▼第175号
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   夏野剛メールマガジン 週刊『夏野総研』
               vol.175
     【「有料版YouTube」が証明した“無料モデル”の限界】
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《目次》
01.時事ネタキュレーション
02.ビジネスモデル分析
03.Q&A
04.Product Lab
05.Good Food Good Life
06.Weekly Wine
07.スケジュール
08.編集後記

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【お知らせ】
 数週間前からお伝えしておりますが、今月の30日、夏野総研の購読者限定で「寿司オフ会」を開催します!
 チケットは残りわずかですが、参加を希望される方は下記のリンクからチケットを購入してください!
http://passmarket.yahoo.co.jp/event/show/detail/0189jxy2ab7q.html

 以下、オフ会の詳細です!
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◆開催日時
 3/30(水)20時頃から約2時間
◆開催場所
 六本木界隈(地下鉄六本木・乃木坂駅から徒歩10分圏内)
◆費用
 5万円
◆食事内容
 特製おまかせコース、飲み放題(ビール、焼酎、日本酒、ソフトドリンク等)
◆募集人数
 12名限定
※お店を貸し切りにする必要があることから、参加者が12名未満の場合は返金手続きを行い開催中止とさせていただきます。予めご了承ください。
◆その他
 領収書の発行可、サイン、写真撮影可
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【01.時事ネタキュレーション】
 日々ぼんやり見ているニュースも、見方を変えればいろいろなことが見えてくる。当コーナーは、日本の未来を読むための時事ネタや話題コンテンツを、私がキュレーターとなって解説していくものです。
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※執筆の都合上、3月8日までのニュースについて解説しています。

◆ドコモ「2年縛り」、違約金かからぬ期間延長
http://goo.gl/i0frMJ
 そもそも2年縛りは機種変更の値引きコストのために導入されたもの。それなのに「自動更新」されるのはおかしいし、自動更新後に解約手数料がかかるのはもっとおかしい。総務省が中途半端に介入したために、この部分に関する競争がなくなってしまい、極めて消費者に不利な契約形態になっているのだが、そのことを総務省はまったくわかっていない。愚かなり。

◆ソフトバンク、国内外の事業統括会社を設置 アローラ氏は海外担当
http://goo.gl/PQG8l3
 当面の間は国内で稼いで海外で種まきをするモデル。そのモデルに経営体制を合わせたという感じだな。

◆LINEが夏前に東京とNYで上場、資金調達は最大30億ドル=IFR
http://goo.gl/EXZMza
 親会社にお金があるのに上場する意味あるのだろうか。

◆アップル公式サポートがTwitterアカウント開設、便利さから速くも大人気に。寄せられる質問を次々捌く
http://goo.gl/vFlw4u
 さすがアップル。

◆NTT、米デルのITサービス買収へ 4000億円超
http://goo.gl/HMH1p4
 NTTの動きは速いのにドコモの動きが鈍いのはなぜ?

◆日テレ初、8K収録の笑点を上映。今後の8K試験放送にも
http://goo.gl/7VjiQL
 8Kの笑点って映像のどこに注目すればいいのだろう。出演者の顔のシワか?

◆携帯事業、統合・売却も=富士通社長
http://goo.gl/BnuPRn
 8年前に私に売ってくれればよかったのに……。

◆よみうりランド、100億円投じた新施設の狙い 遊びと学びの"一石二鳥作戦"は成功するか
http://goo.gl/BEnuzV
 いつまでも古いアトラクションばかりじゃダメだよね。キッザニアがあれだけ成功してるんだから、もっとこういう施設があってもいい。

◆ディズニーが米テーマパーク入場料改正、混雑度に応じて3段階
http://goo.gl/1aXtsr
 こういうことをちゃんとやるのが米国流。それに比べて日本のディズニーランドの悪平等主義は何とかして欲しい。

◆タンス預金用の「金庫」が売れまくる異常事態 マイナス金利で不安心理が広がっている
http://goo.gl/llmjwb
 みんなお金を貯めるの好きなんだなあ。

◆「通年採用」普及を提言=年4回程度-同友会代表幹事
http://goo.gl/jLVFpf
 いつでも採用するのがが普通だと思う。回数設定なんかいらない。

◆大学院のMBA教育拡充へ 一橋大・早大、世界水準狙う
http://goo.gl/z35ebm
 世界水準を狙うにはまず教員を世界水準にする必要があるのだが、大丈夫か。

◆ネットで確定申告、嫌やねん? 大阪の会場に長蛇の列
http://goo.gl/crXK3q
 面倒な方を好む人はご自由に。

◆「ママ、お腹空いた」で発覚 新宿区立小学校で"給食抜き"の不適切指導
http://goo.gl/ecmYJ3
 サイテーな小学校だな。

◆【東京五輪】 新国立競技場にまたまた問題発生 聖火台が設置できない!?
http://goo.gl/V7MN5s
 これはヒドい。新国立はずっとトラブル続きだな。エンブレムもこうならないようにしなければ。

