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 「人が足りない」「有効求人倍率が過去最高レベル」と言われているのに景気好転の実感が乏しい。成長率も低いし人件費も中々上がらない・・・等々と言われて久しいですが、理由には幾つか分かり易いものがあります。

 そのうちの最も重要な要因としてセーフティーネットの脆弱性があります。
 転職市場(転職支援システムと言うべきか?)の整備の一環とも言えると思います。これが有効に機能すれば転職し易い人財市場が生まれるとともに人件費も上がるはずです。

 転職市場が機能している前提で、企業が能力の高い人財への支出をケチるようなら、その有能な方は出て行ってしまいます。転職する側としても失敗(収入を失う事)を恐れて転職を思いとどまる・・・と言うことも無くなります。
 つまり結果として有能な人財を低コストで押さえつけておくことが出来ず、相応の費用を掛けねば有能な人財ほど待遇の悪い会社を去り、待遇の良い会社へと移ってしまうことになります。企業は人への投資を怠る訳にいかず、これが繰り返される過程で自ずと人件費は上がり易くなると考えています。

 人件費を抑えたい産業界(財界)は人件費の膨張を招き易い人材の流動化を嫌がります。これと結託した(御用)組合もこれを恐れ、様々な屁理屈をつけては人材流動化に繋がる構造改革を阻止しています。それ故、数年前から提案されている「働き方改革」に対しても抵抗勢力となっており、同時に、とりあえず与党に反対したいだけの(無能)野党も、残業代カット法案だ!などと言う、政局利用しか頭にないため何時まで経っても議論が深まりません。


 もう一つ見落としがちなものとして、業績を上げられない無能経営者によって人件費が抑えられていることも大きな要因とみています。

 幾ら人が足りないと言っても、時給を4,000円、5,000円と上げていけば人は集まります。5,000円×8時間×20日=月給80万円なら…それはもう、今まで求職を諦めていた人までわんさと応募してくるはずです(^^)

 事実、最低限の給料で、しかもサービス残業までさせるなど、労働者を馬車馬のようにコキ使う業種(会社)ほど求人倍率が高いのはご承知の通りです。労働集約的な業界や、最近までの運送会社などを見れば良く分かります。

 「そんなに人件費を上げたら赤字になってしまう」=そんなことをしたら業績悪化で自分はクビになってしまう・・・と恐れる無能なトップが障害となっている訳です。

 非オーナー(サラリーマン)経営者が増えていく過程で、株主へのアピールや自身の報酬ばかりに目が向く経営に傾斜し、本来は社員を中心とするステークホルダーを大事にすべきと言う想いが薄れてきているということでしょうか。

 小売業や飲食業界のように参入障壁が低く競争が激しい業界独特の問題もありますが、様々な会社に関与してきた経験からも、正論を言わせてもらえるなら、かなりの理由はここにあると感じます。


 揉み手で上位役員になり、格段に増えた報酬を維持したいが為にリスクテイクを避け、社長の椅子にしがみ付くことに汲々としてしまう。これでは会社は伸びません。経営状態が芳しくない会社ほどこのようなケースが当てはまります。

 事業改善やイノベーションが出来ないままにズルズルと業績を低迷させ、結果としてその責任を従業員に押し付けている会社(経営陣)が多数あります。
 消極的ブラック企業と呼んでいますが、経営者の能力不足が原因で業績が伸びず人件費を上げられない。こうなると幾ら割安(PBRが1倍以下など)でも株価は上がりません。
 東芝が良い題材になりましたが、消去法的(旧来型慣行的)に選ばれたトップには注意しなくてはいけません。


 解決策は幾つもあるものの、まずは政府(特に政治家)が本気で構造改革に取り組み、流動性の高い人財市場の構築を目指さねばならず、それに加えて企業間に人財争奪競争をさせねば労働分配率は上がりません。
 役所の利権構造が障害となったり、財界の顔色をうかがったりと言う忖度政治では給料は上がらないと言い換えられます。


(街のコンサルタント)


(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。また、当該情報は執筆時点での取材及び調査に基づいております。配信時点と状況が変化している可能性があります。)


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