日本では半期末、そして今年の第3四半期が終了し、最終四半期が始まりました。
そんな9月最終週、イタリアの財政拡大を巡った混乱から、イタリア国債が売られ、対ドイツ国債利回りとの10年ものスプレッドは2%台の半ばから3%に拡大、通貨ユーロ、欧州株が弱い展開となりました。
報道によると、イタリアの財政計画で、財政収支対GDP比は2019年でマイナス2.4%になり、EUの定めるマーストリッヒ条約の基準(財政赤字対GDP比3%以内)には収まっているものの、赤字規模が今年4月に前政権が出した見通しの2%を上回っていて、19年以降も改善しない見通しとなっていることから懸念が広がった格好です。イタリア現政権の財政計画は、これまで心配されてきましたので、「やはり」の印象があります。
直近、本日10月3日のイタリア紙で、政府が2021年に向けて2%へ近づけていく方針を来年度予算案に盛り込むとの報道が伝わり、ユーロに買い戻しが入ってはいますが、以前から懸念されてきたイタリアとEUとの対立構造。今後も何かとネガティブ材料になると思います。
イタリアの財政問題を巡る「イタリア・リスク」が浮上した先週。25日~26日には、米国では金融政策決定会合FOMCが開かれました。
決定は予想通り、0.25%の追加利上げ(誘導目標を2%~2.25%に)、バランスシート上の資産(米債、モーゲージ債)の再投資停止額の増額を決めました。また、声明文から金融政策は「緩和的」がなくなりました。金融緩和政策からの正常化が終了したことを印象づけます。今後、金融資本市場で何か起こった場合には、利下げというツールを使えるのり代ができたと言えます。
一方、今後注目されるのは、12月のFOMCでの利上げです。
FOMC会合参加者のうち12名が18年中に4回目の利上げ実施を予想しているところから確率は高いと言えます。今のところ、市場予想(ブルームバーグ社)では70%の利上げ確率となっています。
利上げを阻む要因があるとすれば、今後発表される経済指標以上に、中間選挙の結果でしょう。上下院、またはどちら一方でも民主党が大きく逆転して、トランプ政権の今後の財政拡張の政策実施がむずかしくなり米国経済の先行きが暗くなります。
また、注目しておきたいのは、現在でも長短金利の超縮小で10年と2年の米国債の利回りスプレッドが0.20台と歴史的にも小さい水準ということです。今後の継続的な利上げ→短期金利上昇により、長短利回りが逆転ともなると、金融引き締めの行き過ぎという株式市場への悪いインパクトを与えるリスクも考えられます。
米国金利の上昇をベースに、為替市場では米ドル高が続いています。
ユーロは、イタリア財政問題も絡んで、ユーロ安ドル高に。また、ドル円は、動かない!と嘆いていた声が届いたのか一時114円台をつけ、年初高値を抜いてきました。
ドル高円安基調の背景には、ドル金利上げ(10年債はこのところ3%台をキープ)、日本の金融政策現状維持と格差が広がったことがあります。金利面の格差、また、バランスシート面での量の格差の拡大が続いています。
市場では、これまでなら、日米貿易の問題が起これば、円高に動いていた相場が、大きな影響を受けておらず、背景の変化を感じます。
ドル円の上昇の背景に実需の強さを上げる向きもあります。ドル買い(輸入決済済や債券、海外企業買収による投資)が潜在的に多いことによる下値の堅調さに支えられている面が強いかもしれません。
原油価格の上昇(直近のWTI75ドル台)により、日本の原油輸入決済額も上昇していることもあってか、直近の貿易収支統計は赤字でした。
今回のドル高円安基調は、所謂アベノミスクが始まって以来の日本の異次元金融政策が影響した投機色も強かった急激な円安への動きとは異なり、今回は「通商戦争」も含めた米国の政策の影響を受けていると言えます。毎日のようにスキャンダラスな話題が伝わるトランプ氏ですが、今のところ結果として米国経済の強さは否めません。
11月の中間選挙の結果も含めて、やはり当たりまえになりますが、米国の動向を見ていくしかなさそうです。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
※10月3日東京時間13時執筆
本号の情報は10月2日のニューヨーク市場終値ベースを参照しています。
なお、記載内容および筆者見解は参考情報として記しています。
式町 みどり拝
(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。)