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 配当利回りが高くてPERやPBRも低い株式をバリュー株と称していますが、安定志向の多くの投資家が関心を寄せていることと推察されます。人気は根強 いものの、業績が伸びないと結果としては、なかなか成果が上がらず、しびれを切らして売却せざるを得なくなるといったことが起きてしまいます。

 先週は、本メルマガでもおなじみになった建設基礎工事のテノックス(1905)株が第1四半期決算の発表後に急落。思わず投げてしまった投資家もお見えになるのかも知れません。


 それにしても第1四半期決算を評価の根源としている投資家がいたんだと唖然としてしまいます。1Q決算の発表内容を見て投げた投資家とここはチャンスとばかり買い付けた投資家が入り交じり、商いは久々に13万株余りと多少膨らみました。

 通常は引け後に発表するのですが、同社の場合は13時に発表しており、これが公正な発表なのかどうかは疑問を持たざるを得ませんが、売り買いの冷静な判断ができないまま、一方的に売りが入り、買い方がお金を用意できない中で、急落したと推察されます。


 なぜ売りが出たのか理由を探ると第1四半期の業績が悪化したと捉えられた点にあります。気になる点は粗利率の低下による収益の減少ですが、四半期ベースで採算の低い案件が売上にたったことが結果的に第1四半期の業績を押し下げたということができます。

 しかしながら受注は前年同期比25%増の53.8億円と堅調な回復ぶりを見せています。通期では17%増の190億円を見込んでいますので受注面では第1四半期は堅調だったと言えますが、市場は期間利益だけを見て評価したと見られます。


 株価の下落で同社株のPERは4.3倍となり、実績PBRも0.43倍まで低下してきました。配当利回りも4.6%に向上。実質時価総額は43億円となり保有現預金65億円を大きく下回る水準となってきました。


 建設基礎工事は東北復興や熊本の震災復興で活躍するセクターであり政府の経済対策に盛り込まれたリニア新幹線にも絡んで参ります。

 建設投資は政府建設投資や民間住宅投資や民間非住宅投資の合計で表されています。同社の場合は、現状20兆円余りの水準にある政府建設投資の動向がカギとなっています。
 実際に同社の2010年からの業績推移を見ると、政府建設投資が2010年度の17.98兆円でボトムを打った直後の2011年3月期、2012年3月 期に赤字に転落しましたが、その後、政府建設投資が2013年度、2014年度にかけ23兆円余りにまで拡大すると同社を含め、ゼネコン各社の業績は様変 わりに向上。同社の経常利益も2016年3月期に19億円と言う水準にまで向上しました。
 その後、政府建設投資は2015年、2016年と21.5兆円、20.5兆円と足踏みしており、それが、前期の同社の受注にマイナスとなって働いたと見られます。

 今期は下期からの大型補正予算の執行から受注回復が期待されますので1次的な業績停滞を脱して来期以降の向上が期待される状況にあります。


 アベノミクスは金融政策を優先させてきましたが財政問題を踏まえて公共事業を手控えてきたことでデフレ脱却には至らず、停滞を余儀なくされているのが現状です。
 安倍政権は参院選での勝利を背景に思い切った財政政策を打ち出すとの期待はありましたが、今のところ政府と民間を合わせて28.1兆円(真水は6兆円) の事業規模の政策を打ち出したところで評価が高まっていない状況で為替が円高に向かってしまいました。年間6兆円のETF買付が下支えにはなっています が、結果として株価の停滞を招いています。


 そうした中で同社の1Qの業績が発表され、思わぬ株価急落を招いてしまいました。バリュー株は割安感に投資のよりどころを求めますので、キャピタルゲイ ンを狙っての好業績を背景にした買いが裏切られると投資家は思い切って売却してきますので、相応の注意が必要となります。

 バリュー株は先々の業績や成長性が不透明な場合、株価の位置によっては売りが出やすいという限界も感じられます。
 ただ、一方ではバリュー株を安く買える投資家も出てきて、底を打つ可能性が見えてくる訳です。

 週明けのテノックス株もそうした評価に基づいて短期底打ちとなるのか関心を寄せておきたいと思います。


(炎)


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