この企画を始めて、あらためて知り合いの男性に「メンズコスメを使ってる?」と聞いてみると、そこまで本格的に使っている人には会わないもので。とはいえ、興味はあるという人も意外と多いもの。では、なぜ使い始めないのか。逆にいえば、なぜ使うのか。今回は、その辺りのことを、パピエラボの江藤さんに伺ってきました。

パピエラボ店主

江藤公昭(えとうきみあき)

ランドスケーププロダクツにてインハウスデザイナーとして在籍時に紙にまつわるプロダクトを取り扱うショップ、パピエラボを設立。2010年1月に独立し、店舗運営を中心にデザインや印刷の窓口的役割を担う。www.papierlabo.com

ーー今日お持ちいただいたのは「イソップ」ですか?

江藤:はい。ハンドクリームはこれですね。どこのブランドが好きっていうのは、とくにないんですけど、お店に行ってデザインが格好良かったら買ったりという感じです。

ーー使い出したきっかけ?

江藤:何年か前にサンフランシスコに行ったんですけど。向こうは、オーガニックマーケットが多いんですよね、レインボーグロッサリーとかいろいろ。それで、一緒に行っていた女の人たちが、「ジョンマスター・オーガニックが安い」っていって、すごい買ってるのを見て

なんなんだ!と思って。そこから、じゃあ買ってみてようかと。それぐらいからですね。

ーーそれまでは、メンズコスメやオーガニックなどに特に興味はなく。

江藤:そうですね。食べ物に関しても、そのぐらいからオーガニックというのを初めて意識しだしました。

ーーハンドクリーム以外だと、キールズのリップクリームも使われているんですよね?

江藤:前は使ってましたね。すぐに色々変えてしまうので。飽きちゃうわけではないんですけど。そう、取材のお話を頂いたときにも言ったんですけど、べつにオーガニックだから買おうっていうのは、正直いって全然ないんですよ(笑)

たとえば、リップクリームなら「あっやばい、唇が乾燥し出した」っていうときに、ふらっとお店に入って、あっこれなんかいいと思って買うぐらいの感じで。パッケージが良かったり、植物由来とか、ちょっと気にしているようなものだったら安心して買えるんですけど。まわりの人とも話して、とくにリップクリームみたいに口に近いものだと、ケミカルっぽいのはちょっと怖いなと思って。その辺は気を遣うようになりましたね。

ーーフェイシャルケアは?

江藤:前はやってたんですけど、いまはやってないです。

ーーなにも使わずに、洗って終わりという感じですか?

江藤:ブラシを使うんです。職人さんが作っているブラシがあって。それでキレイに泡立てるようにしてます。

ーーそれは、洗顔のときにを使っているんですか?

江藤:そうですね。「サンタマリア・ノヴェッラ」の石鹸を使っていて、それを泡立てるのに使います。

ーーやはり、違うものですか?

江藤:うん、全然違いますね。同じところのボディブラシも使ってますし。

ーーちなみにどちらのものですか?

江藤:浅草にある宮川刷毛店という昔からあるところで。印刷所の近くにあって、佇まいがすごいキレイなんですよ。工房で職人さんが作ってる感じも格好良くて。そこの主人に「これあったら、ほかいらないよー」って言われて。それで買ってみたら、本当にいらないなって思えるくらい良かったです。

メンズコスメの気恥ずかしさ

ーー僕も今まで使っていなくて、ちょっと恥ずかしいといいますか。ちょっと格好悪いというイメージが......。

江藤:わかります。人前で出してやってる男性はちょっとね(笑)

リップクリームなんかでも、やっぱり乾燥して痛くなってても、男性が人前でするのって、見てるとちょっとなあって思ってしまいますし。それは、人にもよるのかもしれないですけど。

ーー石川顕さんも同じことを言ってました。「声高に言わないよね、男は」と。

江藤:そうですね。あえて言わないし、人前ではやらないですね。お風呂上りなんかはさすがに乾燥するので、ケアすることもありますけど。

ーー年齢とともに、身だしなみとして意識するといったことは?

