c3594230799ed8a2ee0f1a04ce584c36_s.jpg


 いよいよ日経平均株価などの指数動向がETF買付けを増額した日銀の売買動向に大きく依存する状況が明確になってきました。

 東証1部時価総額約500兆円に対して6兆円の買いと言われてもピンときませんが、実際の浮動株ベースでのインパクトとしては、市場に流通している指数採用株式の7~8%もが一年間で吸い上げられてしまうとイメージしていただければ、その凄さが分かります。

 何故そこまでして株高を演出したいのか?
 「これが国民の将来の安心に繋がる施策である・・・」という事ではありません。潤うのは富裕層で株式を沢山保有しているケースと、年金などインデック ス・ベースで評価される主体が中心です。市場センチメントの改善と公的全体を見渡した運用方針の転換と見做すべきと思われます。
 もちろん日銀が株価を人為的に永遠に吊り上げておくなど出来ることでもありません。長く続く施策とはならないでしょう。

 この副作用として一般投資家や中長期投資家の参加が先細ってしまい、値持ちが良いのは日銀が買う指数採用銘柄ばかりで、それ以外は相変わらずの博打的個別物色・・・と言う、真面な投資家が参加し辛い市場になっています。


 そんな中で、黒字を継続しつつ配当利回りは3%以上もあるのにPERは一桁半ば、しかもPBRは0.5倍をも下回り、時価総額より保有キャッシュの方が 大きい・・・などという、株主から見ればサッサと清算してくれた方が有り難い会社(還元率、配当性向などが共に低いケースが多い)が沢山放置されており、 これこそが日本株低迷の理由です。他国市場ならとっくにTOBされていることでしょう。


 日本企業や日本市場に成長期待があるなら日本株への投資が成功すると考えるべきなのでしょうが、成長期待が薄れていて且つ投資家への還元(見返り)も少ないのであれば買われません。ここ1年間はそんな日本株式市場の本質を曝け出した市場動向でした。

 買い上がるような投資家は少ないと判断されているからこそ、幾ら各指標に割安感があっても買われず、特に昨年後半からは好決算などの何らかの材料が出て 買われても(上がっても)直ぐに売り物に押され株価が下げてしまうケースが増えています。そのような銘柄を調べると株価が上げたところで空売りが増えてい ることが分かります。

 同時に信用の取組みからは見えない海外ファンド勢の借株による売り圧力も増していますし、空売りしておいてから「割高だ!」と言うレポートを出し、下げ たところを買い戻すと言う法令違反ギリギリの投資手法で仕掛けてくるファンドも記事になり始めました。明らかにマネーゲームの様相です。


 相当歪な投資環境であると言わざるを得ません。9月の日銀会合では今までのオペレーションの効果を検証するとしていますが、今後の方針を感じさせるコメントを出せるのか?と・・・、注目すべき会合と考えています。

 金融市場に限らず、国内の設備投資や消費が伸びず、不動産市場でも投資する対象が減ってきている現在の環境がいつまで続くのか?既に国内銀行の収益は目に見えて減ってきており、このままでは近いうちに赤字銀行が続出しそうな気配です。

 7月の貿易統計も目を引くほどのものはありませんでした。輸出入ともにマイナスで弱々しさが続いています。とは言え、大掛かりな財政出動をするほどの数字でも無いのですが・・・、選挙で頑張った人へのご褒美(バラマキ)ですかね(呆)


 以前にも書きましたが、幾ら金利を下げようとも債券市場が良い例で、いよいよ円クレジットでは儲からない時代になりつつあります。つまり視点を変えれ ば、儲からない円を手放して他の投資対象(外貨ベース)にお金が向かう流れが今後より可視化されてくるはずと考えています。

 考えたくはありませんが、いつの日か日銀のオペレーションが行き詰まり景気が悪化する中で円の信用力が低下するなどで、万が一にもスタグフレーションの 状態に陥るようなことがあれば、国富の散逸と同時に国民生活が窮乏し、その見返りに政府債務が軽減されるといった事態も起こり得ます。

 今までは円資産を持ってさえいれば安全であったものが、これからは国力の低下と共にその安心感が逆回転することにも配慮しておかねばなりません。日本国 の財政が数年内に可笑しくなる程では無いでしょうが「経済力=国力=国防力」です。無理な金融政策が影響して最も大事な経済が廻らなくなくなるような事態 は絶対に避けたいところです。


 政局の為に、70年前に慌てて作られた憲法を材料に「違憲だ。いや違憲じゃない」と言った禅問答を繰り返し、そしてオラガ村への利益誘導に拘泥しているうちに、じわじわと日本国の土台が蝕まれています。

 土台が傾きはじめたら「尖閣諸島が云々」などと言っているどころではありません。
 バブルに踊り最も大事な(国力が最も充実していた)時期に戦後の懸案であった領土問題その他を片づける千載一遇のチャンスを逃した経験を忘れてしまったのか?それとも政局でそれどころでは無いのか?


 円資産ばかりと言うリスクにも思いを馳せておくべきです。


(街のコンサルタント)


(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。また、当該情報は執筆時点での取材及び調査に基づいております。配信時点と状況が変化している可能性があります。)