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岡田斗司夫プレミアムブロマガ「『ど根性ガエルの娘』は、家族の物語ではない!」

2017-12-17 07:00

    岡田斗司夫プレミアムブロマガ 2017/12/17

    おはよう! 岡田斗司夫です。

    今回は、2017/11/19配信「今夜はマンガ夜話!あまりにもすごい作品『ど根性ガエルの娘』他を語る!」の内容をご紹介します。
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    2017/11/19の内容一覧

    『ど根性ガエルの娘』は、家族の物語ではない

     『ど根性ガエルの娘』って、「家族の物語だ」とよく言われるんだけども、絶対に家族の物語じゃないと思うんです。なぜなら、語り手のゆうこが家族を作るつもりがないからなんですよ。
     僕がビックリしたのが、15話の1つ前の14話なんですね。
     14話、すごいですよ。まず、「大月悠祐子 31歳」と説明が入ったところで、「うわああああ!」って絶叫している母親のシーンから始まります。「だから、産めって言ってるでしょ!」っていうふうに母親が怒鳴っているんですね。
     次のページに行くと、「あんたがお母さんの言うことを聞いてすぐに作らないから、どうするのよ、そんな年になっちゃって! もう産めないじゃないの! 産んでよ! 孫を! わたしに頂戴よ!」という、かなり怖いシーンです。
     しかし、ゆうこは「あのね、お母さん、私とお母さんは別の人間なの」と冷静に説得するんです。「お母さんが赤ちゃんを欲しくても、私は欲しくない。なぜかというと、私は怖い。私にはお父さんとお母さんの血が流れていて、同じようなことをするんじゃないかって。私は自分の子供に、自分と同じ思いをさせたくない」と、すごい残酷な言葉を言うんですね。子供が親に言う、おそらく一番残酷な言葉なんですけど、「だから、産まない。どうしても赤ちゃんが欲しいなら、私に産ませようとするんじゃなくて、自分で産んで」と言い切ります。
     「お母さんは子供の時からずっと私をゴミ箱みたいに扱っていた。何かツラいことがあったら、私に投げてよこした。でも、もう、それにつき合うのをやめた。私はもうこの家を出るよ」って言うんですね。
     ここが、僕が思うに、このマンガの一番すごい展開点なんですけども。

     ここで描かれている状況が本当はどういうものなのかというと……あんまりね、こういうことを考えるのはよくないかもわかんないんですけども。

    (中略)

     なぜ、ここで主人公が「産まない」と言い切るのかというと……まあ、これを描くのにも勇気がいったと思うんですけども。彼女自身、「自分が母親に向けている視線というのが、一方的で残酷なもんだ」と気が付いてるからですね。
     というのも、もし、この人が、子供を作っちゃったらどうなるかというと、本人がマンガの中で語っている「自分が子供を同じような目に遭わせるのが怖いから」というのと同時に、「子供が大人になった時に、私と同じことをしたらどうしよう」と思うからなんですよね。
     つまり、人間というのは、子供を作って代々受け継いでいく限り、どんなに親に酷いことをしても、それはいずれ自分が親になったら返ってくるものなんです。そういうものがあるからこそ、僕達の文明というのは成立してるんですよ。それが、人間社会というか、人間の面白さみたいなものなんですけど。
     でも、この作者は、それを一方的に「絶つ」って言ってるんですよね。いわば「福祉だけ貰って義務を返さない」ようなもの。まあ、こんな言い方をしたら一方的になっちゃうかもしれないんですし、別に、僕自身が子供を作らないことに関して、あれこれ言うつもりもないんですけども。
     だけど、自分が母親にやったみたいに、後で子供に一方的にあれこれ言われるのが、めちゃくちゃ怖いんですね。
     このマンガの中では、この作者というのは「全能者」なんですよ。すべてを思い通りに描ける。でも、その子供が大きくなってから、「いやマンガではああ描いてるけど、実は私の母の大月悠祐子はこんな人だった」ということを描く可能性がある。やっぱり、それがすごく恐ろしいので、この流れを断ち切りたいんですね。

     さっき紹介した『ペンと箸』という田中さんのマンガにも、すごく面白い指摘というのがあるんです。田中圭一さんは、ここで「女性マンガ家には子供がいない」ということを言ってるんですね。
     男性マンガ家には、それなりに子供がいるし、その子供たちから「お父さんってどんな人でしたか?」ってインタビューもできるんだけど、女性マンガ家で子供を産んでいる人はすごく少ないから、メチャクチャ苦労したって書いてるんですけど。
     僕ね、この原因って、そういうことだと思うんですよ。「全能者としてマンガを描いてしまうと、後で子供が作れなくなっちゃう」というのは変なんですけども。女性マンガ家で子供がいるのって、西原理恵子とか東村アキコとか、「強い女」ばっかりなんですよ(笑)。
     「あの時、私はこう感じてたの。わかって!」と言うタイプの女性マンガ家は、基本的に子供を作らないんですよね。なぜなら、「あの時、私はこう考えてたの。わかって!」ということを、後で自分の子供に言われちゃうから。だから、自分の代でそれを止めようという意思が無意識に働いてるんじゃないかと思うんです。

    (続きはアーカイブサイトでご覧ください)

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