自分の体をきちんと知ろう! をテーマの連載「カラダ戦略術」。前回は「卵巣の腫瘍って怖い病気?!」について、お届けしました。今回は、「生理痛で注意すべき症状と病気」について、女性医療ジャーナリストの増田美加がお伝えします。 image via shutterstock

あなたの生理痛をチェック!

だれもが経験したことのある生理痛。生理痛は、婦人科でとても多い悩みです。まずは、あなたの生理痛をチェックしてみてください

□生理のとき、痛み止めが必要。
□生理痛がだんだんひどくなってきた。
□生理で家事や仕事など、普段の生活に支障がある。
□生理以外にも腰痛や下腹部痛がある。
□排便やセックスのときに痛みがある。
□市販の痛み止めだとあまり効果がない。
□痛みのために座ったり、横になったりする。
□つらい痛みが長く続く。
□頭痛や吐き気もあり、頭がボーっとしてしまう。
□痛みで食欲がなくなる。

いかがでしたか? このうちひとつでも当てはまる項目があったら、我慢したり、市販の鎮痛剤だけで済ませたりせずに、婦人科で治療したほうがよい生理痛です。

つらい生理痛は“月経困難症”の可能性が!

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つらい生理痛は、月経困難症という病気です。

月経困難症とは、生理期間中に生理にともなって起こる病的な症状。その症状は、下腹部痛、腰痛などのような一般に生理痛と呼ばれるものに加えて、おなかの張り、吐き気、頭痛、疲労、脱力感、食欲不振、イライラ、下痢、憂うつなども含まれます。

主な原因は、厚くなった子宮内膜を排出するために、子宮の収縮を促す物質(プロスタグランジン)の過剰な分泌です。

月経困難症には、2種類あることを知っていますか?

「機能性月経困難症」と「器質性月経困難症」と言われるものです。

隠れた病気が原因にある“器質性月経困難症”とは?

「機能性月経困難症」は、特別な原因となる病気があるわけではありません。子宮や卵巣が未成熟であることや、冷えやストレスが原因と考えられます。思春期から20代前半に多く見られるのがこの機能性月経困難症です。

もうひとつの「器質性月経困難症」は、原因となる病気があるために起こるものです。原因となる病気は、「子宮内膜症」「子宮腺筋症」「子宮筋腫」などです。20代後半から多くなり、痛みの症状は、生理初日~3日目ごろを過ぎても続き、生理期間以外に痛みが生じることもあります。

強い痛みがある人、生理の血液量が多い人、痛みが少しずつひどくなってきている人は、器質性月経困難症の可能性があります。

原因となる子宮腺筋症、子宮筋腫、そして、子宮内膜症とは?

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「子宮腺筋症」は、子宮の内側にある子宮内膜の組織が、子宮の筋層内に潜り込んでしまい、増殖する病気です。激しい痛み、生理の血液量の増加、それによる貧血など、さまざまな症状が起こります。

「子宮筋腫」は、子宮の壁にある筋肉の一部が異常に増殖してできる良性の腫瘍です。生理の出血量の増加、生理の血液にレバー状のかたまりがあるなどの症状があります。

器質性月経困難症の原因として、いちばん多く見られるのが「子宮内膜症」です。子宮内膜症とは、本来、子宮の内側にしか存在しないはずの子宮内膜の組織が子宮以外の部位である卵巣・ダクラス窩(か)・腸・腟・外陰部・膀胱(ぼうこう)・腹壁(ふくへき)などにできる病気のことです。閉経まで長期的に続く慢性疾患です。不妊の大きな原因にもなります。

子宮内膜症は10代~50代の女性の約10~20%に!

