猛暑が本格化し、熱中症の危険性が日々高まってきています。実は、熱中症を引き起こすリスクのひとつとして、見逃せないのが「睡眠不足」なのです。

どのような睡眠が熱中症を引き起こすのか、日本気象協会と日本睡眠科学研究所の研究発表からご紹介します。

睡眠効率の低下が熱中症を招く?

今回、日本気象協会と日本睡眠科学研究所が共同調査を実施したのは、睡眠と熱中症の関係性について。熱中症で救急搬送される人の数に影響を与えうる要素として、日中の暑さ指数(WBGT)、前夜の夜間平均気温のほかに、前夜の睡眠の状況が関係しうることが判明しました(※)。

その睡眠の状況とは、中途覚醒時間が長く、睡眠効率が低いこと。睡眠効率とは、就床時間に対する睡眠時間の割合を意味します。つまり、寝苦しくて何度も目が覚めてしまい、ぐっすり眠れなかった日の翌日ほど、熱中症のリスクが高まることがわかったのです。

冷房を使いたがらない日本人

暑さは世代を問わず、顕著に睡眠を妨げる」。

そう警告するのは、睡眠によい室内の温熱環境を追求している水野一枝さん(東北福祉大学 感性福祉研究所)。日本人は冷暖房を積極的に使わない傾向があるため、睡眠時には季節による温度変化の影響を強く受けることになるといいます。

「意外にも寝つきまでの時間は、暑いときも寒いときもそれほど差はありません。しかし室温が高いままの場合、深い眠りに入りにくく、何度も目が覚めてしまい、寝苦しさを感じてしまいます」(水野さん)

人は睡眠時に、体の深い部分の温度(深部体温)を下げないと深い眠りに入ることができません。深部体温を下げるためには体の表面から熱を逃がす必要がありますが、まわりの気温や湿度が高いと熱を逃しにくく、深部体温が下がらないため、睡眠の質が低下してしまうのです。

エアコンは「ひと晩中」が快眠の基本

水野先生によると、夏の寝苦しさを解消するためには、睡眠時のエアコンの使用がもっとも効果的だそう。

「室温が29℃を超えると寝苦しくなりますので、エアコンを使用して快適な温度に調整しましょう。エアコンは、できればひと晩中使用して欲しいと思っています。

どうしても抵抗のある方は、まず深部体温を下げる必要があるため、睡眠時間の前半4時間程度は使用するようにしてみてください。また、小さなお子さんや高齢者の方も、エアコンの効いた部屋で快適に寝ていただくのがよいと思います」(水野さん)

熱中症を予防するためにも、夜間のエアコンは「つけっぱなし」が基本といえそう。タイマー設定も上手に利用して、快適な睡眠環境を整えましょう。

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水野一枝(みずの・かずえ)さん
東北福祉大学 感性福祉研究所特任研究員。
東邦大学医学部生理学第一講座、獨協医科大学第一生理学教室、産業技術総合研究所 NEDOフェローを経て現在に至る。寝室の暑さや寒さ、寝具や寝衣と睡眠に関する研究に28年従事。
日本生理人類学、日本睡眠学会評議委員。NHK『サラメシ』、NHK BS『美と若さの新常識 カラダのヒミツ』、NHK『あさいち』などメディア出演、著書多数。

※西川の快眠コンサルティングサービス「ねむりの相談所」が保有する睡眠データ、対応する日の熱中症救急搬送者数(消防庁)および気象データ(気象庁)を組み合わせて統計解析を行った結果による。
<解析対象>
対象データ人数:192、性別:男性74/女性118、年齢:20代以下 31、30-39歳 72、40-49歳 53、50-59歳 27、60台以上 9
<出典元・解析対象データ>
熱中症救急搬送者数:熱中症による救急搬送人員「平成28年5~9月」「平成29年5~9月」(消防庁) 、気象データ:気象観測値(東京)平成28年5~9月、平成29年5~9月(気象庁) 、睡眠要素:2018-2019に西川”ねむりの相談所”のサービスを利用したお客様のデータ

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RSS情報:https://www.mylohas.net/2019/08/195787heat_stroke1.html