咳やくしゃみをしたときに、のどの奥から「白い塊」が飛び出してきたことはありませんか? つぶすと異臭を放つこの物体は、いくつかある口臭の原因のひとつ。近年は「ニオイ玉」と呼ばれて注目され、自分で除去しようとして口内を傷つけてしまうケースも増えています。

そもそもニオイ玉とはなんなのか、どうしたら予防できるのか。気になるニオイ玉の正体について、口臭専門クリニック 中城歯科医院の中城基雄院長にうかがいました。

ニオイ玉には「レシピ」がある

中城先生 :

ニオイ玉というのは俗称で、正式名称は「膿栓(のうせん)」です。喉の奥には、喉チンコの脇に「腺窩(せんか)」という袋小路状のくぼみがあり、そこに垢が溜まると菌の集合体になります。これがニオイ玉の正体です。

そう話すのは、日本で唯一の口臭治療専門の歯科医として知られ、東洋医学にも精通する中城基雄先生膿栓が喉から出てくるのはよくあることで、性別や年齢に関係なくできるといいます。

中城先生 :

ニオイ玉には、それを作るための材料となる「レシピ」が存在します。一般的には、口内細菌・食物残渣・剥離粘膜・ポケット浸出液などです。これらが「腺窩」にたまって集合体(垢)になると、菌が増殖する際に作る代謝産物により臭気を発生するのです。

発生しているのは猛毒ガス?

ニオイ玉から発生するのは、主に硫化水素の臭気物質卵が腐ったような硫黄臭を発生し、喉奥からくる口臭の原因になってしまいます。

中城先生 :

口臭の初期段階では、膿栓と同じく硫化水素の臭気が単独で上昇してきます。
硫化水素のガスというのは、じつは人の命を奪うほどの猛毒なんですよ。もちろん口内で発生するガスは致死量に達するほどではありませんが、こういったガスが常に発生していると、体にも悪影響を与えることが最近は指摘されています。膿栓も含めて、ガスの成分を口の中に充満させないことが大切なんです。

ニオイ玉をほじるのは危険な行為

腺窩に膿栓がたまっている様子は、自分でも観察することができると中城先生。

中城先生 :

口を開けて少し舌を出し、「エーッ」と声を出すと、口蓋扁桃が持ち上がって、膿栓を観察しやすくなります。膿栓の硬さは角砂糖くらいで、大きさはグラニュー糖の粒くらいから、米粒大くらいまで様々です。

いったん膿栓ができると、喉に何か引っかかったような不快感があることも多く、激しく咳払いしたり、自分でほじったりして除去する人もいます。しかし、これは危険な行為とのこと。

中城先生 :

腺窩のまわりの粘膜はとても弱く、ちょっとこするだけでもすぐに出血してしまいます。しかも腺窩周辺は免疫を司っているので、炎症を抱えることは全身にも悪影響を及ぼします。風邪などの感染症にもかかりやすくなります。
どうしても気になるときは、耳鼻科と歯科で連携して膿栓を吸引したり、腺窩自体を手術して膿栓をたまりにくくするという方法もあります。

ニオイ玉ができやすいのはどんな人?

口臭の原因となり、一度できると自分で取り除くこともできないとは、やはりニオイ玉は厄介な存在。そもそも、どうして膿栓ができる人とできない人がいるのでしょうか。

中城先生 :

じつは、腺窩のヒダヒダやくぼみがつるんとしていて、膿栓がたまりにくい人もたくさんいるのです。そういう人は菌が唾液といっしょに胃の中に流れ、胃酸によって死滅するので、膿栓ができることも、臭気が発生することもありません。

その反対に、腺窩のヒダヒダやくぼみが深い人は菌がたまりやすいため、しっかり歯みがきをして、口内環境を清潔にしていても膿栓ができることがあります

とはいえ膿栓ができるとしても、1週間に1回くらいとか、ときどき出てくるくらいであれば、とくに問題はありません。口臭が悪化してしまうのは、1日に数回排出されるとか、1週間に10回以上頻発するなど、慢性的に膿栓ができる人です。当院が口臭専門クリニックを営んで、14年間で4000人の患者さんを診てきた中では、実際にそういう方もいらっしゃいました。

腺窩の形態は持って生まれた遺伝的特徴であり、手術しない限り自分で変えることはできません。そこで重要となるのが、膿栓の原材料を減らすための予防策。後編ではこちらをくわしくうかがっていきます。

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中城基雄(なかじょう もとお)先生
1959年、横浜市生まれ。歯学博士、鍼灸師。中城歯科医院院長。日本歯科東洋医学会認定医。日本歯科色彩学会理事、全日本鍼灸学会認定師。日本健康・栄養食品協会(JANHA)認定食品保健指導士。84年に東京歯科大学を卒業し、88年に日本大学歯学部大学院卒業後、中城歯科医院院長に就任。2006年からは口臭治療をメインに行い、体質由来の口臭を治療することで「なぜか病気や不調まで治る歯科医院」と呼ばれるように。『ホンマでっか!?TV』をはじめ、テレビや雑誌などの出演も多数。

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