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岡田斗司夫プレミアムブロマガ「なぜ伯爵は、2つのカリオストロ家を統一しようとしたのか?」
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岡田斗司夫プレミアムブロマガ「なぜ伯爵は、2つのカリオストロ家を統一しようとしたのか?」

2018-03-26 07:00

    岡田斗司夫プレミアムブロマガ 2018/03/26

    おはよう! 岡田斗司夫です。

    今回は、2018/03/18配信「『ルパン三世 カリオストロの城』最後の解説(後編)」の内容をご紹介します。
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    2018/03/18の内容一覧

    伯爵の目的その1「2つのカリオストロ家の統一」

     まず「カリオストロ家の統一」ですね。
     実は、「クラリスを利用しようとする伯爵」という関係は、『カリオストロの城』に限った話ではなくて、宮崎アニメの定番中の定番なんですよ。
     でも、よくよく考えてみると、クラリスは「なぜ彼女でなければいけないのか?」という理由がすごく曖昧なんですよね。
     ハッキリ言えば、指輪だけあればいいと思うんですよ。おまけに、わざわざ両家を統一しなくても、伯爵家はすでにゴート札で闇社会を支配しているわけです。
     そんな中、伯爵はこれ以上、何を望んでいたのか? なぜ伯爵家と大公家、光と闇を統一しなければならないのか?
     この理由が、僕らにはよくわからないわけですね。

     実は、この辺についての答えは、前回の放送でもお見せした初期の設定画の中に隠されていると僕は思っています。

     これが初期に設定されたカリオストロ城周辺のマップです。
     ここに「上カリオストロと下カリオストロ」と小さい字で書いてありますね。つまり、カリオストロ家というのは、元々の設定では「大公家、伯爵家」ではなく「上と下」で分かれていたんです。
     ラピュタでいうと、「ラピュタ人の中でも神官クラスの人達は、神々の帰りを待っていた。それに対して、下の方に住んでいる人達というのは、ラピュタによる地球の支配を狙っていた」みたいなものですね。
     宮崎さんは、こんなふうに「上層部と下層部では狙いが違う」みたいな、社会構造の差というのを作品の中に盛り込むことが多いんです。

     伯爵は劇中でも「我が伯爵家は代々お前たち大公家の影として、謀略と暗殺を司り国を支えてきた」と言っています。ここからもわかる通り、実は、伯爵家のもともとの仕事は偽札作りではないんですよ。
     「下カリオストロ」と呼ばれた伯爵家の仕事は、実は謀略と暗殺だけであり、偽札にはほとんどタッチしなかった。では、偽札の製造は誰が行っていたのかと言うと、「上カリオストロ」と呼ばれるクラリスのいる大公家の仕事だった。
     僕はこんなふうに考えているんですね。

    (中略)

     これは、地下牢から脱出して、偽札の印刷所を見つけた銭形から「これはなんだ!? 説明してくれ!」と言われたルパンが「これはゴート札の心臓部だ」という話をする時に表示される絵です。
     この絵をバックに「中世以来、ヨーロッパの動乱の影に必ずうごめいていた謎の偽金。ブルボン王朝を破滅させ、ナポレオンの資金源となり、1972年には世界恐慌の引き金にもなった。歴史の裏舞台ブラックホールの主役、ゴート札。その震源地を覗こうとした者は1人として帰って来なかった」と、ルパンが名調子で喋ります。

     さて、この絵の意味することが、みなさんにはわかるでしょうか?
     この絵からは「初期のカリオストロ家は金貨の偽造をやっていた」ということがわかります。つまり、カリオストロが紙幣を作り始めたのは、ほんの100年くらい前だということなんですよ。
     というか、そもそもヨーロッパにおいて紙のお金が使われたはじめたのは19世紀なんです。
     「ソブリン金貨」というものを知っていますか? 『パイレーツ・オブ・カリビアン』とかに出てくる海賊は、みんな金貨を持ってますよね。あれはスペイン金貨かイギリスのソブリン金貨なんですけども。
     19世紀のイギリスでにソブリン金貨というのが発行された時、金貨を多く持ち歩くのは煩わしいから、銀行がそれと同じ値打ちを保証する「銀行券」という紙を発行したんです。これを「兌換貨幣」というふうに言います。この19世紀にイギリスが発行した銀行券が、今の僕らが持っている千円札とか5千円札とか1万円札の大本にあるものなんですね。

    (中略)

     これは、フランス革命当時に描かれたナポレオンの風刺画を、宮崎さんが描き直したものなんですけど。
     手にしたサーベルで地球儀を貫いているナポレオン。しかし、その地球儀には導火線がついており、さらには彼の担いだ金袋には穴が空き、金貨がこぼれ落ちています。
     これはどういう意味かというと、「ナポレオンは、一生懸命、世界征服を目指していたんだけど、タイムリミットが近づいている。なぜかというと、彼の財布は破けている。つまり、破産仕掛けているからだ」ということなんです。
     宮崎さんは、この風刺画を一枚使って「当時、極めて危うくなっていたナポレオンの財政をカリオストロ公国が後押ししていた」というふうに説明しているわけですね。

     ちなみに、ルパンの台詞にある「ブルボン王朝を破滅させた」というのは何のことかと言うと。
     革命前夜のフランスで「マリー・アントワネットの首飾り事件」というのが起きました。マリー・アントワネットの親友だと騙るジャンヌ・ヴァロワ夫人という人物が、宝石商から4000億円くらいする首飾りを騙し取って、その請求がマリー・アントワネットに届いたという事件です。
     後に、これはジャンヌ・ヴァロワが働いた詐欺であったことがわかったんですけど、これが当時、フランス中を揺るがす大スキャンダルになりました。その中で、マリー・アントワネットはレズビアン疑惑まで掛けられて、裁判までやったんだけども、詐欺の黒幕にいたヤツらは無罪放免にされてしまいます。
     結果、パリの市民はマリー・アントワネットに対してすごい反感を持つようになり、これがフランス革命の1つのきっかけにもなったと言われているんですね。

     この事件の中で、マリー・アントワネットに、すごく高価な宝石を押し付けようとした実在する人物として「山師のカリオストロ伯爵」という男がいました。
     この「伯爵」というのは自称していただけなんですけど。こいつは、錬金術師であり、フリーメイソンのメンバーであったと言われています。まあ、その正体はイタリアのシチリアに住んでいるただの田舎者だったんですけど。
     さて、このカリオストロ伯爵の正体を調べ当てた人がいたんです。誰かというと、当時、ドイツに住んでいた、文豪であり、政治家であり、思想家でもあった「ゲーテ」という男です(笑)。
     首飾り事件を聞いたゲーテは「けしからん! カリオストロ伯爵の正体を俺が突き止めてやる!」と言って、単身イタリアに赴き調査を積み重ね、それを『イタリア紀行』という本にまとめ、「ついに俺はカリオストロの正体を突き止めた!」と発表しているんです。
     まあ、とにかく、この首飾り事件というのは、それくらいの大事件だったんですね。

     宮崎さんは、この山師カリオストロという、錬金術師でありフリーメイソンだった男の名前から、「カリオストロ伯爵」という名前を拝借しています。
     この「錬金術師」を覚えておいてください。

    (続きはアーカイブサイトでご覧ください)

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