もうすぐ夏休み。今年の夏は、ちょっと趣向を変えて、自然回帰の旅に出ませんか? おすすめなのが、アメリカ、グランドサークルへの旅。アメリカのアリゾナ州、ユタ州、ニューメキシコ州、コロラド州にまたがる半径230kmの圏内をグランドサークルといい、この中には10の国立公園、16の国定公園、19の国立モニュメントや州立公園が集まっています。
地球が織りなす壮大なアート
コロラドプラトーと呼ばれるこのあたりの地盤は、地球が始まって以来、何十億年もの長い年月にわたり、地殻変動、隆起、侵食を繰り返し、人間の力には及ばない壮大なアートを今もなお刻み続けているのです。そんな生きている地球の姿は、都会に暮らしている私たちに、癒しとパワー、そして自然との共存意識を呼び覚ましてくれるでしょう。
ナバホ族の聖地"アンテロープキャニオン"
その中でも、幻想的で繊細な大自然のアートを楽しめるのが、グランドサークルの中心近くにある、アンテロープ・キャニオンという国立モニュメント。狭い幅の渓谷はスロット・キャニオンと呼ばれ、鉄砲水や雨水などによって削られた砂岩の壁は、飴細工のように繊細な模様を描いていて何とも幻想的。
ここは、アメリカ先住民のナバホ族の居留区の中にあり、管理、観光の運営などすべてナバホ族によって行われています。よってナバホ族のガイド同行でないと入ることはできません。にもかかわらず、今やアメリカ西海岸で最も多くの観光客が訪れる場所であり、最も多く写真撮影が行われている場所でもあります。
普段は暗い渓谷内ですが、太陽が真上に上がる正午前後になると、天井の開口部から太陽光線が幾筋も入ってきます。すると、砂岩の成分であるクォーツ・クリスタルが反射し、流線型の岩壁が様々な色に輝き出すのです。それを写真に撮ると、肉眼で見たのとは違う色に映っていて何ともミステリアス。光のビームがキャニオンの底まで届くのは、4月から10月までの時期なので、夏休みの時期はベストシーズンと言えます。
幻想的で美しい、またナバホの人たちが大聖堂と崇めるアンテロープ・キャニオンですが、キャニオンから数十マイルも離れたところで降った雨が鉄砲水となって突然ここに流れ込むこともあるそうで、天候次第で立ち入り禁止になることも。
アンテロープ・キャニオンが美しいのも、自然の厳しさも、人がいかなる技術を持っていても力の及ばないもの。人間よ、おごるなかれという、地球のメッセージが聞こえてきそうです。この夏は、今なお先住民が守る大地に立って、大自然の織りなすアートを堪能しに行きませんか?
[アンテロープキャニオンツアー/HIS]
(松田朝子)