YNA#41 「3本の傘」
 
台風とタイフーンの関係について30年以上悩んでいる。
そういう言葉ってみんなにもあるよね? あるよねーーーー?

今年は台風の被害がことさら大きかった。

かなりのんきに生きていて「いざとなったら周りで助け合えばなんとかなるっしょ」という考え方のぼくもさすがに多少の備蓄はしたし、養生テープで窓補強した。

さらに、直撃する日はあらかじめ休みを取っておく万全っぷり。
動くかどうかわからない上、めちゃくちゃ混むのがわかっている電車に乗りたくないじゃんね。

そういった態勢で臨んだから、あの週末は一切家から出ないで済んだわけ。

台風が過ぎ去り、家はまったく被害なしだったんだけど、さすがにカップ麺以外も食べたいな……と、3日ぶりに外出したところちょっとした異変が。

玄関先の窓枠に掛けていた傘、誰かに使われとる……。
しかもバキボキに壊れとる……。

まあ、そんなこともあるか。

自宅に傘がなくてでもどうしても外出の必要があってふと横を見たら黒くて大きな傘がある。
ちょっとコンビニ行くだけだし、ササッと借りてすぐ返しておけば──

そんなちょっとした気持ちで使ったはいいけど、強風により破損!
やっちゃった……。

で、でも! マヌケな田澤さんのことだからこのまま返却しておいたら、「あれ、この傘壊しちゃってたっけ?」で済むんじゃないかな。ごめんなさいね!

きっとそんなとこだろう。

だがしかし、ぼくは傘をかけるとき必ずボタンを閉じるのだよ、残念だったなワトソン君。

そして、この状態を見るにつけ犯人が誰かもだいたいわかった。

お隣さんだ。

なぜわかるのかって?

お隣さんの窓枠にもバッキボキに壊れた傘が2本かかっているからだ。しかも、1年以上前から。
ぼくは毎日そこを通るわけで、「他人の家だけどちょっと気になるなぁ」ってずっと思ってた。

要するに相当ズボラな家族であり、そういう性格の人間じゃないとこんな返し方はしない。

もうちょっとちゃんとしてたら捨てるでしょ。その方が最後までバレない可能性高いはずだし。

ま、いいや。
どうせいまから外出するわけだし、ついでに捨ててこよう。

最後までひとの役に立ってくれてありがとうな。さらば!
……と思ったら!

めちゃくちゃ重いの、この傘。

んんんんっ、持ち上がらない! んんんんっ、なんでぇー?
ってのを2回繰り返し判明。

横殴りの雨が傘に溜まってた。

さすが観測史上最大とも言われる台風19号。一筋縄ではいかないぜ、とか思いながら両手でひっくりかえすと──

バッシャーーーーー!
途中で傘の骨が折れ、とんでもない量の水がぼくの新品のスニーカーを襲った。