岡田斗司夫プレミアムブロマガ 2018/01/22
おはよう! 岡田斗司夫です。
今回は、2018/01/14配信「『天空の城ラピュタ』解説の決定版!人間:宮崎駿の面白さにまで迫る!」の内容をご紹介します。
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2018/01/14の内容一覧
- 『DEVILMAN crybaby』つまんないよね
- ちょっと頭のおかしいアニメ『ポプテピピック』
- 4タイプで言うと、宮崎駿は理想型、高畑勲は法則型、鈴木敏夫は司令型
- SFとしての『ラピュタ』
- ラピュタの超科学技術で作られたロボット兵と飛行石
- 『不思議の海のナディア』との関連
- ラピュタ本体の見せ方のうまさ
- 『天空の城ラピュタ』の幻の産業革命と、『ジュール・ヴェルヌの世界』
- パズーはエリートだった
- 石炭と蒸気の第1次産業革命と、石油の第2次産業革命
- 飛行機が存在しない世界
- 『ラピュタ』の主人公はシータ?
- バルスとは何か?
- なぜ宮崎駿は手塚治虫が気になるのか
ラピュタの超科学技術で作られたロボット兵と飛行石
『ラピュタ』の中で描かれる様々なテクノロジーの3つ目、ロボット兵ですね。
もう、これに関しては、言い訳のしようがなく完全にSF的な技術で作られたものです。
映画の中でも、「我々には、このロボットの材質が粘土なのか金属なのかもわからない」というふうにムスカが話すシーンがあります。それくらい、まったくわからないものとして描かれています。
素材は伸縮自由。宮崎さん自身の設定によれば、柔らかくも固くもなれる「形状記憶セラミック」とのことなんですけど、もう、なにがなんだかわかりません。
分解も出来ないし、修理も出来ない。その上、部品寿命がどれくらいあるのかすらわからない。なんせ、落ちて壊れた機体以外、ほとんどが今でも動くことが出来るんですよ。
もちろん、あまりにも年数が経ってしまったことで朽ちた機体もあるんだけど、それが朽ちた理由というのもわからない。機体内部の可動部分が摩耗したと考えるのが、僕らの常識の中では自然なんですけど。しかし、少なくとも、千年間放っておかれた他のロボット兵が普通に動いているので、もしかしたら、稼働部品の摩擦がゼロなのかもしれない。そんな恐怖のメカです。
動力源も、燃料なのかバッテリーなのかというところからまったくわからない。胸の部分からロケットを噴射して空を飛んだり、加速することはわかるんですけど、ロケットを噴射するために必要な燃料がどこに搭載されているのかも、まるで見えてこない。
そんなふうに、まったくわからない技術なんですね。
だけど、戦艦ゴリアテの大砲を至近距離からドーンと撃たれたら、一応、壊れたというところから見ても、このロボット兵というのは、これでもまだ、ラピュタ文明のメカの中では下等な方なんですよ。
これは後で話しますけど、僕は、ラピュタの文明というのを「前期ラピュタ文明」、「後期ラピュタ文明」と分けて考えているんですね。これに関しては、僕なりの論拠もあるんですけども。
このロボット兵について、僕は「ムスカが思い込んでいるラピュタ像である、世界を武力で支配するようになった後期ラピュタ文明の産物ではないか?」と考えています。
(中略)
さて、ここから先は、『ラピュタ』の超科学SFの部分に入っていきます。
『ラピュタ』に出てくる「本当に理解できないSF的テクノロジー」というのは何かというと、飛行石です。シータが胸から下げているペンダントみたいな石ですね。
この飛行石は、クラークの言う第3法則「魔法としか思えない機能」を持っています。
まず、「ラピュタの王位継承者の命令しか受け付けない」。次に、「どう考えても反重力みたいな現象を起こすことが出来る」。しかも、「そのエネルギー源をどこからも受け取っていない」。
すべて同じアニメの中に描かれているから、ロボット兵も飛行石も、同じように不思議なテクノロジーに見えるんですけど、この2つの間には明らかに技術的な階層差があるんです。
さっきも言った通り、ロボット兵に関しては、まだ我々の理解範囲の中なんです。でも、飛行石の持っているテクノロジーレベルというのは、明らかにそれよりも千年くらいは先を行ってるんですね。
(中略)
この飛行石は、声に反応するから、少なくとも音声認識機能があるんでしょうし、その声の主がラピュタの王位継承者かどうかもわかるから、遺伝子認証みたいな機能もあるんでしょう。
そこまではいいとしても、反重力に使われたエネルギーというのは説明つかない。
仮に、シータの体重が40kgだとしたら、40kg×重力加速度9.8km/sの2乗。1000mの高さから落ちたとすると、それを中和するには、およそ400万ジュールくらい。カロリーベースでいうと90万キロカロリーに相当するエネルギーが必要なんですけども。「それをわずか5g程度の飛行石から得ようとしたら、「核反応」くらいしかないんじゃねえのか?」っていうようなエネルギー効率の良さなんですね。
核反応というと、パズーとシータが最後にたどり着いたラピュタが樹木に覆われているのは、宮崎駿の趣味であるのと同時に、飛行石には植物を育てる力があるからなんですね。
これについては、宮崎さんもインタビューで「宇宙の聖なる根源であるから。シータがそれまで一人で生きてこられたのも、飛行石によって畑がよく実ったからだ」と答えています。
では、なぜ飛行石の近くにあった畑がよく実ったり、ラピュタで木々が過剰に育っていたのか?
(パネルを見せる)
これは、手塚治虫の『火の鳥』という作品に出て来る「アイソトープ農場」のシーンです。この農場の中心には放射線を出すタワーがあるんですね。
まあ、漫画の中では、その放射線タワーの近くで、男の子が壊れたロボットに抱えられたまま半日置かれたことで、重大な放射能障害を負ってしまうというお話なんですけど。ロビタが後に死刑になる原因になった事件ですね。
このアイソトープ農場というのは、1960年代に実際に検討されていたんです。「放射線の作用によって、明らかに植物の育ちがよくなる」みたいなことが50年代60年代にはよく報告されていたんですね。
ただ、もう、今ではアンチ原子力という流れが強いので、その辺のことを研究する人もいなくなって、元データもわからなくなってるんですけど。
そして、劇中での飛行石というのは、「人間が作り出した、自然の中にある膨大なエネルギーであり、触ってはいけないもの」であり、なおかつ、「青い光を放つもの」なんですね。
(続きはアーカイブサイトでご覧ください)
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