ダイエット専門外来「渋谷DSクリニック」院長の林博之先生に、太りやすい体質の特徴や遺伝との関係をうかがいました。
太ってしまう5つの原因
林先生によると、太る原因は主に次の5つ。自分に当てはまるものがあるかどうか、ぜひチェックしてみてください。
□食べ過ぎ
摂取エネルギーが消費エネルギーより多くなると、残った分が体脂肪になる。
過食になるのは視床下部にある満腹中枢と空腹中枢の調節がうまく働かないため。ストレスなどが主な原因と考えられる。
□食事の回数や時間が不規則
食べる量より深刻なのが食べ方。朝と昼を抜いて夜だけ食べたり、1日の食事量の半分以上を夜に食べるなど、食事の回数や時間が不規則になると太る。
特に夜は副交感神経が優位になり、消化管機能が高まって食物エネルギーの消化吸収がよくなるので、貯蔵脂肪が増えてしまう。
□褐色脂肪細胞が働かない
脂肪細胞には、エネルギーの貯蔵庫となる「白色脂肪細胞」と、体温維持や食事後の熱産生を行う「褐色脂肪細胞」がある。
「褐色脂肪細胞」がうまく働かないと、消費エネルギーが減少して貯蔵エネルギーを増やし、肥満の原因となる。
□肥満遺伝子を持っている
肥満遺伝子とは、遺伝子異常のために基礎代謝で使われるエネルギー量が減少し、体重をコントロールするという本来の働きができなくなっている遺伝子のこと。
日本人の多くは何らかの肥満遺伝子を持っていると考えられる。遺伝子検査で自分の肥満関連遺伝子を知ることで、体質に合った食事や運動など、効率のよいダイエット法を見つけることができる。
【肥満関連遺伝子の例】
・β3AR……脂肪を分解させるホルモン(アドレナリン)の働きが弱く、基礎代謝量が150Kcal少ない。また、内臓脂肪がつきやすいため、おなかまわりに脂肪がつきやすい。
・UCP1……脂肪を燃焼させる働き(UCP1)が弱く、基礎代謝量が50Kcal少ない。また、内臓脂肪が蓄積されやすいため、おなかまわりに脂肪がつきやすい。
・FTO……食欲調節に関連している因子の働きが弱く、食後の満腹感が得られにくい。また、高カロリー食の摂取傾向が高く、小児での肥満がみられる。
・LEP……食欲調節に関連している因子(LEP)の働きが弱く、肥満になりやすい。
□運動不足
運動不足になると消費エネルギーが低下するだけでなく、エネルギーが体内に貯蔵されやすくなる。
インスリンが働かなくなって血糖を下げる作用が低下するものの、脂肪合成作用は弱くならないので、脂肪がどんどん貯蔵される。
5つの太る原因で当てはまるものがあれば、肥満の赤信号。意識的に生活スタイルを見直す必要があります。
肥満には「遺伝的な要素」も関与する
肥満の多くは生活習慣だけでなく、遺伝的な要素も関与しています。「少食でも太りやすい人、大食でも太りにくい人」は確かに存在する、と林先生。
しかし、遺伝的な要素に負けずに太りにくいカラダを作ることは可能です。
林先生 :
私の経験では、3割は肥満遺伝子、残りの7割は環境や生活習慣が原因というイメージです。
では“太りやすい人が、太りにくい体質になることができるか”というと、これは環境を変えていくしかない。
自分に適合して持続できる生活習慣をつくること、これが“痩せ体質”になるための要素になります
林先生のいう“痩せ体質”とは、1度痩せたら2度とリバウンドせず、無理なく健康的なカラダを保てる体質のこと。
林先生が院長をつとめる「渋谷DSクリニック」では、管理栄養士による食事療法を基本に、整体や漢方、最新ダイエットマシンを併用した治療を行っています。
クリニックに訪れる女性の年齢層は20代~70代までと幅広く、最近ではとくに「1度ダイエットに成功したのにリバウンドしてしまい、元に戻らない」という相談が増えているそう。
林先生 :
リバウンドしてはダイエットとは言えません。痩せたり、太ったりを繰り返すのは、身体にとってもっともよくないことです。
ぜひ守っていただきたいのは、栄養バランスやカロリーに気をつけて、1日3食をきちんと食べること。食べて痩せる、これが、私がもっとも伝えたいダイエット法です
自分の体質や太りやすくなる原因を知れば、ダイエット成功の確率はぐっと高まります。無理な食事制限やリバウンドに苦しむ前に、ぜひ遺伝子検査や生活習慣の見直しを取り入れてみてください。
──この記事は、2018年10月12日の記事を再編集して掲載しています。
賢くやせる!
ダイエット専門ドクターに聞く、太りにくいカラダを作る生活習慣のヒント4
林博之(はやし・ひろゆき)先生
渋谷DSクリニック院長。医学的根拠のないダイエットに危機感を感じ、健康を損なわないダイエットを提唱。「リバウンドなく体型を維持してこそ、ダイエットは成功」を基本理念とし、老若男女問わず一人ひとりに合った効果的かつ効率的なダイエットの指導を行っている。渋谷DSクリニック
取材・文/田邉愛理