1月末の「第44回ロッテルダム国際映画祭」への出品や、アイドルグループ関ジャニ∞の渋谷すばる主演でも話題の映画『味園ユニバース』。記憶喪失になった男(渋谷すばる)が、「音楽」で再生する様子を描いた作品です。
この男の面倒を見るのが、「赤犬」というバンドのマネージャーをつとめるカスミ(二階堂ふみ)。男は赤犬がライブをしていたお祭りの舞台にフラフラと現れ、和田アキ子の「古い日記」を熱唱。歌い切った途端に気を失ってしまいます。彼の才能に興味をもったカスミは、「ポチ男」とあだ名をつけ、自宅のスタジオに連れてきたのでした。
立ち向かっていくカスミのたくましさカスミは認知症の祖父と2人暮らし。高校にも進まず、亡き父が残した小さな音楽スタジオを運営しています。彼女は自分が関わる「世界」を、すべて完璧にしたいと思っていました。そのひとつが赤犬。自分より年上のメンバーたちの尻を叩き、てきぱきと働くカスミの姿には想いを実現したいという強さや、たくましさが感じられます。
そんなある日、赤犬のボーカルが大ケガ。「歌え、ポチ男」。彼女は赤犬を完璧にするため、あのお祭りの日に心を奪われた彼の歌声に賭けたのでした。
「大切なもの」に本気で取り組んでいますか?外に出て働いていると、いくつもの世界や可能性が広がっています。時にいやなことがあっても、仕事に達成感を抱いたり、友達と他愛のない話で盛り上がったり、趣味に没頭したり。楽しもうと思えば、意外に方法はたくさんあります。
でも、そんな今の環境を当たり前のように考えてしまうことも。さまざまな選択肢があることを喜び、選んだひとつひとつを大事にする。カスミの生き方は、観る人に「本当に大切なものに全力で取り組むこと」を教えてくれます。
映画は全編をとおして、たとえ何があっても、音楽が人と人、過去と未来をつないでくれる力があることをみせてくれます。それを印象付けるのは、ポチ男の歌声であり、赤犬のパフォーマンスであり、カスミの「赤犬を完璧にしたい」という強い想い。劇場でぜひエネルギーを感じてほしいです。
[味園ユニバース]
2015年2月14日(土)より、TOHOシネマズ 六本木ヒルズほか全国ロードショー。
配給:ギャガ
(c)2015『味園ユニバース』製作委員会