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 日本の株式市場にはおよそ3600社もの上場企業が投資家の負託に応えようと事業を展開し一定期間に成果を出しながら評価を得て連綿とした活動を続けていきます。投資家はその業績などを吟味しながら、株価の位置やテクニカルな分析を行いつつ投資するのが普通です。

 ただ、今回の任天堂株にような場合、業績がどうであれ今旬のブーム、世界的な社会現象をメディアが伝えることで投資家に投資意欲が湧いてきたことで株価上昇に拍車がかかったということが言えます。


 投資家が特にどういう企業に投資するかと言うと、かつてケインズ先生が言ったとされるように美人投票と同じ原理で投資するという考え方です。自分の好みの美人ではなく多くの審査員が投票すると思われる美人に一票を投じるというのです。
 現在の株式相場で言うなら強烈な勢いで上昇し、今後も株価上昇するとメディアが騒ぐ任天堂のような銘柄に投票ならぬ投資を行おうとする訳です。

 メディアも大衆迎合型で視聴者や読者が喜びそうなネタだけを届けようとしており、それが結果としていつの間にか国民や多くの投資家に刷り込まれてしまっているように思われます。


 さて、季節は夏本番。連日の猛暑の中、東京都知事選の熱き戦いが7月31日の投票日まで続くことになります。

 この暑さの中での選挙戦はこれからの4年間を都民とともに生きていけるか体力テストの場でもあり、これは公約の良し悪しの前に立ちはだかる選挙民が考えないとならないフィルターでもあります。
 若手経営者による成長指向の経営が投資家に好まれるのと同様に通常は若ければ若いほどパワーがある訳で選挙民の期待は経験値や過去の実績よりもその年齢 に求められる筈です。その後には当然、何をしようと考えているのか公約も含めた立候補者の自己主張の内容が都知事を選ぶ最も重要なポイントとなります。

 しかしながら現在の選挙戦ではテレビメディアを中心としたマスメディアのやり方として組織が支持している候補者に焦点が当てられ、今回の都知事選には21名も立候補しているのに3名の名前しか選挙民の頭に残ることはありません。


 各都知事候補者の公約にはメディアが取り上げている3名以外にも、メディアが取り上げないとてもユニークな主張が掲げられています。中には突拍子もないような公約が掲げられていることもあるでしょうが、中には貴重な公約や意見も掲げられているのかも知れません。
 それはインターネットで調べようとすればわかるのですが、一般的な選挙民は日常の生活に追われていて、そこまでチェックする暇はない。テレビのニュースや討論番組などで簡単に見ることのできる3名の議論などを参考にして投票する訳です。
 このため人口1360万人の巨大都市、東京都の1100万人もの選挙民が21名の立候補者にどのような投票を行うか結果はほぼ見えているのかも知れませ んが、株式相場に関わる投資家も大事な資金をどこに振り向けるか、選挙と同様に自らの努力で企業を調べ、どのようなビジネスを行い、今後どのようなビジネ スで成長しようとしているのか、また投資家にどのようなリターンをもたらそうとしているのかをしっかりと吟味して頂く必要があります。

 幸いなことに投資の世界ではマスメディアの影響力は薄れており、様々な情報がインターネット上に流れ、皆様もそうした情報に基づいて投資することで株価 の形成が行われていると思われます。ただ、実際には自らの投資判断に基づく投資よりもメディアの影響を受けているというのが実態だろうと思います。

 選挙戦は立候補者の自己主張の場ですが、これと同様に投資家に訴求しようという企業のIR活動は知名度向上に必要不可欠です。ただ当然、企業寄りになっ てしまいます。このため、企業の経営内容や事業活動を知らしめる中立的な立場のアナリストなどが大局的な見地で投資家にメッセージを発していくことは投資 家と企業をつなぐ重要な役割となるに違いありません。

 本コラムでもそうした中立的な立場でこれからもメッセージを発して参りたいと思っておりますので宜しくお願いします。


(炎)


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