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いまこそ、唾液を見直そう! ウイルスや細菌などの感染症リスクにも影響
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いまこそ、唾液を見直そう! ウイルスや細菌などの感染症リスクにも影響

2020-04-17 06:00
    自分の体をきちんと知ろう! がテーマの連載「カラダ戦略術」。前回は「かぶれ対策」について、お届けしました。今回は、「ウイルス対策にもなる唾液」について、女性医療ジャーナリストの増田美加がお伝えします。

    口の中は、全身の疾患に大きく影響していた!

    新型コロナウイルスが世界中で猛威をふるう中、手洗いを含め、さまざまな予防対策が示されています。

    そんななか、いまさまざまな研究によって、急速に唾液のもつ力が解明されています。免疫力を高め、病気を未然に防ぎ、全身にさまざまな影響を与える唾液。口腔内の環境は、全身の疾患や不調に大きく関連しています。

    たとえば、口腔内の歯周病菌は、インフルエンザ、HIVなどの感染症のほか、脳血管障害(脳梗塞)、狭心症・心筋梗塞、糖尿病、誤嚥性肺炎、妊娠トラブル(早産・低体重児)、骨粗鬆症、認知症などの発症にも影響しています。

    感染症予防にも関係する唾液力について、神奈川歯科大学大学院口腔科学講座教授、槻木恵一(つきのきけいいち)先生を取材しました。

    ウイルスや細菌の繁殖を防ぐIgAが唾液中に!

    槻木先生 :

    唾液中には、健康に大切な成分がわかっているだけで100種類以上。その代表は、ウイルスや細菌の繁殖を防ぐIgA(免疫グロブリンA)と呼ばれる免疫物質、それに細胞老化を防ぐラクトフェリンなどは、その代表格です。

    ほかにも、唾液中には、粘膜保護成分ムチン、脳や体の細胞の栄養源となるグロースファクター、メラトニン、コラーゲン、ヒアルロン酸など多くの物質が含まれています。

    これら唾液中の成分には、インフルエンザなどの感染症、歯周病、糖尿病、動脈硬化などの生活習慣病、がん、大腸炎、視力低下、肌老化など、さまざまな病気予防の成分が含まれていることがわかってきたのです。想像以上に、機能性の高い液体なのです。

    IgAがウイルスや細菌を撃退!

    槻木先生 :

    口の中の唾液には、IgA(免疫グロブリンA)、リゾチーム、ペルオキシダーゼ、ラクトフェリンなど、さまざまな抗菌・抗ウイルス物質が含まれています。

    人間の体には、免疫系という機能があります。そこでは、さまざまな抗体が働いていて、細菌やウィルスなどの異物を見つけると、ただちに排除し、私たちが病気にかかるのを防いでくれます。

    これらの抗菌・抗ウイルス物質は、虫歯や歯周病、誤嚥性肺炎や風邪、インフルエンザなどの感染症の予防に重要な役割を担っています。またこの抗菌・抗ウイルス物質が唾液中に高い濃度で存在するほど、細菌やウィルスなどの働きが抑止されて、感染するリスクが減ります。

    なかでも、もっとも多く唾液に含まれているのがIgAです。IgAは、私たちがもっている自然免疫として機能し、免疫力向上のためのとても重要な物質です。

    ウイルスが入ってくる口の中で唾液がブロック!

    口の中には、1日50~100㎎のIgAが唾液腺を通して分泌されています。IgAが持つ抗菌・抗ウイルス作用の免疫効果は、次のようなメカニズムがあります。

    まず、口腔内で異物を発見すると、いくつものIgAがそれらにくっついて、口内の粘膜に付着しないようにさせます。

    そして、IgAがくっついた異物は、唾液の自浄作用によって、ほとんどが洗い流されてしまいます。体内のさまざまな器官に侵入する前に、口の中でブロック! ウイルスの水際対策をしてくれるのが、唾液中のIgAなのです。

    槻木先生 :

    実際に、IgAのこうした抗菌・抗ウイルス作用がインフルエンザウイルスに反応することが明らかになっており、高い予防効果を生む可能性があることは、私自身が行った高齢者施設での実証試験でも証明されています。

    またIgAは、腸の分泌物にも含まれていて、腸内で悪い細菌を除去する作用があり、腸内環境の改善を促して、体全体の免疫力を高める手助けもしているのです。

    風邪をよくひく人は、IgAの減少が原因かも?

