先日、ジェームス・タレル(James Turrell)の個展『Aten Reign』を観に、NYのグッゲンハイム美術館に行ってきました。
巨匠、フランク・ロイド・ライトが設計したこの美術館は、吹き抜けになったロトンダを螺旋状のスロープが取り囲むように出来ています。まるで貝の中に入ってしまったかのような静かな空間。
ジェームズ・タレルの光のアートで満たされたその場所は宇宙空間のような厳かな雰囲気があり、光と建築があまりにフィットしていて、まるで建物までが彼の作品の為に作られたもののように感じるほどでした。
今回の作品「Aten Reign」は、10年近くの製作期間を経て今回ようやく公開されたのですが、彼の個展はニューヨークでは何と33年振りだということ。
現在70歳の彼は、製作者やキュレーターたちと何年も時間を積み重ね、その完璧な空間を創り上げたのです。
今までに何度も行っている美術館ですが、その空間の真ん中に寝そべり、渦巻きを下から上へと覗いていると、遠近感や時間がどんどんグニャリとしてきて、どこか違う場所へ放り投げられたような感覚になってきます。
実際は、鉄のリングにぴんと張った布でチューブ状のものが作られ、カーブを描くバルコニーは不透明な布で覆われ、マルチカラーの光がそれ全体を包み込むように出来ているそうなのですが、観ているだけでは、どうなっているのがはっきり分からないです。
影を生みだす光の色は、およそ60秒ごとに移り変わっていきますが、その変化をはっきりと知覚することはできません。ついさっきまで青暗い朝もやの中にいるようだったのが、いつの間にか太陽を覗いたときのような白く飛んだイエローに包まれていた」と突然気づくような感じなのです。
あとで調べてみると、作品名として使われている「Aten」は、紀元前14世紀のエジプトでアメンホテプ4世(アクエンアテン)統治の頃に崇拝されていた古代エジプトの太陽神の事なのだそう。光の円盤が何層にも重ねられたアトリウム、私がそこで感じた感覚はまさにそのタイトル通りのものだったので、改めて驚きました。
彼の作品は日本でも素晴らしいものが観賞出来ます。私が随分前にブログでも紹介した、『HOUSE OF LIGHT』という滞在型の作品で、その建物(作品)に一泊して観賞するという贅沢なもの。
もし気になった方は是非、チェックしてみて下さい!
(カヒミ カリィ)