新著『それはきっと必要ない ── 年間500本書評を書く人の「捨てる」技術』(誠文堂新光社)では、日常にあふれるモノから生活習慣にいたるまで、それが本当に必要かを掘り下げた思索の過程を綴っています。
部屋はいらないモノでいっぱいで、いつも何かに追われている──本書を読めば、そんな落ち着かない毎日がちょっと変わるかもしれません。
16,000枚のコレクションを手放して知った「物欲」の意味
「捨てる技術」を磨くというと、モノを減らしてシンプルに生きる、ミニマリスト的なライフスタイルを想像する人もいると思います。
しかし著者はミニマリストではなく、むしろ本好き、音楽好きのコレクター気質。以前は書斎として使っていた6畳の洋室が、レコードとCDと蔵書でいっぱいになるほどだったそう。
そこで著者がとったのは、レコードもCDもそれぞれ8,000枚程度、本も相当数を売るという思い切った行動でした。
たいした額にはなりませんでしたが、だからこそ余計に「蒐集(しゅうしゅう)って、そんな程度のものなんだろうな」と感じました。
ただ、だからといって、なんでもかんでも処分すればいいわけではありません。人にはそれぞれ「残しておくべきもの」もあるからです。
(『それはきっと必要ない ── 年間500本書評を書く人の「捨てる」技術』135ページより引用)
著者にとっての「残しておくべきもの」、それはレコード。レコードだけは必要だったと思いなおし、再び集めはじめたのだとか。
バカバカしい話ですが、もしもあの時点で一度処分していなかったら、いまもまだ無目的にいろんなものを集め続けていたかもしれないとも思います。(中略)自分にとって必要ではないものを見極め、それらを処分していくと、物欲の無意味さがなんとなくわかってくるのです。
(『それはきっと必要ない ── 年間500本書評を書く人の「捨てる」技術』135~136ページより引用)
いったん多くを手放すことで、自分にとって本当に必要なものを知ることができたという著者の体験は、多くの示唆を与えてくれます。
物欲をがまんすることがシンプルな暮らしの第一歩だと思いがち。しかしそれよりも重要なのは、自分にとって「本当に大切な1%」が何かを把握すること。
それさえできれば、手軽な刺激としてニセモノの物欲に走ることもなくなり、自分が本当に求めるものだけで生活を満たしていけるのかもしれません。
人生で大切なのは、きのうと同じきょうを過ごすこと
本書ではこのほかにも、仕事、コミュニケーション、インプット、生活習慣、メンタルという5つのテーマにおいて、著者が「必要ない」と判断したものや、逆に「必要だ」と考えるに至ったものごとが取り上げられています。
たとえばコミュニケーションでは、相手にへりくだりすぎるような態度は不要。メンタルでは「波風を立てない配慮」は不要だけれど、「きのうと同じきょうを過ごすこと」は必要であり、人生においてとても大切なことだと著者は語ります。
朝起きて、家族に声をかけ、コーヒーを飲みながら新聞を読む。パソコンを立ち上げてメールチェックをし、SNSを確認し、なるべく早い時間から仕事を始め、妻とふたりで昼食をとり、また仕事をし、疲れたら外に出て自転車を走らせ、夜には家族と夕食をともにし、晩酌をして、早めにベッドにもぐり込んで本を読む。眠くなったら本を閉じ、翌朝はまた早めに起きる。
そんな当たり前の、地味で静かな日常が、どれだけ大切か。それがようやくわかるようになったのです。そのため、いまなら自信を持って「身の丈に合った生き方がいちばん自然で、そして意義のあることだ」と断言できます。
(『それはきっと必要ない ── 年間500本書評を書く人の「捨てる」技術』178~179ページより引用)
コロナ禍の今、著者のメッセージは多くの人の心に響くはず。必要以上の刺激を求めず、「いまやるべきこと」にきちんと向き合う──それは穏やかなようでいて、誰よりも強い人の在り方なのでしょう。
本当に大切なものは?
それはきっと必要ない: 年間500本書評を書く人の「捨てる」技術
1,540円
[それはきっと必要ない ── 年間500本書評を書く人の「捨てる」技術]
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確かに漫画も一度手放してまた読みたくなる漫画は自分の中の名作であることに気が付く
それに気づくまでに時間がかかるのが人間でしょ
思考停止に陥ってただただ漫然と機械的に蒐集を続ける…自分のつくりあげてきたスキーム、生活様式が、自分の満足とどれだけ乖離しているのかを思い知るためには、実際にすべて取り払ってゼロベースで考えるぐらいやらないと、やはり難しいのかもしれない。
蒐集品を含めて自分と表現するのかどうかによるで。