人への思いやりは、その人を甘やかしていることになるのではないか、と考える人がいます。確かに明確な線引きは難しいのですが、思いやりを向けた相手に対してどういう恩恵があるか、相手に対してどういう影響があるかに目を向けてみると、思いやりと甘やかしの違いがわかります。

「甘やかし」は、する側に利益があるものです。する側がラクになる。子どもが泣いているときにお菓子をあげるのは、一瞬静かになってくれるという親や周囲の大人の利益。ですからこれは「甘やかし」です。自分に見返りを求める行為は甘やかしといえます。

一方、「思いやり」は相手を尊重する、成長に繋がっていくステップを提供する行為。ですから、思いやりは相手にとって厳しい場合もあります。この例でいうと、泣いている子どもにお菓子をあげるのではなく、なぜ泣いてしまうようなことになったのか、子どもと向き合って話をすることが思いやりということになるでしょう。

人に優しくする行為も相手を甘やかしていると感じる人がいますが、その人は自己肯定感に課題を抱えている人かもしれません

自分が充足していない人は、「相手も道連れ」という気持ちが働きやすい。ですから、相手が満たされた状態にあることが、心のどこかでは許せなかったりします。自身を振り返って、自己肯定感が十分に養われてきたか、少しだけ考えてみましょう。

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川野泰周(かわの たいしゅう)先生
臨済宗建長寺派林香寺住職/RESM新横浜睡眠・呼吸メディカルケアクリニック副院長。2005年慶応義塾大学医学部医学科卒業。臨床研修修了後、慶應義塾大学病院精神神経科、国立病院機構久里浜医療センターなどで精神科医として診療に従事。2011年より大本山建長寺専門道場にて3年半にわたる禅修行を行った。現在は寺務の傍ら精神科診療にあたり、マインドフルネスや禅の瞑想を積極的に取り入れた治療を行う。著書に『ずぼら瞑想』(幻冬舎)、『会社では教えてもらえない 集中力がある人のストレス管理のキホン』(すばる舎)などがある。精神保健指定医・日本精神神経学会認定専門医・医師会認定産業医。

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取材・文/島田ゆかり、image via shutterstock

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