先週の米軍のシリアへのミサイル発射に続き、週末から高まっている米国の北朝鮮への圧力。緊張しつつある朝鮮半島情勢は、『地政学的リスク』としてマーケットのリスクオフ要因になっています。
ドル円相場は、先週まで下押しを試したものの、110円台前半では実需の買い意欲が強かったとされ、しばらく110円~112円の狭いレンジでの動きが続いていました。
ところが、米軍の北朝鮮への空母や駆逐艦派遣での軍事力増強の報道で、今週初には強固とされた110円のサポートを割りました。一方、米国債市場では、いわゆる「質への逃避」で債券が買われ、ここ数カ月10年物米債利回りのサポートだった2.3%を昨日割り、2.28%まで低下しています。
シリアへの攻撃は、アサド政権側軍が化学兵器を使用したのでは?という疑惑を盾に、速攻で攻撃。余談ながら、これっていつか来た道のように映ります。だいぶ昔の湾岸戦争の時だったか(?)、油まみれの鳥の映像が繰り返し流れ、これを盾に攻撃増強賛成の世論を形成しましたが、後にヤラセ疑惑か事実であった事を思い出させられます。
アメリカ人の雇用増強、経済の活性化のための数々の政策で「アメリカファースト」を掲げてきたビジネスマン気質のトランプ大統領、矛先を変えてきたの?との印象も持ちます。
今回の攻撃について、トランプ大統領は演説の最後を「アメリカに、全世界に、神のご加護を」と結びました。アメリカ以外のために彼が祈ってくれたのを初めて耳にしたように思います。やり方を変えたのでしょうか。
オバマケア修正案の頓挫、減税法案をはじめとした経済、財政政策の遅れ等もあり、支持率最低を更新するなか、軍事作戦で政策の遅れ、頓挫から目を背けさせようとしているのではないかと勘繰ります。
地政学リスクでは、「地理的に遠くで起こった事象で悲観が過ぎて売られた場合は買い、近くで「事件」が起こり直接被害を被りそうなら『売り』」とも言われます。
となれば、今回の場合、地理的にとても近く、日本が攻撃を受けるリスクも否めない。となれば、むしろ円売りとなってもおかしくないと思いますが、実際には経常黒字国の通貨は買い等の理由を背景に円買いに動いています。
しかし、今回の円高は、地政学よりも、どちらかとトランプ・ラリーへの失望と巻き返し要因の方が大きいように思います。
今年の利上げを織り込んだ米国金利も、FRB関係者は出来るときに正常化を進めたいスタンスだと言い続けてますが、有事となれば利上げは踏みとどることになるだろうという見方に繋がり、ドルの頭を押さえます。
昨年末のトランプラリーが過剰な期待で膨らみ過ぎたために、ラリー調整には時間を必要としているのでしょう。
さて、地政学的リスクが杞憂に終わった場合には、米国は利上げと共にFRBのバランスシートの縮小に動く予定で準備をしている、と先般公開の3月FOMCの議事録から伝わりました。
基本的には、今年、来年かけて、タイミングを計りながら金融政策の正常化を目指す体勢を維持していくものと思われます。
目先のきな臭さやトランプ政権の政策実行能力への信頼低下で大きく動きにくい展開が、しばらくは続きそうです。
4月中にスケジュールとして注目したいのが、日米経済対話会合で18日にはペンス副大統領の来日です。麻生副総理との会合に臨みます。
また、米財務省は「為替報告書」を4月後半か5月に公表します。特に中国とか日本、またはドイツ、メキシコを為替操作国扱いするかどうかの疑心暗鬼も持ち上がるかもしれません。ただ、直近相場のように110円割れになった水準では、為替操作国に認定される可能性は低いとは思いますが。
ユーロ圏では、3月の中央銀行理事会後に、量的金融政策の縮小観測が広がりユーロ買い反応がありました。ただ、その後に要人たちから解釈の否定発言が続き、ユーロ反発と見ていた私の目論見も狂い、ユーロは反落しました。
ユーロ売りに加担しているのは、フランス大統領選への思惑です。極右のルペン氏と中道のマクロン氏の二大対決と思われたところに、極左のメランション氏の台頭が報じられています。
極右も極左もユーロ離脱を政策としています。フランスのユーロ離脱は、現実的に可能性は低いとしても、「極」の人たちが優勢になると、リスク上昇が連想されることになります。
今週末は、復活祭で欧米は静かになると思いますが、4月23日、5月7日のフランス大統領選が近づき、様々な雑音が伝わることと想像します。
リスク回避で、日本円や株式市場も影響されると思います。
政治のニュースに敏感に動く今年のマーケット。引き続き、余裕をもって慎重に見ていった方が良さそうです。
最後までお読み頂きまして、ありがとうございます。
※4月12日東京時間午後3時執筆
本号の情報は4月11日のニューヨーク市場終値ベースを参照しています。
なお、記載内容および筆者見解は参考情報として記しています。
式町 みどり拝
(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。)