小田焼の里から持ち帰った器たち。上2つが「柳瀬朝夫窯」、下4つが「坂本工窯」で求めたもの。
江戸時代の開窯以来、弟子を取らず一子相伝で技術や伝統を守り、10軒の窯元が共同体として「小鹿田焼」の名を共有する。器の裏返すと「小鹿田」の裏印があり、個人の名が入ることはない。10軒の窯元がともに目指すのは「丈夫で使い勝手がよく、実用的な暮らしの道具」であること。美を追求する芸術作品より、日常生活に根付く雑器を目指し、個人が有名にならなくてもいいという考えからという。
JR日田駅から「小鹿田の里」のある皿山までは車で30分ほど。バスは本数が少ないので事前確認を。
昭和初期まで全窯元が使用していた共同窯。いまは個人窯を使う窯元もあるけれど、共同窯も現役。
とはいえ、10軒の窯元にはそれぞれ違った特徴があり、見る人が見ればどの家のものかすぐに分かる。私が窯元めぐりをするなか、自分の好みはここだと思えたのが「坂本工窯」。本当はもっともっと持ち帰りたいものがあったけれど、心を鬼にしてどうにか4つにまで絞りこんだ。
10軒ある小鹿田焼の窯元の中で、もっとも好みだった「坂本工窯」。
軒先に並ぶ器。あれもこれもと欲しくなるから、ぱぱっと直感で4つの器を選出。
小鹿田焼は、その陶芸技法が国の重要無形文化財に指定されるだけでなく、のどかで美しい里山の風景が残され、登り釜のある皿山地区と棚田が広がる池ノ鶴地区が、国の重要文化的景観に選定される。さらに、谷川の水を利用して陶土を粉砕する「唐臼」の「ギィーーー......ゴトン」と響く音は、「日本の音風景100選」にも選ばれている。
窯入れ前に、天日乾燥される器。
「柳瀬朝夫窯」で買いものをして、工房をちらりとのぞかせていただく。
山、土、水、草木、石垣、昔ながらの民家、工房、登り窯。日本の原風景といえる里山を子どもたちが駆け回り、地域みんなで働きながら見守る。各窯元の軒先に、ときに無造作に、ときにさりげなくならぶ陶器とともに、豊かな暮らしや仕事のあり方に、胸をうたれた。
茶碗や鉢の中にはコケが。お手本にしたい、陶器の活用法。
民家の壁や花壇にが、陶器が埋め込まれ景色を彩る。
集落に一定に響く「ギィーーー......ゴトン」という音は、陶土をひくための「唐臼」の音。ししおどしのような仕組み。
旅から戻り、ハナウタまじりに台所へ立っているのは、料理を小鹿田の里で求めた器に盛りつけるのが楽しみだからだ。