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「怒っていい」から始めよう
本書の著者である安藤俊介さんは、怒りの感情と上手につきあうための心理トレーニング「アンガーマネジメント」の専門家。アンガーマネジメントは1970年代にアメリカで始まった方法論で、今では大企業のエグゼクティブや、アスリートのメンタルトレーニングにも使われています。
怒りをコントロールするというと、「怒らない方法」を学ぶトレーニングだと思う人もいるかもしれません。しかし、最初のトレーニングとして著者が提案するのは、意外なことに「怒っていいから始めよう」。怒ることについて悩んでいる人に、著者は決まって「もっと怒ったほうがいいですよ。怒ることは良いことですよ」とアドバイスしているそう。なぜなら、「怒り」には重要な役割があるからです。
怒りは、自分にとって何が大切なのか、重要なのかを教えてくれるサインです。僕たちが怒る理由は、簡単に言ってしまえば、自分が大切にしているものや、守りたいと思っているものを雑に扱われたり、攻撃されたりしたからです。
(『イライラに振り回されない7日間レッスン』19ページから引用)
「怒り」が発動するのは、そこに自分にとって譲れない何かが隠れている証拠。その正体を見極めず、単純に怒ることをやめてしまうと、自分が大切にしているものを攻撃されても何も感じない人間になってしまいます。
怒ることは、ダメなことでも悪いことでもありません。著者いわく、怒ることのただ一つの目的は「リクエスト」。相手に今どうして欲しいか、これからどうして欲しいかを伝えることであり、とても前向きなエネルギーでもあるのです。
「怒りメモ」をつけると怒り方がうまくなる
本書は「7日間レッスン」というタイトルの通り、イライラに振り回されず、相手と自分を傷つけずにリクエストできる「怒り上手」になるための方法を、7日間で学べるように構成されています。
たとえばパートナーや子どもに対して、いつも同じようなことでイライラしたり、怒ったりしてしまう場合。こんなときに役立つのは、自分の怒りパターンを把握するために「怒りメモ」をつけるというレッスンです。自分が「何に」「どれくらい」怒ったかを簡単にメモしておくだけで、だんだん「怒り方」がうまくなるのだとか。
私たちが同じようなことで繰り返し怒ってしまうのは、(中略)そのことについて怒り方が上達していないからです。
子どもに同じようなことで怒る、夫に似たようなことでイライラするというのは、言ってしまえば、前に怒った時の失敗を生かせていないということです。
(『イライラに振り回されない7日間レッスン』19ページから引用)
ワンパターンの怒りから抜け出せないのは、いつもリクエストがうまくいかない、つまり「怒る」ことについて練習不足だから。優秀なアスリートが「練習ノート」をつけるように、私たちも「怒りメモ」をつけることで、自分の傾向やよくあるパターンが見えてくるとのこと。
特定の言葉に引っかかる、何かをしたあとはとくにイライラしやすい……など、人によってパターンはさまざまだそう。確かに、こういった傾向を客観視できるようになれば、悪いパターンにはまりそうな状況を避けたり、相手にあらかじめ伝えておいたりすることもできそうですね。
自粛しない人にイライラ。どうすればいい?
コロナ禍の影響もあり、「最近イライラすることが多くなった」「普段よりも怒りっぽくなっている気がする」といった相談をよく受けるという著者。今までとは違う生活様式を強いられるなかで、自分と考え方の違う「世間」に強い怒りを感じる人も増えています。
自分はなるべく自宅にいるようにしているのに、気にせず外出したり、遠出したりする人が理解できない──。そんな正義感からくる怒りについて、著者はこう述べています。
例えば、コロナ禍で外出自粛を求める人の正義は人の命を守ることです。人が外出すると、人から人へ伝染し、多くの人の命が危険にさらされるので自宅にいることが正義になります。
一方で、こんな時こそ日常通りの経済活動をしようという人もいます。その人の正義はやはり人の命です。経済活動が止まることで多くの人が生活することができなくなり、結果人の命を奪うことになりかねない。疫病ではなく経済が人の命を奪うことになるという主張です。
どちらの正義も人の命です。ただ、双方の言い分は大きく対立しています。
(『イライラに振り回されない7日間レッスン』157ページから引用)
この状況から見えてくるのは、「これが唯一正しい正義」というものは、ないということです。こんなときに応用したいのは、「自分にとって意味のあることだけをやる」というレッスン。外出する人に対しては、ただ「自粛が意味あることだと思わない人がいる」と捉えて、自分にとって意味のあること――自粛を淡々と実行すればよいのです。こんなふうに、他人の行動に振り回されず、自分で意味があること、ないことを決められるようになれば、とても楽になると著者は語ります。
怒りに振り回されたあとは、どうしても自分に罪悪感を持ってしまいます。反省をこめて「怒ってはダメ」と自分を戒めたくなりますが、むしろ怒りとは仲良くするのが得策。怒りの成り立ちを知ることで、自分の価値観や「本当の望み」を知ることができるのかもしれません。
イライラしたら試してみて
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コメント
コメントを書く怒っていい、というのには驚いた。
怒りは抑えるものという先入観がこびりついていて、怒っては自己嫌悪の繰り返しだったが、なんか、すごく気持ちが楽になった。
怒っていいって考えは実に理にかなっていると思います
理由?記事のように自分が大事なモノがわからなくなるくらいに怒りを抑圧されてどんどん「執着」するものがなくなってしまった自分の事情より
今じゃ自分が大切だったのはなんだっただろう?と認知症街道まっしぐらな気分です(ふと気が付いたら)