◆電力自由化、過度なセット割禁止 経産省・公取委がルール
http://goo.gl/1vdRfz
 同じルールを携帯にも適用せよ。

◆パリ・ロンドン7日間で5千万円!都知事の出張費に、衝撃が広がる
http://goo.gl/OUzCvC
 豪華だねえ。ちなみに通訳とかの費用が一番大きいかも。

◆自民党、乙武洋匡氏擁立で最終調整
http://goo.gl/6H2e4g
 やっぱ乙武君出るか。

◆インターネットの米国支配終了へ 各国から反発増大、非営利団体に管理業務移管
http://goo.gl/r236W9
「米国支配」というのは大げさ。しかし完全にICANNに移管されるのは歓迎。

◆四谷学院CM「偏差値29でも北大医学部に」が炎上 生徒は「偏差値74」東大寺学園出身だった
http://goo.gl/QfEKGA
 まあ、何が本当かわからないよね。

◆勤続七年目の保育士が給与明細を公開 「7年働いてこの給料ってことをわかってほしい…」
http://goo.gl/HYu6CA
 これはヒドいな。経営者が取り過ぎているってことか。

◆ジム通いで気付いた「運動嫌い」の理由 ネットで反響集まる
http://goo.gl/yYZNtw
 その通りだな。

◆異例の更迭に社員ア然 フジテレビ“実力よりコネ”の末期症状
http://goo.gl/tks8MQ
 これ、ウチの弟のことだと思うけれど、コネ入社ではないです。また、ゼネラルプロデューサーの更迭を室長が独断で決めるわけがないので、なんかあったんでしょう。

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【02.ビジネス分析】
 企業が手がけるビジネスの仕組みや戦略や動き、それを取り巻く社会状況などを解説していきたいと思います。
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【「有料版YouTube」が証明した“無料モデル”の限界】

 今回もグーグル関連の注目ニュースをピックアップ。「すごいグーグル」「やっぱりグーグル」「グーグルの弱点」「グーグルの誤算」の4つのジャンルに分け、解説していく。

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〈すごいグーグル〉

 今年の2月の初め、グーグルは「Gmail、月間アクティブユーザー10億人を達成」(http://goo.gl/JkHoyq)という発表を行った。2012年にはユーザー数が役4億3000万人だったので、4年あまりで約5億7000万人増えたことになる。
。アンドロイドの初期設定時にGmailのアカウントを要求するなどの他サービスとの紐付けが功を奏しているとはいえ、これほどの規模になるまでユーザーが増えた理由はその利便性に他ならない。この10億人という数字が登録ユーザーではなく「アクティブユーザー」という事実だけでも十分すごいことなのだが、今回は別のポイントに注目してみたい。それが“GmailはWebメール概念を完全に変えた”ということである。
 ひと昔前までは、Webメールには「フリーメールで怪しいメール」というイメージがあった。そのため、フリーメールの使用を認めないeコマースもあったほどだ。そのなかでGmailは独自の立場を築き上げたことで、フリーメールのなかでもeコマースに使用できる「例外」として扱われてきた。そして、現在ではYahoo!など多くのフリーメールでeコマースが利用できるようになっている。今やGmailを始め多くのフリーメールがビジネス用のアドレスとしても利用されている事実を見ても、Webメールに関してGmailが与えた影響はすさまじいと言える。

 そんなグーグルが時価総額で唯一負けていたのが、長らく世界ランキング1位に君臨してたアップルだ。しかし、Gmailの勢いと同様に2011年からほぼ一貫して首位をキープしていたアップルを、2月1日の時点でグーグル(正しくは、持株会社である『アルファベット』)が抜いた。『グーグル、時価総額69兆円 アップル抜き世界首位に』(http://goo.gl/L1n0nP)。現在はアップルが1位に返り咲いているが、一時的にでも首位になったことは、「グーグルがやっていることがアップルよりも将来性がある」ということを市場が評価したということである。

「すごい」といえば、『グーグルの自動運転車、AIが法律上「運転手」に 当局が見解』(http://goo.gl/dDw3Yd)というニュース。グーグルの自動運転車に搭載されたAIが法律上で「運転手」と認められたわけだが、これはテクノロジーの精度を上げていくことで国を動かしたことを意味している。普通の企業には到底マネできないことだろう。


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〈やっぱりグーグル〉

 グーグルは「世界中の情報を整理し、世界中の人々がアクセスできて使えるようにすること」を使命としている。そして、「インターネットの良さは、さまざまな情報が国境を超えて共有されること」と意識していると思われる。事実、これまでにも絵画などの芸術作品をネット上でアーカイブ化する動きがあった。そして今回、絵画に続き、日本の工芸品をネット上で閲覧できるようにしたそうだ。『Googleが「Made in Japan: 日本の匠」プロジェクト公開 日本の工芸品を高画質な画像で閲覧可能』(http://goo.gl/1euEjd)。言ってしまえば、グーグルが日本の匠の技を世界に発信する必要はない。こういった直接的な利益とは関係のない動きを行えることはグーグルならではであり、他の企業にはなかなかマネできないことだ。

