人の体の約6分の1を占めるタンパク質。近年は「筋肉を作る」という観点からとくに注目を集めていますが、タンパク質の役割はそれだけではありません。立命館大学 スポーツ健康科学部教授の藤田聡先生が語る、今こそきちんと知っておきたい、タンパク質の基礎知識をご紹介します。

人体はタンパク質でできている

タンパク質は人の体を作り、エネルギー源となり、体内の機能を調整する非常に大切な役割を担っています。しかしその重要性が注目される一方で、そもそも「タンパク質とは何か」を理解している人は少ないかもしれません。

「骨などを構成するコラーゲン、髪や爪のもとになるケラチン、各種ホルモンのひとつであるアドレナリン、血清中に存在するアルブミン、体の中で繰り広げられる化学反応を助ける酵素。これらの共通点は、すべてタンパク質であるということです」(藤田先生)

つまり、骨、皮膚、臓器、毛髪、爪、血液、酵素、ホルモンなど、あらゆる細胞や組織を作り出しているのがタンパク質だと藤田先生。筋肉だけでなく、ハリのある肌や艶やかな髪も、タンパク質なくしては成り立たないのです。

すべての源は20種類のアミノ酸

藤田先生によると、人体には数万種類ものタンパク質が存在します。しかしタンパク質を構成するアミノ酸という有機化合物は、20種類しかありません。驚いたことに、私たちの体とその複雑な働きは、わずか20種類のアミノ酸から生み出されていることになります。

「アミノ酸は9種類の必須アミノ酸と、11種類の非必須アミノ酸に分類されます。9種類のアミノ酸は体内で合成することができないため、必ず食事で摂らなければいけません」(藤田先生)

【必須アミノ酸】
バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、リジン、フェニルアラニン、トリプトファン、スレオニン、ヒスチジン

このうちのバリン、ロイシン、イソロイシンはBCAA(分岐差アミノ酸)と総称され、成長や筋肉強化、疲労回復作用などが注目されています。

幸福ホルモンことセロトニンの材料となるトリプトファンや、ストレス軽減・抗酸化作用のあるヒスチジン、うつ症状を改善するメチオニンなど、人間の“幸福感”に作用する物質もたくさん。これらすべてが、日々の食生活に左右されるというわけです。

非必須アミノ酸についても油断は禁物

いっぽう非必須アミノ酸は、体内で合成することが可能な物質です。

【非必須アミノ酸】
アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、システイン、セリン、チロシン、プロリン

成長ホルモンの分泌を促すアルギニンや、筋肉疲労を回復させるグルタミン、眠りを深くするグリシンなどは、サプリとして摂っている人もいるかもしれません。これらは体内で合成できるとはいえ、さまざまなはたらきがあるため、意識して摂取する必要があります。

「必須アミノ酸と非必須アミノ酸、全20種類がそろってはじめてタンパク質が合成されます。その意味ではすべてのアミノ酸が“必須”といえるでしょう」(藤田先生)

タンパク質はどのように吸収される?

タンパク質はアミノ酸で構成されていますが、アミノ酸が50個程度以上結合したものがタンパク質。アミノ酸がそれより少ないものは、ペプチドと呼ばれます。

「アミノ酸が数個から数十個つながったペプチドには、神経伝達、抗菌、鎮痛など、さまざまな作用があります。たとえば脳にあって鎮痛作用を持つエンケファリンと呼ばれるペプチドは、アミノ酸5個から構成されています」(藤田先生)

タンパク質はどんな食品にも含まれますが、食べたらそのまま体内に吸収されるわけではありません。タンパク質のままでは分子構造が大きすぎるため、消化管でペプチドに分解され、さらに最小単位であるアミノ酸に分解されてから吸収されます。

タンパク質を効率よく摂取するためには、こうしたタンパク質とアミノ酸の関係を知っておくことが大切。次回は「良質なタンパク質の見分け方についてご紹介します。

藤田 聡(ふじた さとし)先生
立命館大学スポーツ健康科学部教授。1993年ノースカロライナ州ファイファー大学スポーツ医学・マネジメント学部卒業。1996年フロリダ州立大学大学院運動科学部運動生理学専攻修士課程修了。2002年南カリフォルニア大学大学院博士号(運動生理学)取得。同大学医学部内分泌科ポストドクター。2004年テキサス大学医 学部加齢研究所研究員。2006年テキサス大学医学部内科講師。2007年東京大学大学院新領域創成科学研究科人間環境学専攻特任助教を経て、2009年から現職。

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