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証券業界の変化に学ぶ、日本のリテール金融業界の未来その2
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証券業界の変化に学ぶ、日本のリテール金融業界の未来その2

2016-12-08 12:41
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     CFP梶原真由美です。

     今回も、米国金融リテール証券業界の近年の変化について、引き続きお届けしたいと思います。


    <前回の内容>

    証券業界の変化に学ぶ、日本のリテール金融業界の未来その1
    http://www.okuchika.net/?eid=6698

     2008年の金融危機時にも米国リテール証券業界は投資家の信用を損ねませんでした。
     金融危機を経験した投資家は、自力で投資判断を行う難しさを実感し、金融の専門家を頼るようになりました。
     それは富裕層だけではなく、「老後の資産形成」を投資目的とする資産形成層も同じであり、そのニーズに応えRIA(=個人向け投資顧問業者)が増加しました。


     今回は、米国のリテール証券業界で需要が確認されている金融商品に注目してみます。


    ■商品の変化 パッシブ運用の台頭とETFの躍進


     金融危機後の運用手法は市場環境が厳しくなり、投資家が運用コストに敏感になったことから、パッシブ・ファンドが急拡大しました。
     また、従来以上にますますアセット・アロケーション型商品が選好されるようになりました。
     アセットの選択肢として、市場とは異なる動きをするオルタナティブ商品も好まれるようになりました。

     2014年の株式アクティブ・ファンド純資金流出額1,666億ドルに対し、パッシブ・ファンド(ETF含む)純資金流入額984億ドルと「アクティブ・ファンドからパッシブ・ファンドへ」の流れを受け、2014年の米国最大ファンド・ファミリーはパッシブ運用で知られるバンガードの2.7兆ドルとなり、アクティブ運用で知られる2位のフィデリティに倍以上の差をつけました。

     特にETFは残高が底をつけた2008年の3.15倍、本数では1.7倍となりました。
     2015年現在、米国最大のファンドは従来型の投資信託ではなく2015年1月の残高が2,095億ドルのETF、「SPDR S&P500」です。


    ETFが躍進した理由は以下の4点が考えられています。

    ・スマートβの運用手法等も取り入れられ、多様化が進んだ
    ・従来型投資信託よりもコストが割安
    ・上場している為、流動性・透明性に優れている
    ・営業担当者(特にRIAチャネル)が推奨をはじめた

     RIAは商品手数料ではなく、顧客からの預かり資産残高に対しての手数料が収益なので、顧客のポートフォリオのリターン及び商品コストにより敏感になります。
     そういった観点からRIAと親和性の高いETFは、RIAによって推奨されていると言えるでしょう。


    ■スマートβ型運用の増加


     スマートβの定義は一律ではありませんが、一般に時価総額以外の基準でウェイト付けされた指数に連動する運用スタイルと解されていて、中長期的に市場平均を上回ることが期待されています。
     β(市場連動)よりスマート(賢く)運用する事を目指す、新しい運用手法です。

     みなさんに身近なスマートβ指数は「JPX日経インデックス400(JPX400)」ではないでしょうか。

     米国でもスマートβ型運用は増加傾向にあり、その先駆者と言われるのは、ディメンショナル・ファンド・アドバイザー社(DFA社)です。
     同社は81年創業で、ノーベル賞受賞者を率いて彼らの理論に沿った数量的モデルで運用を行っています。
     資産拡大のカギを「営業担当者の金融リテラシー」にあると考えて、同社の経営哲学を理解する営業担当者を厳選し、ノーベル賞受賞者の講義を含む同社の研修に自費で参加させた上で、販売を認める方針を貫いてきました。
     同社が「株は選ばずに営業担当者を選ぶ」と言われる所以です。

     2014年初時点では、同社は大手証券会社に商品を卸しておらず、厳選されたICとRIAわずか1,900人がこれを販売しています。
     金融危機前のピークである2007年の運用資産は1,400億ドル程度でしたが、2014年は3,810億ドルに拡大し、ファンド・ファミリーとしては第10位となりました。


     日本ではGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が2013年度に行った内外株式の運用委託先見直しで、運用委託先を通してJPX400とDFA社の提供するファンドが選ばれている。


    ■アセット・アロケーション型サービスの普及


     アセット・アロケーション型の代表的なサービスには、マネージド・アカウントと呼ばれる一任サービスがあります。
     2008年の残高は1.3兆ドル(投信市場規模の13%)でしたが2014年は3.8兆ドル(同24%)、2018年には6.7兆ドルになると予想されています。

     一任サービスの特徴は、顧客の投資目的や投資経験、リスク許容度等に沿って作成した投資方針に基づき、証券会社が取引ごとの承認を得ずに有価証券の売買を行うことです。


     一任サービス普及の要因は以下の3点が考えられています。

    ・金融危機の痛手を被った個人投資家がこれまで以上に分散投資の重要性を認識した
    ・単品の商品ではなくソリューションを求めるようになった
    ・DF法により、証券外務員の営業行為規制が一任サービスを提供する投資顧問業者並に引き上げられる可能性が高まった(=従来は富裕層向けサービスと捉えられてきた一任サービスのハードルが下
     がった)


     米国のマネージド・アカウント市場は以下の種類が挙げられます。

    ・ETFラップ
    ・ファンドラップ
    ・SMA
    ・営業担当者の一任サービス
    ・UMA(総合一任口座)

     現在においても、マネージド・アカウントは発展の過渡期にあり、ETFラップ、SMA、ファンドラップ等各サービスをひとまとめにして管理・運用する総合一任サービス(UMA)がSMAの発展型として誕生しシェアを拡大しています。

     今までは富裕層向けのイメージが強かった投資一任サービスが、個人投資家のニーズによって資産形成層向けに形を変え提供されていることが伺えます。


     日本で導入されている一任サービスにはSMA(ラップ口座)やファンドラップ等がありますが、まだまだ大手証券会社の牙城であり、富裕層向けサービスとなっています。


    いかがでしたでしょうか?


     金融危機後の個人投資が求めたサービスは「低コスト」「分散投資」「専門家のアドバイス」であり、そのニーズに応えた商品が普及していきました。

    「低コスト」ではETFやパッシブファンド
    「分散投資」では新しい分散先としてスマートβやオルタナティブ・ファンド
    「専門家のアドバイス」では投資一任サービス

     上記は決して新しい考え方ではなく、本来の長期分散投資の基本的な考え方の重要性を金融危機によって個人投資家が再確認したと言えるのではないでしょうか。


    ■日本では?


     日本でも同じ様に、パッシブ投信の信託報酬引き下げ競争、ETFのシェア拡大など運用コスト意識は高まってきています。
     しかし一任サービスに於いては大きく遅れを取っており、その原因は投資一任サービスを提供する為の規制が厳しいものとなっている為、小規模事業者からの参入が難しい事が原因だと考えられます。


     次回は、米国の対面チャネルの変化について紹介したいと思っています。

     日本と米国では対面チャネルの多様性に大きな差があり、そのことが米国型金融サービスを日本に普及させる障害となっています。


    株式会社マネーライフプランニング
    パートナーCFP 梶原 真由美


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    (情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。)
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