ここ数年でも菌に関する研究が進み、目に見えない菌たちが、私たちの美しさと健康に大きく貢献してくれていることがわかってきました。
では、どうしたら、菌といい関係になって恩恵をたっぷり受けられるのでしょうか。美しくありたい女性にさらに注目してほしいのは「皮膚常在菌」だと話すのが、肌育成スペシャリストの川上愛子さん。
川上さんの著書『皮膚常在菌ビューティ!』(ワニブックス)を参考に、美肌づくりを助ける菌のパワーと増やし方を見ていきましょう。
私たちは皮膚常在菌を飼っている
川上さんは、「皮膚科学+化粧品成分学」という科学的根拠と経験則を合わせて、2万人以上をスキンケア・カウンセリングしてきた肌育成のスペシャリスト。本書は、菌を擬人化してキャラクターにした漫画を交え、わかりやすく展開していきます。
一般的に、人間にとって良い働きをしてくれる菌を「善玉菌」、害を及ぼす菌を「悪玉菌」、環境によって人体にとって良くも悪くもなる菌を「日和見菌」と呼んでいます。
『皮膚常在菌ビューティ!』16ページより引用
川上さんによると、腸内環境と同じように、皮膚にも良い菌、悪い菌があるということ。
その代表的なものが、肌をツヤツヤ&弱酸性に保つ善玉菌の「表皮ブドウ球菌」と、弱酸性バリアが弱まったときに乾燥や化膿を引き起こす悪玉菌の「黄色ブドウ球菌」。
そして、普段は天然保湿成分を作り出し美肌に貢献しているものの、皮脂が過剰に分泌されて毛穴が詰まると炎症を引き起こしてニキビを作る日和見菌の「アクネ菌」があるのだそう。
(右より)善玉菌「表皮ブドウ球菌」のひょうくん、日和見菌「アクネ菌」のあっくん、悪玉菌「黄色ブドウ球菌」のおうちゃん(資料提供:ワニブックス)美肌への近道は、菌にとって「よい宿主」になること、と本書の中で記されています。しかし、単純に殺菌や除菌をして悪玉菌を減らせばいいかというと、そうでもないようです。
殺菌や除菌は、同時に善玉菌やアクネ菌も倒してしまうことになるので、善玉菌が元気になる環境を作っていくことが肌のためにはよいのだと、川上さんはいいます。
休日は、むしろ顔を洗わないほうがいい!?
それでは、本書のなかで「美肌製造責任者」と喩えられている表皮ブドウ球菌をうまく働かすには、どうすればよいのでしょう?
「しっかりと休んで体のなかからいい分泌をすることが、もっとも効果的な美肌作りにつながる」と川上さんは言います。汗と皮脂がバランスよく出ている状態が、善玉菌にとってベストな環境なのだとか。
本書には、皮膚常在菌を育てるさまざまな方法が紹介されていますが、なかでもすぐに実行できそうなのが、休日を「育菌日」にあてること。
お休みの日、ゆっくり起きてブランチを食べ、そのまま、平日に散らかった部屋を掃除しているとき、「あ、今日顔を洗っていなかったわ」なんていうことがあると思います。このちょっとぬるっとした肌の状態をキープ。
『皮膚常在菌ビューティ!』62ページより引用
十分睡眠をとった翌日なら、菌も皮脂や汗も肌にたっぷり。
川上さんがいうには、ほおを指でぐっと押したときに、指のまわりにツヤの反射ができるのが、皮脂分量のちょうどいい状態なのだそう。洗顔するかしないかは、皮脂の分量で判断しましょう。
お風呂から出たらオイルでカバー
また、血行と発汗をよくするためには、シャワーだけで済ませず、39~40度のお湯に15分ほど浸かることもおすすめ、と川上さん。
しかし、入浴後そのままの状態でいるのは、逆効果。肌が濡れると蒸発によって乾燥しやすくなり、入浴後25分前後で「過乾燥」状態になってしまうそう。だから、蒸気たっぷりのお風呂で角質に水分を与えたら、そのまま浴室内でオイルをつけるといいそうです。
角質の細胞のすき間は細胞間脂質で満たされており、その主な成分がセラミドです。セラミドは水分や油分を抱え込むので、お肌のハリとうるおいのもとに。そのため、セラミドを含むオイルを使うとなじみが良く、保湿効果が高いのです。
『皮膚常在菌ビューティ!』84ページより引用
たとえば、オリーブオイルやローズヒップ油、ヘンプ油など。保湿に加えて美容効果を求めるなら、アボカドオイル、エイジングケアならアルガンオイルやグレープシードオイルもおすすめ、と川上さん。
肌のことを考えると、できればあれこれ使いたくない(でも、使わないと乾燥しそうで心配……)と思われる方にピッタリの本書には、他にもさまざまな美肌へのヒントが紹介されています。
乾燥とテカリが気になりだす時期。皮膚常在菌と上手に付き合い、美肌をめざしたいですね。
1,296円
菌と上手につきあう
[『皮膚常在菌ビューティー!』]image via shutterstock