主治医に遠慮せず、納得いく治療を実現するために
セカンド・オピニオンとは、現在の主治医(担当医)の診断や治療方針について、ほかの医師の意見(第二の意見)を聞いて、参考にすることです。
ですから、必ずしも主治医を信じていないとか、ほかの施設に移るためのものではありません。
セカンド・オピニオンは、患者である私たちの権利です。
セカンド・オピニオンの目的は、「今の診療をさらに納得して安心して治療を受けたいため」「主治医の治療以外にもっと選択肢があるかどうかを知るため」「主治医の説明が何度聞いても納得がいかないとき」などです。
セカンドオピニオンを受ける手順は?
セカンドオピニオンを受ける手続きとしては
診療情報提供書(紹介状)や資料(X線写真、病理診断のプレパラートなど)などを今の主治医からもらう(現在、どのような診断がつき、どんな治療が提案されているのか)。紹介状作成は、約数千円かかります。 セカンドオピニオンを提供してくれる施設を探す。 セカンドオピニオン外来を予約して受診する。通常30分~1時間ですから、確認したいこと、意見を求めたいことを3~5つくらいに絞り、事前に箇条書きにしておきましょう。 元の主治医を再度受診。セカンドオピニオンの内容を主治医と吟味して、今後の診療に役立てます。もし、主治医がすすめる治療と異なる治療を希望する場合は、遠慮なく転院、転医を申し出ましょう。
たとえば、転院、転医する場合は、主治医に「乳房切除術(乳房全摘)」をすすめられたけれども、セカンドオピニオンの施設では、「乳房温存術(乳房を残す手術)」が可能と言われ、そちらで治療したいと患者側が望んだ場合などは、転院するケースがあります。
主治医から紹介状をもらいにくい……というときは?
セカンドオピニオンを受けるための紹介状をもらうのを主治医に言いにくい……。主治医に言わずにセカンドオピニオンを受けることはできないか、といった相談をよく受けます。
でも、主治医に内緒にすることはありません。
「先生を信頼していますが、自分でとことん納得できる治療にしたいので、セカンドオピニオンを受けたいのですが……」と話せば、大丈夫です。
いまの主治医から紹介状や資料を用意してもらえないと、セカンドオピニオンを受けさせてもらえない医療機関もあります。別に医療機関で、検査を初めから全部やり直さなければなりません。
いまは、セカンドオピニオンを受けることが常識になってきています。もし、セカンドオピニオンに否定的な主治医なら、信頼できる医師か疑問です。思いきって転院を考えてもよいかもしれません。
ドクターショッピングにならないように注意して!
セカンドオピニオンを受けるときに注意したいのは、ドクターショッピングにならないことです。
自分の気に入った意見を言ってくれる医師に出会うまで、何か所も病院を受診するのは、迷うばかりで納得のいく治療選びにはなりません。
セカンドオピニオンは、治療方針や手術方法の選択のときだけでなく、がんの診断を確認するとき、術後の補助療法(手術後に再発予防のために行う薬物治療など)を行うとき、再発・転移が確認されたときなどにも有効です。
最終的に治療を決めるのは、私たち自身です。そのための手助けとして、セカンドオピニオンを上手に利用しましょう。
【セカンドオピニオン】知っておきたい2つのポイント
01.医師を選ぶときのポイントは?
がん専門病院、あるいは乳腺外科の専門医を探す。全国に各都道府県ごとに、がん拠点病院があります。国立がん研究センターのがん情報サービスのサイトから探せます。 セカンドオピニオンに積極的な病院を探す。その医療機関のホームページに、セカンドオピニオンの窓口がわかりやすく書かれているところがよいでしょう。 主治医とは異なる治療方針の医師を探す。ホームページに自分が希望する治療法を行っている医師かを確認します。 系列病院、同じ経歴を持っているなど、主治医とのつながりが深く、客観的な意見を聞けそうにない病院は避ける。現在かかっている医療機関の系列病院でないところを探しましょう。 料金を確認する。約30分~60分、3万円~8万円程度が目安です。自費診療です。02.効果的に受けるためのポイントは?
まず、主治医の治療方針を確実に理解することが大切です。現在の治療方針がよくわかっていないままに、なんとなくの理解のまま、セカンドオピニオンを受けても有効な意見を聞くことがむずかしいと思います。 主治医にセカンドオピニオンを受けることを正直に伝えます。セカンドオピニオンで確認し、主治医の治療方針で間違いないことがわかる場合も多いです。また、セカンドオピニオンによって、主治医に要望したいことが出てくるかもしれません。よりよいコミュニケーションを継続するためにも大切です。 主治医に紹介状と検査結果のデータをもらいます。効果的なセカンドオピニオンを受けるためには、検査結果をみてもらうことが不可欠です。 セカンドオピニオンを受けたら、その結果を主治医に持ち帰り、再度アドバイスを受けましょう。セカンドオピニオンは、転院のためではありません。主治医と患者が一緒によりよい治療を選択するための方法のひとつです。 治療を始める前だけでなく、たとえば手術後、次のステップの治療(抗がん剤やホルモン療法などの薬物療法)を始める前にもセカンドオピニオンの必要性を検討してみることも大切です。 自分の望みどおりの治療をしてくれる医師を探すことを目的にしない(ドクターショッピングしない)ことが大切です。自分の望み通りの治療が、がんを倒すために本当に適した治療なのかはわかりません。がんと闘うためにも、医師を味方につけて、よりよい治療の選択につなげてください。
もしがんを告知されたら……
乳がん経験者が語る。がんを告知されたら…そのときにすべきこと
増田美加・女性医療ジャーナリスト 予防医療の視点から女性のヘルスケア、エイジングケアの執筆、講演を行う。乳がんサバイバーでもあり、さまざまながん啓発活動を展開。著書に『医者に手抜きされて死なないための 患者力』(講談社)、『女性ホルモンパワー』(だいわ文庫)ほか多数。NPO法人みんなの漢方理事長。NPO法人乳がん画像診断ネットワーク副理事長。NPO法人女性医療ネットワーク理事。NPO法人日本医学ジャーナリスト協会会員。公式ホームページ http://office-mikamasuda.com/
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