幸せの分母は多いほうがいい。ミシュラン1つ星シェフの愛のレシピ
Twitterでバズったレシピを網羅した愛蔵版
鳥羽周作さんそのワイルドな風貌と圧倒的な仕事ぶりから、“海賊シェフ”の異名を取る鳥羽シェフ。新型コロナウイルスの影響で来店できないお客様が増えた春、真っ先に始めたのは「sio」のレシピをTwitterで公開することでした。
みんなそんなに家にいるんだったら、唐揚げとか、ぜひこのレシピで作ってほしい。ただそう思った素直な気持ちです。1回レシピあげてみようかって思ってその日にあげたら、すごい反響だった。それで、ますますみんなの辛い状況を知って……今、家にいて、レシピを必要とする人がこんなに多いんだって。
（『やさしいレシピのおすそわけ #おうちでsio』8ページより引用）
その3日後には、店をスタッフに任せて、3週間家にこもってひたすらレシピを考えていたのだとか。そうして紹介したレシピは「#おうちでsio」のハッシュタグとともに反響を呼び、たくさんの人から「作ってみた」リポートが寄せられ、SNSを賑わせました。
「140字以内」の制限から生まれたシンプルさ
『やさしいレシピのおすそわけ #おうちでsio』よりもともとTwitter用に考案されたレシピだけに、本書に登場する料理は材料や手順がとてもシンプル。私もSNSで大人気だった「無限パスタ1～塩こぶバターときのこ」を作ってみたのですが、びっくりするくらい簡単でした。
材料は2～3種のきのこと1.7mmのパスタ、塩こぶ、めんつゆ、バター、サラダ油、青じそだけ。塩こぶ、めんつゆ、バターの3本柱で味がピタッと決まるので、青じそがなくても十分美味です。
作り方はTwitterにもありますが、書籍ではさらにわかりやすく書かれていて、パスタを茹でるコツも紹介されています。あまりにも簡単でおいしく、一度で手順を覚えられるので、2日続けてランチに作ってしまったほど。忙しいときの助っ人レシピとしても最強ですね。
市販品のちょい足しでハッとする味に
「#おうちでsio」の料理は、料理ができる人に向けたものではなく、「再現性が高くて生活を助けられる料理」だと語る鳥羽シェフ。登場回数が多いのは、家庭でのリクエストが多い定番なのに、実際に作るとイマイチ味が決まらない……というメニューです。
それが鳥羽シェフの手にかかれば、いつもの味との違いは歴然。テクニックではなく、市販のお惣菜や調味料なども使用する独特のセンスで、ハッとするほどおいしいレストランの味に変身させてしまうのです。
例えば「激うま10分ハヤシライス」は、スーパーで売っているデミグラスソース缶と野菜ジュースを使用。主要な材料は牛薄切り肉と玉ねぎだけで、隠し味にみりんやケチャップを使い、肉も玉ねぎも煮込みすぎずに手早く仕上げます。
牛肉はふんわり、玉ねぎはほどよくシャキッと感が残る絶妙な仕上がりで、こちらも評判は上々。デミグラスソース缶さえ用意しておけば、急な来客のときも安心の“お宝レシピ”です。
新しいのに万人ウケする「ネオおふくろの味」
こうした料理の根底には、「なつかしい定番料理をアレンジする」という「sio」のコンセプトがあるようです。
sioの料理はなつかしい料理や伝統的な定番料理を少しアレンジ、アップグレードしたものが多いんです。例えば日本の家庭料理を少し工夫して「ネオおふくろの味」にすることを意識したりしています。どこか新しくも、万人ウケする味に！
（『やさしいレシピのおすそわけ #おうちでsio』35ページより引用）
シンプルなのに発見がある本書の料理は、自炊に飽きてきたときのカンフル剤としても効果的。ハンバーグにお好み焼きソースを使ったり、焼き鳥缶でふわとろの親子丼を作ってみたり。最高の調合で作る「sioの究極カルピス」や、コンビニで売っているパンをおいしく変身させる方法など、好奇心をそそられ、ちょっと試してみたくなるレシピが満載だからです。
「幸せの分母」は多いほうがいい
ポップでありたい。2万円の料理もできるけど、実は唐揚げやナポリタンも大切にしている。それはなぜかと言うと、幸せの分母は多いほうが尊いから。（中略）もし、世の中における難しい問題を、少しでも「おいしい」で解決することができたら……自分たちにできることはそれが一番だと思っています。
（『やさしいレシピのおすそわけ #おうちでsio』9ページより引用）
本来なら企業秘密であるレシピを、惜しみなく公開してくれた鳥羽シェフ。しかも一切の手抜きはなく、「sio」のスペシャリテであるカルボナーラなどは、お店の味を再現できるレシピと、より簡単に作れる「おうち版」の2パターンが掲載されています。
簡単でおいしく、再現性の高い料理は、確実に「幸せの分母」を増やしてくれる贈り物。シェフのおすそわけに感謝しつつ、1品ずつレパートリーを増やしていきたくなりました。
￥1,430
まだまだあります、料理のコツ。
｢手のひら｣を使うだけ。バランスのよい食事を継続するテクニック
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