もっと自尊心を高めよう、自分の長所を見つけよう──昨今の自己肯定感ブームに、「もううんざり」と思ったことはありませんか?

そんなネガティブ寄りの人々に、発想の転換をもたらしてくれるのが『「自己肯定感低めの人」のための本』(アスコム)。「自己肯定感を高めようなんて、思わなくていい」という著者の言葉に心を惹かれたら、新しい自分と出会えるチャンスかもしれません。

「自己肯定感低めの人」のための本

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必要なのは、自己肯定感よりも「自己納得感」

本書の著者は、脳科学やロボット工学を取り入れた実践的なワークで、これまで8,000人の悩みを解決してきたという心理カウンセラーの山根洋士氏。「自己肯定感」という言葉をいろいろなメディアで見かけるようになった今、自己肯定感の本来の意味が誤解されやすくなっているのではないかと語ります。

著者によると、そもそも自己肯定感とは、「自分はありのままでいい、生きているだけで価値がある、という感覚」のこと。自尊心の高さやポジティブ思考であるかどうかは、実は関係がないのです。

この先のページまであなたが読み進めてくれるならば、ひとつだけ、心構えを伝えておきましょう。

自己肯定感を高めようなんて思わなくていい

これだけです。大事なのは、いろんな悩みや問題に直面したときに、自分はそういうものだと納得できること。あなたに必要なのは、自己肯定感よりも「自己納得感」です。

(『「自己肯定感低めの人」のための本』14ページより引用)

いいところも悪いところも含めて、まずは今の自分に「納得」することが大切。そのための方法として著者が提案するのは、自己肯定感が下がる原因である「メンタルノイズ」を見つけて、自己否定のループから抜け出すことです。

自分の「あるある」でわかるメンタルノイズ診断

著者のいうメンタルノイズとは、自分の思考や行動の邪魔をする「心のクセ」のこと。こうしなければいけない、ああしないとダメ──という凝り固まった価値観や、思い込みのようなものです。

「自己肯定感低めの人」を悩ませるメンタルノイズには、大きく分けて14のタイプがあるといいます。

1)ダメ出しノイズ(自分は重要でないほうがいい)
2)ありのままの自分封印ノイズ(自分のままでいないほうがいい)
3)思考停止ノイズ(自分は考えないほうがいい)
4)他人ファーストノイズ(欲しがらないほうがいい)
5)謙虚謙遜ノイズ(受け取らないほうがいい)
6)出ない杭ノイズ(達成しないほうがいい)
7)石の上にも三年ノイズ(がまんしたほうがいい)
8)他人がこわい裏切りノイズ(信用しないほうがいい)
9)ちゃんとしなきゃノイズ(子どもでないほうがいい)
10)幸福恐怖症ノイズ(幸せにならないほうがいい)
11)完璧主義ノイズ(完璧でないといけない)
12)タイムイズマネーノイズ(急がないといけない)
13)おもてなしノイズ(喜ばせないといけない)
14)ドMノイズ(努力しないといけない)

(『「自己肯定感低めの人」のための本』64~65ページより引用)

これらは、自己肯定感の低さに悩むクライアントの傾向から、著者が独自に考え出したもの。

それぞれ「ノイズの症状あるある」と、その根底にある心の動き、クセを矯正するための処方箋が書かれているので、性格判断のような気持ちで楽しく読み進めることができます。

「飲み物を少し残す人」に共通するノイズとは

14のタイプのうち個人的にドキッとしたのは、6番目の「出ない杭」ノイズ。子どもの頃にいわゆる「出る杭は打たれる」体験をしたり、ドジをしたことでかわいがられる経験をしたりしたことで、「達成しないほうがいいんだ」「成功しないほうが得だ」という妙な勘違いが生まれる、というものです。

このタイプの人は、ゴール目前で失敗する、チャンスを凡ミスでふいにするなど、詰めが甘い人が多いそう。「出ない杭ノイズ」の影響で、何かを達成すること自体を心の奥で拒んでいることが原因であり、自分ができないことばかりに目が行きがちだといいます。

予想外だったのは、その処方箋です。

「出ない杭ノイズ」の悪影響がある人に、ほぼ間違いなく共通する行動のクセがあります。このクセの矯正が、ノイズの解消にかなり効果的です。それは……、ペットボトルやコップの飲み物を、最後まで飲み切らずに少しだけ残すクセ。このクセを矯正して、飲み物を飲み切るようにしてみましょう。最初は意外と難しいので、ぜひトライしてください。

(『「自己肯定感低めの人」のための本』95ページより引用)

私もこのクセをよく指摘されていて、我ながらどうしてだろうと不思議でした。言われてみれば、確かに「出ない杭ノイズ」の傾向があるかも……。「出ないための抑えるエネルギーを、出過ぎるための押し上げエネルギーにしよう」という著者のアドバイスも響くものがありました。

幼少期の経験が「メンタルノイズ」をつくる

こうしたメンタルノイズの元になっているのは、主に6歳までの体験や記憶であり、心理学では「マインドセット」と呼ばれているのだそう。

ひとりで静かにしていたら親が「いい子ね」と喜んでくれた、ルール違反をしたら先生にすごく怒られた……。そうした幼少期の経験が潜在意識に刻まれて、「〇〇してはいけない」「〇〇したほうがいい」というマインドセットを形づくります。

「自己肯定感低めの人」は、なぜ自分がそうなってしまうのかがわからず、ひたすら「ダメな自分」ばかりを意識しがちです。

潜在意識の中で育まれたノイズの存在に気がつけば、それを受け入れるにせよ、キャンセルするにせよ、自分で納得して、自分で決めている感覚を得ることができるはず。これこそが、自己肯定感にほかならないと著者は語ります。

ぺこぱ風「とも言い切れない!」はマジカルワード

本書では、自分のタイプを把握したうえで、ノイズに邪魔されない心をつくる「ノイキャンエクササイズ」なども紹介されています。「ぺこぱ風セルフツッコミ」のように、ユーモアがあって楽しく取り組めるものが多いのが特徴です。

おすすめは、自分への全肯定ツッコミ。お笑い好きの人なら、芸人のぺこぱさんの漫才をイメージしてください。どんな悪い結果でも、許せない行動でも、すべて肯定してあげるということです。

例えば、自分封印ノイズが邪魔して、人と比べて「私ってダメだなあ」と口にしてしまったとき、即座に「とも言い切れない!」とツッコミを入れる。(中略)繰り返していると、ノイズに邪魔されるダメージが少しずつ弱まり、効果がある人は、それだけでメンタルノイズが気にならなくなります。ポイントは相手も自分も否定しないこと。「とも言い切れない!」は、深く考えなくても一瞬で心を落ち着かせることができるマジカルワードです。

(『「自己肯定感低めの人」のための本』187~188ページより引用)

メンタルノイズは、自分がふだん気づいていない「自分らしさ」のヒントにもなると著者。

「自己肯定感を高めなきゃ」と思うほど気分が落ち込むという人は、ぜひ本書を手がかりに、自分自身の心のクセを探してみてください。

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