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事前に諸説あった日本銀行の異次元緩和の修正内容が7月31日にオープンになりました。
一部報道機関が事前に観測記事として出していた、
1)長期金利の誘導目標である「イールドカーブコントロール」の修正(±0.1%を2倍に拡大)
のほか、
2)マイナス金利適用の政策残高を半減
3)政策金利に新たに「フォワード・ガイダンス」を導入して、現在の長短金利水準を来年秋の消費税再引き上げ後の状況が落ち着く迄、維持すること
を示したのは周知の通りです。
10年物の日本国債は、2016年には一時マイナス金利での推移もありましたが、イールドカーブコントロール政策以来、過去約2年、ほぼ0.02~0.07%程度のレンジ内で推移してきましたが、今回の決定以来、ほぼ0.10%程度で落ち着いています。
今回の修正に対する直後のドル円相場の反応は、むしろ円安でした。
市場の受け取り方は、「出口が近い」ではなく、「金融緩和の長期化」が大勢だったからでしょう。
ドル円相場は、一時112円台乗せもありましたが、7月の米国雇用統計が予想より弱かったことや、今週予定されている日米通商協議を前にした警戒感から静かな展開です。通商協議において、米政府から日本への何らかの圧力が示されれば、円高への動きが起きる可能性も考えての動きかと思います。
また、毎年8月は需給(米債の利払いの円転需要も含め)からも円高の傾向が強いこともあり、季節要因も手伝い、しばらくドル円相場の上値は重い展開が続きそうです。
ドル円相場を見る上で、もう1つ見逃せないのが、人民元の動きです。
米中の貿易問題が深刻化してから、下落が続いてきた人民元に対して、先週から中国人民銀行が、人民元安定の為の諸策を講じ、各銀行にも為替安定のための協力を求めています。米中貿易協議において人民元安放置は、問題になると見て、当局としては、人民元安に歯止めをかけたいところでしょう。
6~7月には、人民元安と円安の連動が見られていましたので、円相場を見る上でも人民元の動きから目が離せません。
年初来の主要通貨の対米ドルでのパフォーマンスを見ると、新興国通貨を中心に、ドル全面高(円は1.1%の円高ドル安)になっています。
ドル相場の、相対的強弱を示すドル・インデックスは、4月以降上昇が始まって以来、高値圏での推移となっています。
トランプ政権の諸政策もあり、2018年第2四半期のGDP成長率速報値は前期比4.1%(予想通り)と好調さを示しました。
更に高い予想もあったので、7月27日発表後にはドル安での反応になりましたが、個人消費の大幅アップ、堅調な設備投資、外需プラス寄与度の拡大、在庫の減少等、米景気、好調さを示しました。
注目したいのが、同時に発表されたのが、5年に一度統計を遡及改定される過去のGDP統計でした。中でも米国の家計貯蓄率です。
例えば、2016~2017年度は平均6.7%(従来は4.2%)と上昇修正されました。これまで、一部では、消費者が貯蓄を増やすために消費を削る必要があるのでは?と個人消費に対する懸念も言われてきたのですが、これらの改定値により、その懸念が和らぐとの楽観的な見方をする向きもあります。
今回の上方修正には、個人事業主の所得が上方修正されたことが主因で、労働賃金の上昇が背景というわけではないようですが、今回の貯蓄率の上昇修正は、これまで考えていた以上に、GDPの大きな部分を占める個人消費の今後の伸びに期待を抱かせます。
好調さの反動を懸念しがちですが、米国景気が予想以上に好調さを保つ可能性も頭に入れておいた方が良いのかもしれません。
季節要因もあり、静かな展開が暫くと思いますが、あちこちで火種は燃えているので、油断せずに参りたいものです。
今日、明日と、台風13号の接近が伝えられています。守りを固めつつ、どこにも深刻な影響がなきよう祈りたいと思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
※8月8日東京時間14時執筆
本号の情報は8月7日のニューヨーク市場終値ベースを参照しています。
なお、記載内容および筆者見解は参考情報として記しています。
式町 みどり拝
(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。)