閉じる
閉じる
×
日経平均2万円台乗せを前に再び調整場面を迎えた株式市場に蔓延する短期志向の心理。
株で儲けたいけどできるだけ短期で儲けていつ起きるか分からないショック安などに備えたいという臆病な投資家の行動がそうした短いサイクルで調整を引き起こしてしまっているのかも知れません。
短期志向の投資家が多い日本の株式市場では企業との思いにズレが生じてしまいます。アグレッシブな企業は長期的な視野に立ってできるだけ高い成長を遂げるべく先行投資を行い本来の投資家の期待に応えようとします。
先行投資には減価償却費の増加を伴う設備投資のほか人材投資、営業拠点の拡充、研究開発費、広告宣伝費など様々にありますが、思い切った先行投資を行った結果、期間利益を損なうケースも出て参ります。
売上は伸びても先行投資で利益は減益になるという場合や極端な場合、赤字になるといったこともあり、そうした場合には短期的な視点で企業を単純に評価する多くの投資家は持ち株を売ろうとします。
一方、長期的視点で保有する意向の投資家は中期計画への信頼性をベースにそうした売り物を下値で拾おうとします。株価が短期には上がらないと見た短期投資家の売りと中・長期的に大きなリターンを上げようとする中・長期投資家の買いが入り株価は均衡点を見出すことになります。
こうした先行投資による業績下方修正銘柄を短期投資家が嫌う理由はこれまでの経験則に基づいています。過去の経験でそうした銘柄は短期的な株価の上昇が期待できないこと、PERなどの指標が短期的には通用しなくなるとの判断も働いてしまいます。また中長期的な事業拡大の方向性が十分に投資家に伝わらずに売り優勢で株価が形成されてしまいがちなことも投資家の売りに輪をかけてしまいます。
もちろんポートフォリオ運用されている投資家は株価の見込みがない場合、思い切って業績の良い銘柄に乗り換えようとしますので、この場合も株価の水準に関わらず売り物が出やすいことになります。
中長期スタンスの多い本メルマガの読者の皆さんはこうした場合、時間分散を図りながら買い向かおうとされるのかも知れませんが、未来の結果は誰にもわからず、多少は勇気が必要なのかも知れません。
企業が先行投資をする意図を改めて確認して十分な理解をして臨んで頂く必要があるかと思います。
今回は先行投資(費用)による業績への影響が株価にも影響した銘柄の例として夢テクノロジーを見てみます。このほか有料メルマガでもいくつかの事例を掲げておきましたのでご購読賜りましたら幸いです。
http://www.honohfm.com/
【夢テクノロジー(2458)について】
発表前株価808円
⇒発表後の株価変動ゾーン763円~656円 最大▲18.8%
同社はエンジニアの派遣事業で着実な成長を続けてきましたが、IT業界の人員不足を見越したこれまで以上の積極的な人材採用に向け中期計画を思い切って見直しました。結果として人材採用の費用増、研修費の増加などの先行投資によって今期の業績見通しは下方修正されました。
一方で中期計画の目標となる2019年9月期の売上高178億円、営業利益16億円、期末エンジニア数4200人へと事業規模を一気に拡大させる方向に舵を切りましたが、今期の営業利益、経常利益がこれまで見込んでいた6億円から1.8億円へと大幅な下方修正が示されたことで株価は直近最大で発表前日の終値から18.8%下落しています。
また3月の年初来高値1113.5円(2分割実施を換算)からはわずか2か月間で41%もの大幅下落となっています。ネガティブな判断に立つ短期投資家の投げに対して長期スタンスと推察される投資家の買いが株価の下振れをようやく抑制してきたのが直近の動きとなっています。
こうした株価の状況を見て今後、同社は投資家の理解を求めるためにIRを積極的に行うことを表明しています。
下方修正の発表翌日に出来高が40万株以上に膨らんだ同社株ですが、その後10日を経て出来高が縮小。売り圧力が小さくなってきたように感じられますが果たして今後の株価の行方はどうなりますでしょうか。
(炎)
(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。万が一、事実と異なる内容により、読者の皆様が損失を被っても筆者および発行者は一切の責任を負いません。)