そこで料理家が実践しているのが、生の肉や魚などの素材に調味料で下味をつけ、保存袋に入れて冷凍する「下味冷凍」テクニックです。
「冷凍」と「冷凍食品」に関する食のライフハックメディア「ほほえみごはん(ニチレイフーズ提供)」から、肉と野菜の保存テクニックに続き、料理の時短になり味も染みこんでおいしくなる、肉と魚の下味冷凍について3つご紹介します。
その1. 活用度ナンバー1、豚肉の下味冷凍
料理研究家・栄養士の阪下千恵さんがリピートするのは、豚薄切り肉と鶏もも肉の下味冷凍です。
お弁当や晩ごはんの主役になる肉の下味冷凍は、仕込んでおくと頼りになる一品。
価格が安いときに多めに購入して作っておけば、買い出しの頻度を減らすことにもつながります。
肉の下味冷凍……豚肉のしょうが焼き味
<材料2人分>
豚薄切り肉…160~200g ※部位はロース、肩ロース、バラなど好みのものでOK A 酒…大さじ1 A みりん…大さじ1と1/2 A 醤油…大さじ2と1/2 A 砂糖…小さじ1~1と1/2 A しょうが(すりおろし)…小さじ1 A Lサイズの冷凍用密封保存袋…1枚<作り方>
冷凍用密封保存袋に豚薄切り肉を重ならないように薄く広げて入れる。 混ぜ合わせたAを、(1)の肉全体にかけるようにして少量ずつ流し入れる。 (2)の空気を抜いて肉を平らにし、密封する。平らな状態のまま冷凍する。【保存のポイントと賞味期限】
・Lサイズの冷凍用密封保存袋に、肉を重ならないように入れる。
・1回分は肉160~200g。
・冷凍庫で2週間保存可能。
リーズナブルで使いやすい豚薄切り肉。醤油ベースの甘辛味にしておけば応用自在!
下記は肉を凍ったまま加熱して、生野菜と和えるだけのスピードレシピです。
食べ方例……「豚のしょうが焼き」香味野菜和え
<材料2人分>
下味冷凍肉(豚薄切り肉のしょうが焼き味)…1袋分(160~200g) サラダ油…小さじ1 豆苗…1パック みょうが…2個 青じそ…10枚 A ごま油…大さじ1 A 酢…大さじ1/2 A 塩…少々<作り方>
豆苗は根を切り落として5cmの長さに切り、みょうがと青じそは千切りにして、混ぜ合わせたAで和える。 フライパンにサラダ油、凍ったままの豚肉を入れてから中火にかける。最初は肉に触らず、表面の色が変わってきたら裏返し、菜箸でほぐしながら肉全体に火を通す。 火を止め、肉が大きければフライパンの中で調理用ばさみを使って食べやすく切り、(1)を加えて余熱でさっと和える。その2. 鶏肉の買い置きは「香味野菜漬け」に
阪下さんいわく、大きめの鶏肉も下味冷凍におすすめの食材。
酒と香味野菜で風味をつけておくと、野菜の香りが染みこみ肉もしっとりジューシーに仕上がるそう。
肉の下味冷凍……鶏肉の香味野菜漬け
<材料3〜4人分>
鶏もも肉…2枚 長ねぎ(青い部分)…1本分 しょうが…1片分 A 酒…1/4カップ A 塩 …小さじ1/4 A Lサイズの冷凍用密封保存袋…1枚<作り方>
鶏もも肉は余分な脂と皮を除き、半分に切る。厚みのある部分に包丁を入れて開き、均一な厚さにする。 長ねぎは5cmの長さのぶつ切りにする。しょうがは千切りにする。 冷凍用密封保存袋に(1)、(2)の順番に入れ、混ぜ合わせたAを全体にかかるように少量ずつ流し入れる。 (3)の空気を抜いて、密封する。平らな状態のまま冷凍する。【保存のポイントと賞味期限】
・Lサイズの冷凍用密封保存袋に、香味野菜と肉が重ならないように入れる。
・1回分は鶏もも肉2枚。
・冷凍庫で2週間保存可能。
長ねぎとしょうがの香りが食欲をそそる鶏肉の下味冷凍。
袋の中身をお米と一緒に炊けば、エスニックなチキンライスが簡単にできます。
肉と野菜の旨みが染みこんだごはんと、蒸気でふっくら蒸し上がった鶏肉が絶品のレシピです。
食べ方例……シンガポールチキンライス
<材料3人分>
下味冷凍肉(鶏もも肉の香味野菜漬け)…1と1/2枚分 ※残った1/2枚は蒸したり、焼いたりしてから冷蔵保存。 米…2合 ナンプラー…大さじ1 ※なければ醤油でも代用可 香菜、トマト(お好みで)…各適量[つけダレ]
