクが高くなると考えられています。
02. 太りすぎ、肥満
「肥満は特に閉経後の女性にとって、リスク要因になります」とクルーズさん。
閉経する前は、エストロゲンのほとんどは卵巣で作られています。でも、卵巣でエストロゲンが作られなくなると、脂肪組織からホルモンを取り入れることに。その際、脂肪の量が多すぎると、エストロゲンの量が多くなって乳がんになるリスクが高くなるのです。
また、太りすぎの女性は、血液中のインスリンの量が多い傾向があり、そのことも乳がんにつながります。「理想の体重に近づけば近づくほど、乳がんにかかるリスクは小さくなります」とクルーズさん。
03. 運動不足
特に閉経後の女性が定期的に運動すると、乳がんにかかるリスクが小さくなるということが明らかに。
どのくらいの運動量が必要かということはまだ明らかになっていませんが、複数の研究において、週に数時間の運動でも効果があるとの結果が示されました(もう少し多いのが望ましいようですが)。
04. 出産年齢が遅い
「出産したことのない女性や、30歳を過ぎてから子供を産んだ女性については、乳がんにかかるリスクがわずかに上がります」とクルーズさん。
妊娠による影響というのは、乳がんの種類によって違うようです。例えば、「トリプルネガティブ」と呼ばれるタイプの乳がんについては、リスクが上がるとみられています。
05. 授乳の経験がない
母乳で赤ちゃんを育てると、乳がんになるリスクがわずかに小さくなるということがいくつかの研究によって示されました。
特に、1年半から2年授乳するとよいそう。授乳によって生理の回数が減るからだと考えられています。
06. ホルモンを利用した避妊法
ホルモンを使った避妊法としては、経口避妊薬、注射、IUD(子宮内避妊用具)などがありますが、これらに含まれるホルモンによって、乳がんにかかるリスクが高くなる可能性があります。
07. 閉経後にホルモン療法を受けた
エストロゲンとプロゲステロンを使ったホルモン療法を受けると、更年期の症状がやわらぎ、骨粗しょう症を防ぐ効果が期待できますが、乳がんにかかるリスクと、乳がんが原因で死亡するリスクが高くなることがあり、注意が必要です。
また、がんの発見が遅れ、ステージが進行してからとなってしまったり、心臓病、血栓症、脳卒中になったりする可能性も高くなります。米国がん協会によると、このようなリスクはホルモン療法による効果を上回ることがあるので、ホルモンを使った治療を始める前に、必ず担当の医師とよく相談するように、とのこと。
08. 女性であること
「乳がんは、ホルモンによって引き起こされるがん。多くの場合、エストロゲンの影響によってがんが進行します──ということは、そもそも女性であることが一番のリスク要因だと言えるのかもしれません」と、シアトル・キャンサー・ケア・アライアンスのがん専門医で、フレッド・ハッチンソンがん研究センター臨床研究部門で客員研究員をつとめるジェニファー・シュペヒトさん。
09. 加齢
年齢とともに、乳がんにかかるリスクは高くなります。
乳がんは、55歳以上の女性に多くみられます。
10. 特定の遺伝子を受けついだ
乳がんの症例のうち、だいたい5%~10%が遺伝によるもので、親から受け継いだ遺伝子の欠陥(突然変異)が原因であると考えられています。
特に、BRCA1とBRCA2という突然変異の遺伝子が、遺伝性の乳がんの原因としてよくみられます。
11. 乳がんの家族歴がある
全米がん協会は、乳がんにかかったほとんどの女性(10人のうち約8人の女性)に家族歴がないとはっきり言っています。
でも、一親等(母、姉妹、娘)の血親者のうちひとりが乳がんになったことがあるという場合、乳がんにかかるリスクは2倍近く高くなり、ふたり以上いた場合だとリスクは3倍になります。
なお、全体としてみれば、乳がんにかかった女性のうち、乳がんの家族歴があるのは15%未満。
12. 乳がんになったことがある
片方の乳房が乳がんになると、もう片側の乳房、または同じ乳房の別の部位で新たにがんの発生するリスクが高くなります。
若い女性については、乳がんになるリスクは低いのですが、乳がんにかかった場合にこの傾向がより強くみられます。
13. 人種、民族
白人の女性は、アフリカ系アメリカ人の女性に比べて、わずかに乳がんにかかりやすいことが明らかになっています。
でも、45歳未満の女性にかぎると、乳がんはアフリカ系アメリカ人の女性により多くみられます。また、どの年代においても、アフリカ系アメリカ人の女性のほうが、乳がんが原因となって死亡することが多くなっています。
アジア系、ヒスパニック系、ネイティブアメリカンの女性については、乳がんにかかるリスク、乳がんが原因となって死亡するリスクがともに低くなっています。
14. デンスブレスト(高濃度乳腺)
乳房は、脂肪組織、線維組織、腺組織からできています。
マンモグラフィーによる検査で、腺組織と線維組織が多くて脂肪組織が少ないと、「デンスブレスト(高濃度乳腺)」であると言われることがあります。全米がん協会によると、デンスブレストの女性は、乳房の密度が平均的である女性に比べて、1.5~2倍乳がんにかかりやすいとのこと。
15. 初経年齢が早かった
初経が12歳未満だと、一生のなかでよりたくさんの月経周期をむかえることになり、多くのエストロゲン、プロゲステロンにさらされるので、乳がんにかかるリスクが高くなります。
16. 閉経が55歳をすぎていた
逆に言うと、閉経が55歳すぎだと、より多くの月経周期を経験したことに。
エストロゲンとプロゲステロンにさらされる期間が長くなるので、乳がんにかかるリスクが高くなります。
17. 子供のとき、胸部に放射線を浴びた
「小児がんの治療のため、胸部に放射線を浴びると、その後乳がんにかかるリスクが明らかに高くなります」と、シュペヒトさん。
特に、乳房がまだ成長している途中のティーンエイジャーや若い女性が放射線を浴びた場合、リスクが高くなります。
18. 合成女性ホルモンDESの影響
ジエチルスチルベストロール(DES)という、エストロゲンに似た作用を持つ薬があります。1940年代から1970年代初頭にかけて流産を予防するために用いられた薬ですが、使用すると乳がんにかかるリスクがわずかに高くなります。
全米がん協会によると、母親が妊娠中にDESを飲んだ場合、その娘が乳がんにかかるリスクもわずかに高くなるとのこと。
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