岡田斗司夫プレミアムブロマガ 2018/08/13
おはよう! 岡田斗司夫です。
今回は、2018/08/05配信「人類は、人工知能ではなく、機械に職を奪われる?!」の内容をご紹介します。
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2018/08/05の内容一覧
- 今後の予定
- サブテキストの紹介
- 機械に仕事を奪われる?
- 『母をたずねて三千里』で描かれた機械による失業
- 機械に仕事を奪われることの怖れが現れた、ジョン・ヘンリーの伝説
- 農地を捨て都市に出てきた労働者の悲惨を描いた『怒りの葡萄』
- 現在のAIは「人工知能」ではないけど、役には立つ
- シンギュラリティでお金を集める起業家達
- 人工無脳の世界
- 人工知能を作ることは原理的に不可能?『AI原論』
- 人の8割が計算機に負ける
- 岡田斗司夫が考える未来
- ジブリ『熱風』の特集「移民大国日本」
- 20年後にシンギュラリティはやってこない
『母をたずねて三千里』で描かれた機械による失業
さて、ここからは話がちょっと古くなります。時は19世紀末、1882年イタリアのジェノバの話です。
1882年というのは、ちょうどガウディがスペインでサグラダファミリアの建設を始めた年なんですけど。まあ、それくらい古いとも言えますし、わりと最近でもあります。
この年、イタリアのジェノバに暮らしていた9歳の男の子が「学校を辞めて働こう」と決意しました。
……すみません。とはいえ、これは実在の人物ではありません。マルコ・ロッシ君という『母をたずねて三千里』の主人公です。
『母をたずねて三千里』というのは、『ハイジ』が大ヒットした後、別の人が1年間『フランダースの犬』を作っている中、1年間休憩した後で、宮崎駿・高畑勲コンビが作った長編アニメシリーズです。
いや、高畑勲は監督だから、この場合「高畑・宮崎コンビ」と言わなければいけませんね。宮崎駿は画面設計を担当していました。僕はこれを、高畑・宮崎コンビの最高傑作だと思っています。
この『母をたずねて三千里』の原作は、昔の小学校の学級文庫によく置いてあった『クオーレ』という、イタリアの子供たちの道徳の本です。これは「イタリア人の子供なら、だいたいみんな読んでいる」と言われる本なんですけども。
高畑勲は、その中に収録されていた40ページくらいしかない短編小説を、無理矢理全50話くらいに引き伸ばして、1年間のアニメシリーズに仕上げました。これを1年間のシリーズにするために、高畑勲は、『ハイジ』でやった時以上に徹底的に、19世紀末のイタリアの風俗を調べ上げたんです。
興味のある人は『クオーレ』を読んでみてください。あっという間にマルコとお母さんは再会を果たしてビックリしますから。日本人がよく知っている『母をたずねて三千里』の物語というのは、高畑勲のオリジナルだなあと思いますよ。
ちなみに、この『母をたずねて三千里』は、宮崎・高畑コンビの最後の作品でもあります。
その後にも、『赤毛のアン』などで、宮崎駿が高畑さんのアニメを手伝うこともあったんですけど、本格的にガップリ4つに組んだのは、これが最後です。
この19世紀のイタリア・ジェノバで、マルコ・ロッシのお父さんのピエトロ・ロッシは、貧しい人たちへの病院を経営していたんです。でも、病院を経営していただけで、彼は医者ではないんですよね。「事務員」なんですよ。
僕も、アニメを見ていた時は、病院を経営してるんだから、てっきり医者だろうと思ってたのに、「貧乏だ、貧乏だ」ってずっと言ってて、なんでだろうって思ってたんですけど。なぜかというと、病院の経営を任された事務員で、医者のワガママを聞きながら、なんとか経営をしていたからなんですね。
さて、この病院が経営破綻して、どうにもこうにも倒産しそうになったので、マルコのお母さんであるアンナ・ロッシは、アルゼンチンのブエノスアイレスに出稼ぎに行くことになってしまいます。
なぜ、アルゼンチンなんていう、南アメリカの遠い所まで出稼ぎに行くのかというと、実は19世紀後半から20世紀の頭まで、アルゼンチンというのは世界で最も豊かな国だったんですよ。
当時のアルゼンチンは、農産と牧畜によって農業大国として、かつての豊かなアメリカと同じように大成功していて、「そこに行けば誰もが金持ちになれる」と言われる国だったんですね。
なので、マルコのお母さんも、奉公に行ったんです。まだ9歳の子供だったマルコ・ロッシ君はお母さんを恋しく思います。
ところが、お母さんが旅立ってから数ヶ月もすると、それまでアルゼンチンからしょっちゅう届いていた手紙が、だんだんと滞るようになってきて、やがてパッタリと届かなくなってしまいます。
それと同時に、お父さんに仕送りしていたお金も来なくなってしまうんですね。
マルコは、すごく心配して、友達だったエミリオ少年に頼んで、瓶洗いの仕事を紹介してもらいます。
(パネルを見せる)
これが瓶洗いの仕事を貰いに行く場面なんですけど。手前にいる太った男の人がジロッティーさんという、瓶洗い業の元締めですね。マルコ少年は、この人に「僕も働けます!」と言いました。隣ではエミリオも推薦してくれています。
しかし、ジロッティーさんからは「子供がな、そんなに働けるもんじゃない。瓶洗いってのは大変なんだ」と言われてしまいます。
でも、マルコは子供なりにすごい頑張って、中庭中に置いてあった空瓶をゴシゴシ洗って、ジロッティーさんをビックリさせます。
(パネルを見せる)
ジロッティーさんも「これだけ働けるんなら使ってやろう」ということで、1882年のイタリア・ジェノバの港町で、わずか9歳のマルコくんは、学校に通いながら、放課後は瓶洗いをして、お父さんにお金を渡そうということになりました。
しかし、第9話「ごめんなさいお父さん」の回で、とんでもないことが起こります。
マルコくんは、お母さんの手紙が届かないことを心配して、ついに学校を辞める決意をしたんですね。マルコくんは9歳ですから、まだ小学生ですよ? にも関わらず、「もう小学校にもう行かない!」と言い出して、友達のエミリオも心配するんですけど、お父さんにも秘密で勝手に学校を辞めちゃうんですよ。
そして、不思議なことに誰も出勤していないジロッティーさんの店に1人で行って、置いてあった瓶を全部洗います。そして、やって来たジロッティーさんに「見てください、ジロッティーさん! もう100本近く洗っておきましたよ! 僕はこれから学校には行かずに、ずっとここで働きますから、もっとお金をください!」と言うんです。
しかし、ジロッティーさんはすごく暗い顔をしています。 なぜかというと、「瓶洗いの機械」が発明されてしまったからですね。
(パネルを見せる)
「くだらないことを思いつくヤツがいたんだ。瓶洗いの機械が発明されてな。その機械があると1時間に何百本も瓶が洗えるっていうんだよ。もうこの店もおしまいだ」と。ジロッティーさんの瓶洗い業は、もう店ごと倒産してしまったんですね。
もう、人間が瓶洗いをする時代でなくなってしまったんです。
(続きはアーカイブサイトでご覧ください)
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