こころとカラダの調子にまつわる素朴な疑問に、専門家が答える連載「こころとカラダQ&A」。今回は、「やる気の起こし方」について公認心理師の佐藤セイさんが答えてくれました。

Q:やる気の出し方を教えてください

「やる気スイッチ」は存在しますか? やらなければならないことにとりかかるまでに時間がかってしまうのですが、やる気の出し方を教えてください。

A:やる気を出すためのコツはあります

「やる気スイッチ」が存在するかどうかはわかりませんが、やる気やモチベーションを出しやすくする行動や環境については様々な研究が行われています。

今回は「目標設定」「行動」「生活スタイル」という3つの観点から、やる気を出すポイントを解説します。

コツ1.やる気を高める目標設定をする

アメリカの心理学者ロックが提唱した「目標設定理論」では、

具体的な内容(何のために、何をするのか) できそうでできないレベル

2つを押さえた目標設定がモチベーションを高めるために重要だとされています。

例えば「精一杯がんばろう!」という漠然とした目標よりも、「仕事で必要な知識を身につけるために、この本を◯日までに読む」という具体的な目標の方がすぐ行動に移れます。

また、「年に1冊読む」や「毎日1冊読む」のように極端に簡単すぎたり難しすぎたりする目標より、「週に1冊」の方が「やってみるか」という気持ちになれるはずです。

コツ2.思い立ったら5秒で行動する

「〇〇をしよう!」と思ったら5秒以内に取りかかる。

これが「5秒ルール」です。アメリカのメル・ロビンス氏が提唱しました。

私たちの脳は「やらなきゃいけないけど、やりたくない」という事柄に対して、「やらなくてすむ言い訳」を次から次へと考え出します。

例えば、勉強をしないといけないときに「部屋が散らかっていると集中できないから」と掃除を始めたり、ダイエットをしようか悩んでいるときに「今日は疲れているから明日始めよう」と先伸ばしにしたり……そんな経験に心当たりはありませんか?

これらには「認知的不協和理論」が関連しています。

認知的不協和理論とは葛藤を抱える不快感に耐えられず、脳が言い訳を考えて葛藤を無理やり解消させてしまうこと。

そのため、「やらなければならない」と「やりたくない」という葛藤を抱えると、その葛藤を解消するため、「今は◯◯だからできない」という言い訳を生み出し、やる気をなくしてしまうのです。

脳がそんな言い訳を考えだす前に動きはじめてしまうのが「5秒ルール」です。

コツ3.交感神経を優位にする生活スタイルを送る

私たちの生命活動は「自律神経」によって維持されています。自律神経とは私たちの意思に関係なく、内臓などの機能を24時間コントロールしてくれる神経。この自律神経は「交感神経」と「副交感神経」の2つから成り立っています。

交感神経が働くと体に緊張感が走り、やる気が高まります。一方、副交感神経が働くと、体がリラックスして意欲が低下し、眠くなっていきます。これら2つが交互に働くことで、私たちの生活リズムが作られているのです。

本来、交感神経は昼間に優位になり、副交感神経は夜間に優位になります。しかし、何らかの事情で生活リズムが乱れると、昼間に副交感神経が優位になってしまい、「なんだかだるくて、やる気が出ない」という状態に陥ってしまいます。

「やる気を出したい!」というときには、交感神経を刺激してあげることが大切です。

日光を浴びる 軽くストレッチをする 熱いシャワーを浴びる

というだけでも交感神経が刺激され、やる気が出しやすくなります。

また、昼間に交感神経がしっかり働くよう、夜間は副交感神経が働きやすい環境を作り、交感神経を休めておくことも大事。

お風呂にのんびり浸かる 照明を少し暗いものにする マッサージやヨガで緊張をほぐす

など、刺激を減らした環境で、心身の緊張を解きほぐしていきましょう。

また、副交感神経を優位にするには、

アロマキャンドルの揺れる火を眺める テンポのゆっくりした音楽を聴く

など、体が穏やかなリズムを感じられる活動を取り入れるのも効果的です。

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