「気持ちよく生きる」にはどうしたらいい? LOHASなライフスタイルを送る人たちに話を聞く「Interview 気持ちよく生きる」。

今回は俳優、アーティスト、レトロワグラース代表とさまざまな顔を持つ柴咲コウさんにインタビュー。柴咲さんは、2022年2月18日に劇場公開される短編映画制作プロジェクト『MIRRORLIAR FILMS(ミラーライアーフィルムズ) Season2』に参加。15分の短編映画『巫.KANNAGI』で初めて監督を務めました。

この初監督作品から見えてくるのは、自身の中の問題意識に真摯に向き合い、表現する姿。柴咲さんの大事にしている価値観や心身ともに気持ちよく生きるための術や思いをお聞きします。

“気持ちを共有すること”が大切だと思う。映画監督も、会社経営も

柴咲さんはサスティナブルな社会を実現するため、アパレルブランドやビューティブランドなど多岐にわたる事業を行う「LES TROIS GRACES(レトロワグラース)」を2016年に起業。会社の代表でもある柴咲さんは「映画監督と会社経営には共通点がある」と語ります。

「どちらも関わる人たちと“気持ちを共有すること”が大事です。元々、私は自分からコミュニケーションをとるのが苦手なほうで……。俳優として作品に参加しているときも、楽屋でひとり静かに過ごしがちなタイプ。積極的に共演者の方に話しかけることは多くありません。

でも、会社を約5年やってきて意識が少しずつ変わりました。自分のやりたいことや発信したいことは、周りの人にきちんと伝えないと具現化できないと実感。今回、映画監督をやってさらにその思いが強くなったし、同時に共有することの難しさも痛感しました

撮影中の一コマ。「自分が撮りたいものを撮らせていただけるのは本当に贅沢。今後も機会があれば挑戦したい」と柴咲さん。

15分の短編『巫.KANNAGI』の撮影期間は2日間。短期間でスタッフと気持ちを同じくするため、柴咲さんはあることを行いました。

「『初めまして』の方が多かったので、みんなで同じことをしたかったんですよね。それで、撮影の前、一緒に瞑想をしました。私から一方的にあれこれと説明して、撮影が終わったら『さよなら!』となるのは寂しいし、味気ない気がして……。組まれたセットの中で無音の時間を共有できたら、作品への理解や解釈にも繋がるかも?という意図もありました。

それから、制作する前の段階で撮影中に出るゴミを最小限に抑えたいとも伝えさせてもらいました。例えば、撮影中のお弁当に残りがでないように気を配ってもらったり、コップやスプーンは二度三度使ってから捨てましょう、と。皆さん、私の気持ちを汲んでくれてゴミを小さく、ちぃーさくしてくれて(笑)。有能で思いやりあふれるスタッフさんに恵まれて、気持ちよく撮影できました。『柴咲組』はとてもいいチームだったと思います」

社会で起きている事を“自分ごと”として考えたい

『巫.KANNAGI』のテーマは、母子の「貧困と孤立」。この作品が訴えるメッセージは、思わず目を背けたくなる厳しい現実です。この社会問題をテーマに選んだ理由を伺いました。

「私自身、ただ楽しむよりも何かを学ぶことができる映画のほうが好きなので、今回は社会課題を扱いました。私の周りにもシングルマザーがいて、この社会の中、母ひとりで子どもを育てる厳しさを強く感じていました

『巫.KANNAGI』より。右は母役のしゅはまはるみさん、左がさな役の矢部俐帆さん。

今はとくに、自分の生活に精一杯で他人を気遣うことが難しいですよね。でも、社会で起きている事を“自分ごと”として考えるのが大事だなと思っていて……。今すぐ困っている人へ何かすることは難しくても、この作品が考えるきっかけになればうれしいです」

北海道の生活で物では補えない本当の豊かさを実感

柴咲さんは現在、北海道に一軒家を建て都内と往復しながら二拠点で活動をしています。北海道へ移住後、心境に変化はあったのでしょうか。

“足るを知る”でしょうか。本当の豊かさは物で補えないんだなあって心から思います。例えば、田舎だと家の周りを少し散歩するだけで、すぐに20分ぐらい経っちゃう。ジムに通うのもいいけど、田舎道をのんびり歩くほうが自然で健康的だなと思えたり(笑)。長い都会の生活で染みついている価値観はありますが、北海道の暮らしで自分の常識をよりナチュラルな方向にバージョンアップできるといいなと思っています」

