岡田斗司夫プレミアムブロマガ 2019/06/14
おはよう! 岡田斗司夫です。
今回は、2019/03/31配信「【10倍楽しむための予習特集】『巨神兵東京に現わる』『平成狸合戦ぽんぽこ』」の内容をご紹介します。
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2019/03/31の内容一覧
- 新キャラ「ネコロン」くんの前説、デトロイトマジしんどい
- 幻の実写版エヴァ『巨神兵東京に現る』はここを見ろ!
- 宮崎駿の「『ぽんぽこ』の製作をやめないと俺がジブリを辞める!」宣言の謎
- なぜ高畑勲は狸のキンタマを見せることにこだわったのか?
- 高畑勲の仕掛けたミステリー 「なぜジブリキャラが登場するのか?」
- 岡田斗司夫ゼミ4月の大改革
- 4月の大改革の補足と、過去放送の導入
- オンラインサロンと宗教の話
- この世の中を面白がりましょう
宮崎駿の「『ぽんぽこ』の製作をやめないと俺がジブリを辞める!」宣言の謎
ネコロン:『ぽんぽこ』予習その1は、宮崎駿が語った「『ぽんぽこ』は絶対に失敗する」宣言の謎ニャ。
オカダ、『ジブリの教科書 平成狸合戦ぽんぽこ』の46ページ辺りを読むニャ!
岡田:はいはい、読みますね、ネコロンさま。
46ページくらいを読むと、どんなことが書いてあるのかというと。
もともと、『平成狸合戦ぽんぽこ』っていうのは、『紅の豚』を終えた後の宮崎駿の企画ぶち込みから始まったんだよね。
宮崎駿は「パクさん(高畑勲)は、杉浦茂のマンガの『八百八狸』をやってくれ。あれはすごい楽しい作品だから、哄笑できるような作品をやってくれ」と言ったんだよ。哄笑、つまり「映画館で見ている人が、思わず腹を抱えて大きい声を出して笑うような作品をやってくれ」と言ったんだけど。
しかし、それに対して高畑勲が何と言ったかというと。「僕には、このマンガの面白さが全然わからないし、映画館で声を上げて笑うなんて、くだらないことだと思う」って「その時は」言ったんだよね。……後に『ホーホケキョ となりの山田くん』を作る彼が、そんなふうに。
まあ、宮崎駿の真意としては、「僕は『紅の豚』という映画で、自分のことを豚だと言った。じゃあ、パクさんは狸だろ?」と。「自分は欲望にまみれた、なんもかんも欲しくて、女にもモテたい豚のような人間なんだけど。パクさん、あなたは人も騙すし自分も騙す。そうやって他人を使ってばかしたようなものを作る狸じゃないか」と。
この当時、宮崎駿は……まあ、ジブリの中での読書ブームだったのか、宮崎駿個人のブームだったのかはわからないけど、『人間失格』をすごい読んでたんだって。
この「宮崎駿が『人間失格』を読んでいた」っていうことは、僕も間接的に知ってて。なぜかというと、庵野秀明が一時期、メチャクチャハマってたんだよ。『人間失格』の話ばっかりする、と(笑)。
『紅の豚』が1992年で、『平成狸合戦ぽんぽこ』が94年なんだよ。その間、庵野秀明って、物作り的にはちょっと大人しかった時期なんだよね。『トップをねらえ!』が88年で『エヴァンゲリオン』が95年だから。
ちょうどそのヘコんでた時期に、宮崎駿の影響だと僕は思うんだけど、『人間失格』をすごい読んでいたんだ。なので、僕は、宮崎駿に『人間失格』ブームがあったというのは知らないんだけど、あの時期、庵野秀明が『人間失格』すごくハマってたっていうのは、当時ガイナにいた連中だったらみんな知ってるんだよ。
今回、いろんな資料を見ていると、宮崎駿が『紅の豚』が終わったくらいから、すごい『人間失格』を読んで「自分は汚い」とか、そんなことを語るようになってたんだって。
つまり、宮崎駿が高畑勲に本当に望んでいたのは「俺はこんな人間なんです、すみません」というような懺悔を、高畑さんにもして欲しかったと。
なぜかというと、ぶっちゃけ、宮崎駿は『紅の豚』を通じて、自分の中でマルクス主義というものに、一定の評価を与えながらも、悪く言ったら「捨てる」ようなことをしたわけだから。そうやって開き直って「俺は欲望で生きるぜ!」と言ったのが『紅の豚』という作品なんだけど。
だけど、自分だけマルクス主義というのを捨てるのはツラい。だから「じゃあ、高畑さんも」ということで、「自分のことをカミングアウトする作品を作ってくれ! 自分のことを狸だと言ってくれ!」と言ったんだけど。
じゃあ、『平成狸合戦ぽんぽこ』というのは、そんな作品になったのかというと、全然そんな作品にならなかったんだ。
まず、この『平成狸合戦ぽんぽこ』というタイトル。
「狸合戦」までは宮崎駿も認めてたんだけども、その前に「平成」を付けた。おまけに、またどこかのテレビ会社の営業かなんかが「じゃあ思い切って『ぽんぽこ』まで付けたらどうですか?」なんて言ったから、高畑勲は大喜びして「そうだ! もう、狸合戦の前に『平成』を付けて、うしろに『ぽんぽこ』まで付けたら、この作品がどんなにくだらないか、わかってもらえるだろう!」と。
そういうふうに、軽い……まあ「軽い」という言い方は、高畑さんは絶対にしてないんだけど。どう説明すればいいかな? まあ、それは来週までに考えるわ。とにかく、そういうふざけたタイトルにしたんだよ。
このタイトルに宮崎駿はメチャクチャ怒ったんだ。
後に、井上ひさしという文学者と対談した時も、井上ひさしが「あのタイトルだけはね」って言ったら、宮崎駿は大喜びで「そうですよね! あのタイトルはダメですよね! あんなタイトルを付ける高畑勲の作品はダメに決まっている!」なんて言い出して、その隣で鈴木敏夫がメチャクチャ困っているという、「あれ? それと同じやり取り、何年か前に『ゲド戦記』の作者のアーシュラ・K・ル=グウィンの前でもやってたよな」ってことをやってるんだけど(笑)。
タイトルが『平成狸合戦ぽんぽこ』に決まった時、宮崎駿はマジで怒って、鈴木敏夫に「絶対に失敗する! 俺のジブリを潰す気か!」って、散々言ったらしいんだよね。
次に、「その『ぽんぽこ』は、多摩ニュータウンを舞台にした、都市開発のせいで自然がなくなっていくという話にする」っていう話を聞いて、今度はいよいよ本当に「制作を中止しろ!」って言い出したんだって。
「『平成狸合戦』を今すぐ制作中止しろ! 辞めてくれないんだったら、俺がジブリを辞める!」とまで言い出した。
(続きはアーカイブサイトでご覧ください)
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