子宮内膜症の数は多く、初潮から閉経までの女性の約10~20%に子宮内膜症があると言われています。妊娠したことのない女性に多いのですが、まだはっきりとした原因は解明されていません。

子宮以外の場所でも、子宮内膜ができると、子宮と同じ変化が起こり、生理期になると剥離(はくり)、出血し、ひどい痛みが起こります。

前回紹介した、チョコレート嚢胞は、卵巣にできた子宮内膜症のことを言います。

食事や生活スタイルの変化もかかわっています

子宮内膜症は、現代女性に増えている病気です。食事、ライフスタイルの変化や妊娠出産が少なくなって、生理をくり返す時期が長くなったことも、影響を受けています。

閉経すると、子宮内膜症の組織からの出血がなくなるので、チョコレート嚢胞は少しずつ小さくなります。ただし、卵巣の中のチョコレートのような液状のものは消えますが、内膜症の組織だけは、閉経後の女性でも3~5%に見つかると言われています。

40代以降、卵巣がんになるリスクが高まります!

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前回も紹介しましたが、重要なことなので、ここでも紹介します。このチョコレート嚢胞が心配なのは、40代以降に、がん化する(悪性になる)可能性が高まることです。

日本で、たくさんのチョコレート嚢胞の患者さんを経過観察したところ、0.7%~1.0%の頻度で卵巣がんが発生したと報告されています。

チョコレート嚢胞と診断された年齢が45歳未満なら、悪性化するまでの年齢が3年~16年ありますが、45歳以上の年齢だと、1年~3年という短い時間で卵巣がんになっているというデータもあります。さらに50歳以上では、チョコレート嚢胞が卵巣がんを合併する頻度は、22%~45%と非常に高い確率です。

45歳以上でチョコレート嚢胞がある人、チョコレート嚢胞の最大直径が10センチ以上の人、閉経後の人は、注意が必要です。特に40歳以上でチョコレート嚢胞が少しずつ大きくなっている場合や、閉経後にもかかわらずチョコレート嚢胞が小さくならない場合は、婦人科できちんと相談して手術を含めた治療を考えたほうがいい

*参考文献/日本エンドメトリオーシス学会誌30巻(2009)「卵巣チョコレート嚢胞の癌化―その発生メカニズムと鑑別診断―」小泉孝四郎(近畿大学奈良病院)より

ホルモン療法や漢方薬でも治療できます

子宮内膜症の治療法としては、手術以外に、ホルモン療法や漢方薬があります。

子宮内膜症があって年齢が20代~30代なら、ファーストチョイスで低用量ピルがよいと言われています。40代以降で、低用量ピル服用が初めての場合は、血栓症のリスクが若干あるので、ほかのホルモン療法(黄体ホルモンや偽閉経(ぎへいけい)療法など)のほうがいいとされています。

また、漢方薬は、生理痛ほか、女性のマイナートラブルに効果があります。ホルモン剤との併用も可能です。

しかし、ホルモン療法や漢方薬で治療しても症状がつらい場合や、さきほどあげたような卵巣がんになるリスクのあるチョコレート嚢胞がある場合は、手術も考えることが大切です。

予防のためにもひどい生理痛を放っておかない!

ひどい生理痛は、病気の可能性が高いです。放っておかないことがとても大事です。

そして、生理痛の段階できちんと治療していくことが、子宮筋腫や子宮腺筋症、子宮内膜症やチョコレート嚢胞を悪化させず、チョコレート嚢胞から卵巣がんへの予防とも言えます。

また、特に症状はなくても、年1回は婦人科検診のために、婦人科にかかることは大事です。

増田美加・女性医療ジャーナリスト
予防医療の視点から女性のヘルスケア、エイジングケアの執筆、講演を行う。乳がんサバイバーでもあり、さまざまながん啓発活動を展開。著書に『医者に手抜きされて死なないための 患者力』(講談社)、『女性ホルモンパワー』(だいわ文庫)ほか多数。NPO法人みんなの漢方理事長。NPO法人乳がん画像診断ネットワーク副理事長。NPO法人女性医療ネットワーク理事。NPO法人日本医学ジャーナリスト協会会員。公式ホームページ

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