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岡田斗司夫プレミアムブロマガ「『へうげもの』古田織部の焼き物は、戦国時代のユニクロだ」
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岡田斗司夫プレミアムブロマガ「『へうげもの』古田織部の焼き物は、戦国時代のユニクロだ」

2018-03-09 07:00

    岡田斗司夫プレミアムブロマガ 2018/03/09

    おはよう! 岡田斗司夫です。

    今回は、2018/02/11配信「『へうげもの』の古田織部は戦国時代のスピルバーグ!大茶会は茶道のコミケだ!」の内容をご紹介します。
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    2018/02/11の内容一覧

    戦国時代のユニクロ・古田織部がやった感性の自由

     さて、古田織部は、師匠である利休から「あなたは侘び数寄をわかってない。あなたは一流ではなく、一流のフリをする愚か者だ」と説教されて、すごくヘコんだんですね。
     しかし、「ただ、そのフリをやめればいい。あなたらしくあればいいんだ」というふうに言われたことにより、「乙」という概念を発見します。
     これは何かというと、同じく11巻で語られています。

     「この歪んだ茶碗の面白さというのは、定石を知っていればこそ、もてなす客がそれを知らない場合はどうするのですか?」と問われた織部は、こう返します。
     「客が知らない場合は、武家流の「甲」の作法、つまり、一流の堅苦しい作法を持って饗せばいい。だが、気心が知れた、センスのわかっている人の間では、「乙」という一段階下のものがいい。一段階下の格調を落とした物を出すと、ちょっと笑ってもらえる。ちょっとかわいく思ってもらえる。私は、ここから先を目指すつもりだ。いずれ人々は、最高の賞賛として、『これは乙なものだ』と評するようになるだろう」と。
     こう宣言して以降、古田織部は、千利休の目指した、甲乙丙丁の一等賞である超一流のモノを目指すのを辞めて、「二流のモノこそが最も面白く、一流をも超えるものなんだ」というテーゼを作り上げた。だから、僕らは「これは乙なもんだね」という言葉を使うようになったわけですね。
     これはつまり、「武力や権力よりも、面白さを理解できるセンスの方が上である」という意味であり、さっきの「武力とアートは等価である」という思想と同じくらい革命的な思想なんですよ。

     何よりすごいのは、徳川家康や織田信長が、天下布武という形で、つまり武力を持ってこの世界を平定することで思想を広げようとしたのに対して、古田織部はそういった価値観を、商売とアートを使って広めようとしたところなんですよ。
     さっき見せた、かわいい茶碗がありましたよね? 織部はこれを大量生産したんです。
     千利休とかは、新しい焼き物を作ると、それを「限定品」として、ものすごい高い値段で売ってたんですよ。たぶん、世界で初めて限定品商売をやりだしたのは千利休だと思うんですけど。
     まず、焼き物を20個くらい作るんです。それ以外は全部「気に食わない!」といって割ってしまう。しかも、その20個についても「これは売りません」と言うんですよ。
     ただ、「すごく良い物が出来たから、堺の私の知ってるお店まで来て見てください」と、展示会だけを開くんですね。それと並行して、豊臣秀吉なんかの有名な戦国武将に対しては、「無料でお渡しします」といってプレゼントする。
     そんなことをしたら、やっぱり、「いくら出してもそれが欲しい!」と言う人がいくらでも現れるんです。そこで、「じゃあ、500貫でいかがですか? 800貫でいかがですか? 1000貫、2000貫でいかがですか?」というふうに、もう国一つ城一つが買えるほどの値段で提案する。結果、千利休は「あなただけですよ」と言って、莫大な金額で焼き物を売ってたんですね。
     古田織部は、千利休のこういうやり方を見ていたんです。仮に、古田織部が、これと同じやり方をしていれば、たぶん、大金持ちにもなれたし、アーティストとしても昇っていけたと思うんですけど。織部がやったのはその逆で、徹底的に安く売っちゃったんですね。
     その結果、どんなことが起こったのかというと、千利休が売っていたような一流のものは、みんな手が出ないで見てるだけか、もしくは、家宝として大事に取って置くんですけども。織部の作る「織部焼」というのは、割れたらまた買えるような物ですから、とりあえず数を揃えて、お客さんが出た時に、饗しに使うんですね。
     饗しに使うと流行るんですよ。流行るとどうなるかというと、偽物が世の中に溢れることになる。その偽物のおかげもあって、こういう、それまでなかったハイセンスでちょっとヘタウマな絵を描いた日用雑貨というのが日本中に溢れ出すようになったんです。
     日本というのは狭い島国ですから、もう本当にあっという間、10年もしないうちに、日本中のどんな田舎に行っても織部焼というのが見つかるようになったんです。
     おまけに、この織部焼の特徴は、「大量生産することで安価に抑えられる」と同時に、「最新流行である」ということなんです。
     つまり、デザインを年柄年中、変えたんですよ。とりあえず、ちょっとでもかわいい絵が描くヤツが出てきたら、そいつのデザインに変える。そうやって、前と同じデザインを作らずに、アレンジを繰り返して、どんどん新しいデザインを出しまくったんです。
     「今、面白い」、「今、かわいい」という物が一番であって、去年のものはどうでもいい。僕はこれを「戦国時代のユニクロ」って呼んでるんですけども(笑い)。
     そうこうしている内に、武士だけではなく庶民まで、織部焼を買うようになっちゃったんですね。みんな、偽物であろうが、流行ってて、かわいくて、変な形であれば、喜んで買って、それを生活の中でガンガン使ったんですよ。
     僕はこれを、「日本のルネサンス」だと思います。

    (続きはアーカイブサイトでご覧ください)

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