江藤:ぼくは、あんまりないですけどね。唇はかなり乾燥するので、辛くなってきたらやるくらい。あんまりこう身だしなみとしてキレイにしなきゃというよりは、対処の方が多いです。

ーー接客業として意識している、といったことも?

江藤:うーん、特に無いですね。ハンドクリームなんかを買っても、全部使いきるってことがあんまり無いんですよね。そこまで大量に使うものでもないので。

ーー食べ物に関してはどうですか?

江藤:野菜はオーガニックという点もそうですけど、ほかにも色々と気になりますから、選んで食べるようにしてます。かと言って外食も多いので、すごい気にするわけでも無いんですけど。スーパーでも産地や生産者を見たり。でも、それを全て信じるわけではないので。まあ、なんとなくですね。

ーー今回の企画でいろいろな人に取材するなかで、男性は「ロハス」という言葉に馴染みがないのかなと。

江藤:うーん、たしかにあんまり馴染みないですね。良いなとは思いますけど。

ーー横目で見るといった感じですか。

江藤:そうですね。

ーーじゃあ特にファッションで「オーガニックコットンが」と言ったこだわりも。

江藤:全然ないですね(笑)良ければいいという感じです。

ーーやはり、石川さんが同じように「美味しい先にオーガニックがあるならいいけど」と。

江藤:そう、目的と手段ですね。オーガニックだからって言うのはないかな。

生活の中でほんとうに必要なものとは

ーー雑貨でも、そこに気をつかっていることがいいという風潮は、少なからずありますよね。

江藤:そこまで気にしてやるんだったら、作らなければいいのにと思うんですけどね。

ーーそうですね。生活で必ず必要なのかというと、そうでもないですし。

江藤:それよりも、本当にちゃんと使えるものをしっかり作った方が、より環境にいいんじゃないかなと思って。

すぐ使って捨てるようなものがぽんぽんと出てて。環境のことを考える考え無いの前に、多分そういうことの方が大事な気がしますけどね。

ーーそういった「より永く使える物」という視点は、セレクトをするときに意識されますか?

江藤:うーん、価格帯もそうですけど、うちで扱っているのは一般的な文具に比べると高いものも多いし。もちろんノートとかね、消費される物ですよね。それでも、大事に使って貰えそうなものの方が、バンバン捨てるものよりもいいんじゃないかなあと思うぐらいですね。

そこは、声高に「永く使えます」というのもカッコ悪いし、受け手がどう感じるかのところもあると思うので。

ーーそうですね。

江藤:なんとなく10人中5人でも気付いて、そういう使い方してくれたらいいんじゃないかなあと思うけど。

たとえば器なんかでも手仕事だからいいみたいな。手仕事でオーガニックだからいいみたいな言い方をするんだけど、手仕事じゃなくてもいいものは一杯あるのに、とか。そういうところの方が大事な気がしますね。

ーー海外のオシャレな生活を、ただそのまま日本でやろうとするのも同じことかもしれませんね。

江藤:やっぱり、その風土に合ったアイデアとかやり方がありますからね。無理に真似しても、無駄な消費になってしまうだけですし。

向こうに行って見てしまうと、日本で同じことは出来ないなと思いますし、そのために海外旅行に行くようなところもありますからね。これを日本的に解釈したらどうなるんだろうとか。そこで一つ考えるか考えないかは、大きな差になると思います

なんとなくスタイルだけ真似ても、やっぱり本質は全然わからないし、重みもないでしょうから。

コスメを使い始める理由は、人それぞれ。肌が荒れるからケアとして使うのはもちろん、オシャレだからというのも、もちろんあると思います。ただ、そこでなにを選び、なんで使うのか、今一度考えてみると面白いものです。その先に、自分にとってオーガニックなものが必要であれば、それを使う。そのくらいのフラットさも必要なのかもしれません。

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Aesop,PAPIER LABO.

(マイロハス/金井)

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