しょうが(すりおろし)…大さじ1 オイスターソース…大さじ1 ナンプラー…大さじ1 砂糖…大さじ1/2 レモン汁…大さじ1弱 サラダ油…小さじ1<作り方>
米は普通に水で加減し、30分ほど吸水させ、水を大さじ2を取り除く。 下味冷凍肉は袋ごと流水に30秒~1分当てて、表面を少し解凍する。 (1)にナンプラーを入れて混ぜ、(2)の鶏肉の皮目を下にして米の上に並べる。しょうが、長ねぎもできるだけ重ならないよう並べて、普通に炊飯する。 炊きあがったらすぐに鶏肉、長ねぎ、しょうがを取り出し、ごはんを混ぜる。鶏肉は食べやすい大きさに切る。 器にごはんと鶏肉を盛りつけ、2cm幅に切った香菜、くし形切りにしたトマトをつけ合わせ、混ぜ合わせたつけダレを添える。その3. 臭みが取れる&味が染みこむ「魚」の下味冷凍
臭みが出たり、身がパサパサしてしまったりと、肉よりも難しいイメージがある魚の冷凍。
料理研究家でフードコーディネーターの吉田瑞子さんによると、切り身を調味料につけて下味冷凍すると、臭みが出ず身もしっとりとして、さらに調理もラクになるといいます。
おすすめは切り身の味噌漬け。凍ったまま水を加えて煮れば味噌煮に、解凍してから焼けば味噌焼きになります。さばが定番ですが、たらやたいなどの白身魚にも合う味付けです。
魚の下味冷凍……切り身の味噌漬け
<材料2人分>
魚(切り身)…2切れ(さばの場合は小4切れ) A 味噌…大さじ2 A 砂糖…大さじ1と1/2 A みりん…大さじ1と1/2 A しょうが(うす切り)…4切れ<作り方>
切り身の表面の水分をペーパータオルで拭く。 冷凍用保存袋の中でAを合わせ、切り身を入れてよく絡める。煮込みに使うため、砂糖はこの段階で入れてOK。 空気を抜くように袋の口を閉じ、金属製のバットにのせて冷凍する。【賞味期限】
冷凍庫で1か月程度保存可能。
食べ方例……さばの味噌煮
<材料>
下味冷凍したさば…小4切れ 水と酒…各1/2カップ 長ねぎ…1/2本<作り方>
魚の切り身を凍ったままフライパンに入れる。保存袋に残った調味料やしょうがも入れる。 水と酒(各1/2カップ)を加え、落としぶたをして強火にかける。落としぶたがない場合はアルミホイルを円形にして穴を開け、代用する。 沸騰したら強火のままで、ぶつ切りにした長ねぎ(1/2本)を加える。 落としぶたを外して、おたまで煮汁を魚にかけてから、再び落としぶたをする。煮汁をかけるのは味をしっかり染み込ませるため。 強火のまま5分煮て、火を通しながら煮汁が1cm程度(お皿に盛ったとき、切り身すべてにかけられる程度)になるまで水分を飛ばす。途中で煮詰まりすぎてしまったら、水を足して調節する。魚の切り身を冷凍用保存袋から出しにくいときは、電子レンジの解凍モードで少し解凍するとよいと吉田さん。
鮮魚は悪くなりやすいので買うタイミングに悩みがちですが、下味冷凍のレシピをおぼえておけば、食卓に上る機会も増えそうです。
かしこい食品保存のヒント
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阪下千恵(さかしたちえ)さん
料理研究家・栄養士。外食大手企業、無農薬・有機野菜・無添加食品などの宅配会社を経て独立。現在は書籍、雑誌、企業販促用レシピの開発、ホームページやテレビなどの料理レシピ作成、食育関連講習会などで活躍。置きから冷凍ストック、お弁当など家庭料理全般幅広く、再現性の高い作りやすい料理が人気、著書多数。実生活では小学生と中学生の女の子のママ。
吉田瑞子(よしだみずこ)さん
料理研究家&フードコーディネーター。おもちゃメーカーから料理研究家に転身し、オリジナリティ溢れる美味しいレシピを開発。「冷凍保存の教科書ビギナーズ」「1日がんばって1カ月ラクする 手作り冷凍食品の365日」など著書多数。
[ほほえみごはん]
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