世界のクラシック音楽界で最も高い評価を受けているピアニストの一人、マルタ・アルゲリッチ。5歳からピアノを学び、8歳で、すでにモーツァルトとベートーヴェンのピアノ協奏曲を人前で演奏するなど神童ぶりを発揮していた彼女は、16歳ですでに「生ける伝説」と呼ばれたほど。現在でも鍵盤の女王として広く知られていますが、いままで彼女の人生は謎に満ちていました。 アルゲリッチの知られざる素顔

9月27日(土)から公開になる映画『アルゲリッチ 私こそ、音楽!』は、いままで語られることがなかったアルゲリッチの素顔を映し出したドキュメンタリー。

アルゲリッチといえば、演奏会を急にキャンセルしたり、取材を拒否するなど、気難しいピアニストとして知られていると同時に実生活では、父親が違う3人の娘がいたりとスキャンダラスな面も。

『アルゲリッチ 私こそ、音楽!』の中では、それまで謎に包まれていたアルゲリッチの真実の姿がとらえられています。

メガホンをとったのは、マルタ・アルゲリッチの実の娘であるステファニー・アルゲリッチ。監督自身が母親になったことがきっかけになり、自分の母親とちゃんと向き合ってみようという思いからこの作品が誕生しました。

娘にしか撮れない母親の顔

マルタの生まれ故郷、ブエノスアイレス、祖母のいたフランス、現住所のあるスイス、さらには、大分など、様々な場所でマルタにカメラが向けられているのですが、そこには、マルタが、いままでオープンにしてこなかった家族に対する思い、葛藤や孤独があぶり出されています。

長女は生まれてから一度もマルタと一緒に暮らしたことがありませんし、次女は演奏会で世界中を駆け巡る母親代わりとなって三女の面倒をみたりと、一般的な家庭とは程遠い生活を送っていたアルゲリッチファミリー。

世間からは「離婚や結婚を繰り返す奔放なピアニスト」というレッテルを貼られていますが、子どもたちからみたら母親であることは変わりなく、スクリーンからは親子の愛情をたっぷりと感じることができるんです。

4人が集まって話す場面は、どこにでもある家庭と全く同じようにみえますし、まるで4姉妹のような雰囲気も感じられます。

子育ては家庭それぞれ。ステップファミリーであっても、どんな家族でも、問題や悩みはつきもの。それは、わたしたちの生活とも重なります。

現在、長女はヴィオラ奏者として、次女はジャーナリストとして世界を点々とし、今は、アリゾナ州の大学で教授を務めています。三女で監督のステファニーは、スイス、アルゼンチン、ベルギー国籍を持っていて、モスクワでロシア語を学び、その後ニューヨークで写真撮影を学び、パリでビデオのトレーニングを受けるなど、3人とも実にワールドワイド。世界をまたにかけてやりたいことを追求している姿は、どこか母親にも重なります。

アルゲリッチの音楽を知らなくても充分楽しめるドキュメンタリー映画「アルゲリッチ 私こそ、音楽!」。うっとりするほどキレイで若い頃の映像や演奏会の裏側なども映し出されています。ウソがつけなくて、まっすぐ生きるマルタ・アルゲリッチ。そんな彼女の姿からは、女性の強さも改めて感じ、勇気がわいてきます。

[アルゲリッチ 私こそ、音楽!] 

監督:ステファニー・アルゲリッチ

製作:ピエール・オリヴィエ・バルデ『パリ・オペラ座のすべて』『クレイジーホース・パリ 夜の宝石たち』 

出演:マルタ・アルゲリッチ、スティーヴン・コヴァセヴィッチ、ロバート・チェン、シャルル・デュトワ、ステファニー・アルゲリッチ

2012年/フランス・スイス/カラー/スコープ/5.1ch/96分/

原題:BLOODY DAUGHTER

配給:ショウゲート 

9月27日(土)、Bunkamuraル・シネマほか全国ロードショー!
 (c) Idéale Audience & Intermezzo Films.

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