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母が私を育てていた時代、女性が働きながら女手一つで子供を育てることは今よりもっと難しく、困難を極める道でした。
無になって昼夜働く母に追い打ちをかけるように、離婚に関する裁判まで始まり、当時まだ学生だった私から見ても、母は生気を吸いつくされたように疲れていました。あのとき母はいつも、私になのか、自分になのか、笑いながらこんな言葉を口にしました。
大丈夫。死んだと思うたらなんでもできるばい(大丈夫。死んだと思ったらなんでもできるよ)。
その時の私には、この言葉の重みをまだ感じることができませんでした。
心がふうっと軽くなる理由時が流れ、私はあの頃の母の歳に追いつきました。子供こそ産んでいないものの、休みなく働き、仕事の重圧に押しつぶされる経験もする年齢になり、あの時の母の言葉が理解できるようになりました。
「大丈夫。死んだと思うたらなんでもできるばい。」
生きるのが苦しいとき、今までの自分をいちど無くしたことにすれば、もう失うものなんてな~んにもない。そう思うと、生きること、困難に立ち向かうことがラクになり、心がふうっと軽くなりました。
上司として失敗してはいけない、業績を上げなければいけない、人を育てなければいけない、女性らしくしないといけない、忙しくても美容の時間を作らなければいけない......、いけない......いけない......。
結局、周りからの重圧ではなくて、自分で自分の首を絞めていただけ。
人生の悩みの多くは、死んでしまって大事な家族や友達、恋人と会えなくなることを思えばどうってことない、些細なこと。
「大丈夫。死んだと思うたらなんでもできるばい。」
この言葉のおかげで、私も、そして今なお現役で働く母も、多少のことでは悩まなくなりました。だって、死んだと思えば、大切な人達と一緒に生きていられるだけで幸せだから。
young-woman via Shutterstock
RSSブログ情報:http://www.mylohas.net/2014/06/039079mother.html