 世界中の情報を整理するという意味でいえば、『Google、モンブランのストリートビューを提供開始』(http://goo.gl/8SZvhI)と『Google翻訳、新たに13カ国語を追加』(http://goo.gl/X8Fpgg)というニュースにも触れておきたい。
 近年グーグルが力を入れているストリートビュー。市街地などはほぼ網羅し、今回のアルプスのように僻地などにも進出している。全世界のありとあらゆるエリアをストリートビューで閲覧できるようにする動きの一環であり、この動きは今後も続いていくだろう。
 そして、グーグル翻訳について。新たに13ヶ国語が追加されたとのことだが、グーグルは「翻訳家がいらないインターネットの世界」の実現を目指しているのだろう。そのためにビックデータや人工知能を活用し、翻訳機能の正確さは年々向上。同時に対応する地域を広げ、その高度なサービスを無料で提供する姿は称賛に値する。

 技術的な面でいえば、『人工知能、囲碁でプロ棋士破る グーグルが開発』(http://goo.gl/4E61Dl)というニュースも見逃せない。将棋やチェスに比べて囲碁は難易度が高く、「人工知能が人間に勝つにはあと10年かかる」と言われていた。しかし、すでにハンディなしで互角に戦えるまでになっているそうだ。この人工知能は囲碁のみならず、さまざまな分野での活用が期待される技術。今や、科学の最先端を走るのは政府やアカデミックではない。“民間企業”のグーグルが科学を引っ張っていると言っても過言ではないのだ。

 主に検索サービスを展開するグーグルだが、画像認識技術も向上させている。この技術により、例えば画像のなかに記されたテキストをかなりの高精度で検索できるようになっている。この高い画像認証・分類の技術を一般に公開するそうだ。『Googleの画像認識/分類API、Cloud Vision APIが誰でも使える公開ベータへ』(http://goo.gl/4Yypwe)。検索サービスを提供するグーグルのビジネスを考えると、この技術を一般に公開することは「敵に塩を送る」ようなもの。にもかかわらず公開したのには、“技術を公開することでインターネット全体が活性化するならば”というスタンスがあるからだろう。この器の大きさは、やっぱりグーグルだ。

 同じスタンスは『グーグル、低所得世帯に高速インターネットサービスを無料提供へ』(http://goo.gl/bM9NOg)『グーグル、高速ネット接続サービス拡大 全米11都市目』(http://goo.gl/j9XDos)のニュースにも現れている。もともとグーグルは検索やグーグルマップなどのサービスを提供する企業であり、インフラとしてのネット接続を提供する必要はない。しかし、インターネットを利用する人が増えれば世の中が豊かになると考え、提供。そういったスタンスを取る姿勢はさすがであり、そして、ネット利用者が増えると自ずと自社が儲かる「風が吹けば桶屋が儲かる」仕組みを築き上げたのもすばらしい。

 通常、大企業に成長すると問題となってくるのが「大企業病」だ。この病にかかると動きが鈍くなってしまいがちではあるが、グーグルは世界でもトップクラスの規模であるにもかかわらず、判断が早い。Webページの作成においてFlashの存在感が年々薄れ、代わりにHTML5が普及している今、『GoogleがFlashを使った広告を全面禁止へ、HTML5ベースに』(http://goo.gl/wMJEaZ)という決断を行った。この判断の柔軟さや迅速さこそが、企業として成長するための大きな原動力になっているだろう。


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〈グーグルの弱点〉

 ネット接続のサービスまで展開するようになったグーグルだが、ドローンを使って5Gのネットを提供する動きがあるそうだ。『米グーグル、ドローンを使った「5G」ネット実験』(http://goo.gl/HkIiyK)。この動きには「グーグルの弱点」が出てしまっているように思える。というのも、ドローンの大きなメリットは遠隔操作ができ、小回りが利くことによる「僻地」での活用だ。逆に言えば、基地局を設置できるエリアでは、わざわざドローンを使ってネットを提供する必要はない。加えて、そのような基地局を設置できないようなエリアには、超高速回線よりも「低速であっても安定的に使えるネットワーク」が必要とされるはず。5Gの回線を提供するには大容量のバッテリーも必要になり、ドローンには適していない。つまり論理的に考えて、「なぜドローンで5Gを提供するのか」理解に苦しむ部分がある。それでも提供する背景には「最先端の技術があれば試してみる」というグーグルのスタンスが影響しているからだろう。そう考えれば「ドローンで5G回線」という動きにも合点がいく。しかし、繰り返しになるが「ドローンで5G回線」は合理的ではない。このように、グーグルの“最先端好き”は時に弱点になりかねないのだ。

 数多くのサービスを提供しているグーグルだが、他社に先駆けて提供したサービスは上手くいっているものが多い。