    IgAを作る力を持っていない人もいて、IgA欠損症という病名がついています。欧米では200~2000人に1人いると言われていますが、日本人は3000~19,000人に1人で患者数もあまり多くはありません。

    しかし、IgA欠損症だと、上気道感染症にかかりやすくなることがわかっています。侵入したウイルスや細菌が上気道(鼻か咽頭までの気道)の粘膜に付着することで、鼻炎、扁桃炎、咽頭炎などを発症。感染症の約7割が上気道感染症で、風邪もそのひとつなのです。

    槻木先生 :

    よく風邪にかかりやすい人は、IgA欠損症とまではいかないまでも、唾液中のIgAの量が減少している可能性があります。

    IgAは、粘膜からの感染を予防するために、極めて重要な役割を果たしているのです。IgAは、軽い運動や食生活の改善で、分泌量を意識的に増やすことができます。免疫力を上げるには、唾液中のIgA濃度を高めることが第一歩になるのです。

    唾液の「質」低下していませんか?

    槻木先生 :

    唾液の「質」が低下している可能性がある内容をあげました。前半の4項目は、唾液の質を低下させやすい食行動。後半の3項目は日常生活の活動性が低く、唾液力の低下につながりやすい状態や習慣を指しています。

    □朝食を食べないことが多い 1点
    □ヨーグルトはほとんど食べない 3点
    □野菜やイモなどはほとんど食べない 3点
    □脂っこい食べ物が好き 2点
    □買い物など外出することが億劫になってきた 1点
    □家にいることが多く歩くことが少ない 1点
    □よく便秘になる 2点

    合計点が3点以上の人は、唾液の「質」が落ちている可能性があります。

    IgAを増やすには毎日の納豆やヨーグルト

    女性は、年齢を重ねるほど唾液力が低下します。唾液力をできるだけ維持する方法はないのでしょうか?

    槻木先生 :

    唾液中に最も多く含まれている成分、IgAを増やすことは、唾液の質を高めるために重要です。

    有効なのは、納豆やヨーグルトなどの発酵食品を毎日継続して食べることとくにヨーグルトが効果的。唾液中に含まれる抗菌物質IgAの濃度を高める作用があります。

    根菜類、海藻などの食物繊維や、ぬるめのお湯で抽出した緑茶にも、唾液中のIgAを増やす作用が確認されています。

    また活性酸素は、唾液力低下に影響するため、青魚、玉ねぎ、長ネギ、もずく、めかぶ、大豆、トマト、レモン、イチゴなどの抗酸化作用のある食事を摂ることも大切

    ほかに気をつけるべきこと、やっておくといいこともありますか?

    槻木先生 :

    一方で、脂質の多すぎる食事やアルコールは、唾液力を低下させるので要注意です。

    健康な成人の唾液量は、1日1000~1500ml。人間が1日にかく汗の量が500~1500mlとされていますから、唾液は平常時でも酷暑の中で汗だくになったときの汗と同じ位の量が出ています。そのため、水分をこまめに摂ることが大切で、1日1~1.5Lの水分補給が目安です。

    ドライマウスや喉が渇くのは、唾液力低下の危険信号です。ほかにもストレッチやウオーキングなどの軽い運動も、IgAの増加につながります。

    お話を伺ったのは……
    槻木恵一(つきのき・けいいち)先生
    神奈川歯科大学大学院 口腔科学講座環境病理学教授。神奈川歯科大学歯学部卒業。同大学院歯学研究科修了。同大学副学長。歯学博士。専門は口腔病理診断学、唾液腺健康医学などで唾液中IgA分泌量の増加のメカニズムや腸管内の役割を研究。「腸-唾液腺相関」発見の第一人者。著書に『唾液サラネバ健康法』(主婦と生活社)ほか。

    参考資料/『唾液サラネバ健康法』槻木恵一著(主婦と生活社)

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    増田美加・女性医療ジャーナリスト
    予防医療の視点から女性のヘルスケア、エイジングケアの執筆、講演を行う。乳がんサバイバーでもあり、さまざまながん啓発活動を展開。著書に『医者に手抜きされて死なないための 患者力』(講談社)、『女性ホルモンパワー』(だいわ文庫)ほか多数。NPO法人みんなの漢方理事長。NPO法人乳がん画像診断ネットワーク副理事長。NPO法人女性医療ネットワーク理事。NPO法人日本医学ジャーナリスト協会会員。公式ホームページ :http://office-mikamasuda.com/

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