また、柴咲さんは2018年「環境特別広報大使」に就任。環境問題をテーマにしたテレビ番組のナビゲーターを務めるなど、環境問題に積極的に取り組む姿が広く知られています。表現者、会社経営者、映画監督……。柴咲さんを突き動かす原動力を伺うと、ある“言葉”が返ってきました。

「フランスの経済学者ジャック・アタリ氏の『利他主義は究極の利己主義』という言葉に尽きると思っています。他人が喜ぶことや利益になることをすると、結局、自分も笑顔になれるしワクワクすることに繋がるんですよね。『巫.KANNAGI』に込めた思いも、環境問題に取り組む理由もこの言葉が基になっている気がします。

私自身も経済的に厳しいときを経験しているので、『自分が困ったとき、どうしてほしかった? どうしてほしい?』と考えます。自分の行いは巡り巡ってくるような気がするので……」

自分がワクワクすることを貫いた方が絶対にいい

自分を型にはめず、さまざまな分野でチャレンジし続ける柴咲さん。

「人にどう思われるかを怖がって挑戦しないよりも、自分がワクワクすることを貫いた方が楽しい」と笑顔で話します。

柴咲さんが気持ちよく生きるための源は、ワクワクの種を絶やさないことなのかもしれません。

柴咲コウ(しばさき・こう)
俳優・アーティスト・レトロワグラース代表。
2017年NHK大河ドラマ「おんな城主 直虎」で主演を務める。2016年持続可能な社会を作るため「レトロワグラース」を設立、2018年には環境省より「環境特別広報大使」に任命される。2022年2月18日、短編映画制作プロジェクト『MIRRORLIAR FILMS(ミラーライアーフィルムズ) Season2』にて初監督作品『巫.KANNAGI』が公開された。同年に、TBSテレビ金曜ドラマ『インビジブル』(4月スタート)、映画『ホリックxxxHOLiC』(4月29日公開予定)、映画『沈黙のパレード』(9月16日公開予定)、映画『月の満ち欠け』(22年冬公開予定)の出演が決定している。
公式HP:https://koshibasaki.com/
インスタグラム:@ko_shibasaki
Twitter:@ko_shibasaki
YouTube:柴咲コウ 公式 'Les Trois Graces' Channel
レトロワグラースhttps://lestroisgraces.com/

自由で新しい映画制作の実現を目指した短編映画制作プロジェクト。“変化”をテーマに俳優、映画監督、漫画家、ミュージシャンなど総勢36名が監督した短編映画を、オムニバス形式で4シーズンに分け公開。2022年2月18日に公開する「Season2」は、阿部進之介、紀里谷和明、志尊淳、柴咲コウ、三島有紀子、山田佳奈、「選定クリエイター枠」からAzumi Hasegawa、柴田有麿、駒谷揚の計9人の監督作で構成される。 https://films.mirrorliar.com/

『巫.KANNAGI』
4年前に父親を亡くした少女さなは、母親と慎ましくも幸せに暮らしていたが、ある日、2人の前に突然“メッセンジャー”が現れる。なぜ彼女は現れたのか・・・。貧困や孤立など現代社会に潜む闇が徐々に映し出されていく。
監督:柴咲コウ
出演:矢部俐帆、しゅはまはるみ、山崎樹範、柴咲コウ

撮影/小禄慎一郎、ヘアメイク/川添カユミ、スタイリスト/柴田圭

衣装協力/ドレス 85,800円 税込(CINOH/MOULD)、ピアス 9,900円 税込、リング 8,250円 税込(ともにPANDORA)、その他スタイリスト私物
問い合わせ先/MOULD(03-6805-1449)、PANDORA カスタマーサービス(0476-50-2638)

RSS情報:https://www.mylohas.net/2022/02/kou_shibasaki_interview.html