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大学卒業後、就職し順風満帆な社会人ライフを送っていた私に、あるとき大きなチャンスが舞い込みました。

社内で注目されていた大きな案件のプロジェクトリーダーに任命されたんです。

それまでの私は、上司や取引先などからの受けがよく、業務に関しては、周囲の同期よりクオリティーの高いパフォーマンスが出せていたと思います。

当時は、そんな私にチャンスが舞い込んだのは当たり前のことだと考えていました。自分が指名されたことでおそらく、天狗になっていたんでしょう。

挫折を知らず、自分のやることはすべて正しいと信じ、強い意志を持っていたあのころが今となっては懐かしいです。

若気の至りだとは思うのですが……、あの自信はどこからきていたのか、根拠がないのでまったくわかりません。

どちらかというと器用なタイプで、そつなくいろいろなことをこなせるうえ、上司の言うことを聞く優等生タイプだったので使い勝手がよかったのかもしれません。

大きなプロジェクトへの責任の重さ

プロジェクトリーダーになったタイミングで昇進し、自分のチームを持つことになりました。プロジェクトと同時にチームのマネジメントもしていく立場となったものの、すべてが初めて経験することばかり。戸惑いがなかったわけではありません。

少なからずストレスは抱えていたと思います。ただそれよりも「やりがい」の方が大きく、ストレスをストレスとも感じていませんでした。

また、当初は順調にプロジェクトが進んでいたので、毎日が充実し、人生で一番仕事が楽しい時期だったように思います。

毎日帰宅するのは深夜、休日も自宅で仕事をするほど、全精力をそのプロジェクトに注いでいました。心の底からプロジェクトリーダーに指名されたことがうれしかったんです。

期待が大きすぎて

社内でも重要なプロジェクトに位置していたので、経営会議に参加し、進捗の報告をするようになりました。

会長、社長から執行役員まで、会社の重要な役職者が揃っている会議です。

重要なプロジェクトなので、プレゼンの後はもちろん経営陣から矢継ぎ早に質問されます。一般的な内容であれば回答できるのですが、なかには、まったく想定していなかったような質問を受けることがあるので、その都度脳みそをフル回転させ、臨機応変に対応していました。

質問に答えられないときや、想定していなかったリスクを指摘され対策が取れていないなどというときには、怒号が飛びました。

当初は、直属の上司がフォローしてくれていたのですが、案件が進むにつれ、上司も詳細を把握できなくなり、ほぼひとりで経営陣に応対するように。声を荒げられることもどんどん多くなりました。そんな状況のなかでじっと耐え忍ぶストレスはかなり私の心に負荷をかけていたのだと思います。

次第に毎週の経営会議への参加が憂鬱になっていき、当初は、声を荒げられても、アドリブで必死に対応していましたが、それさえもする気力もなくなり、ついには、ただ怒号を受けっぱなしになるという悪循環に陥っていました。すべてが手に負えなくなっていたのだと思います。

ストレス発散ができない

そんな状態になってしまうと、ストレスが発散される時間がほとんどなくなってしまいました。

常に仕事のことばかり考えているのです。寝る前も、仕事のことを考えながら寝るので、夢にまででてくる始末。たまにうなされて夜中に起きることも多々ありました。

それまでの私のストレス発散方法は、ショッピングに行き、洋服や小物などかわいいものやきれいなものを買うことだったのですが、それも徐々に効果がなくなってきました。最終的には、趣味であったショッピングも億劫になってしまったほどです。

また、何をしていても面白いと感じることがなくなってしまい、休日は家に引きこもることが多くなりました。今思えば、おそらく鬱の一歩手前のような状態だったと思います。

多汗症になる

そんなある日、経営会議でプレゼンテーションをしているときに、異常なほどの汗をかくようになりました。最初は、脇の下だけだったので、エアコンのせいだとばかり思っていたのですが、次第に手や額にも汗をかくようになりました。

額の汗は、うっすらとした汗ではなく、まるで運動をした後のように粒上の汗がダラダラ出る状態です。額から、頬を伝って顎まで汗が流れ落ちるというのは、それまで思い切り走ったあとか、マラソンで汗をかくとき以外は経験がありませんでした。

はじめのうちは、質問に対して回答ができず、困難な状況に追い詰められたときに汗をかくだけだったのですが、次第にプレゼンをしているとき、少し緊張を感じるだけでも汗が止まらなくなりました。

大量に汗をかくので、化粧も剥がれ落ちてしまうほどです。おそらくチークが流れ落ちてしまっていたのでしょうか、人に会うたびに「顔色が悪いけど大丈夫?」とよく聞かれていました。

次第に複数人の前で何かを発言するときや、初対面の人と話をするときにも、汗が止まらなくなってしまいました。初対面の人とのファーストコンタクトに関しては、たしかに緊張感はありますが、そこまでストレスを抱えるほどの緊張感ではありませんでした。

それなのに私は、そんな場面でも極端に緊張するようになってしまいました。そのときの心理は「この人から私はどう見えているのか」「きちんとした対応がとれているか」など、余計なことばかり気にかけていたんです。

とにかく自分の意見に反対されたり、呆れられたりすることが一番の恐怖でした。非難されているときのみじめな自分の姿を見られていると思うだけで、絶望的な気分になっていたんです。

おそらく経営会議では、否定されることが多かったので、誰かに認められたいという承認欲求が強まったのでしょう。他人からの評価に対して、とても敏感になっていました。

そのころは、他人となるべく関わりたくなかったので、休日はめったに外に出ず、ベッドのなかで1日を過ごすことが多くなっていました。

心から信頼できる人以外に会いたくないし、しゃべりたくもないという気持ちが日に日に強くなっていったんです。

そして真冬でさえも、ダラダラと汗をかくようになってしまったので、ここまでくると、自分の身体の変化に対して疑問を持つようになっていきました。

残業、激務、プレッシャー。仕事のストレスが私の身体にもたらした異変[体験談](2/2)に続きます。


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