今週も、金曜日のザラ場中に執筆しています。
本日(8月2日)の東京株式市場は、前日比500円を超える下落に見舞われています。
先週、筆者は以下のように記述いたしました。
「振り返ってみますと、今年(2019年)に入ってからの内外の株式相場の動向は、トランプ大統領と米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長の言動が左右してきたとしても過言ではないと思います。米中通商協議に関するトランプ大統領のコメントに市場関係者は一喜一憂し、パウエル議長のコメントが金融緩和色を強めるに従って長期金利が低下し、株式相場の回復につながりました。この間、世界景気および主要国の主要企業の業績は減速傾向を強めてきましたので、株式相場は、いわば「金融相場」的色彩が色濃くなってきたと解釈できると思います。」
今週の金融資本市場は、まさに、パウエル議長とトランプ大統領の言動により、大きく動く展開となりました。
FRBは、7月の米連邦公開市場委員会(FOMC。30~31日)で政策金利の0.25%の引き下げを決定しましたが、パウエル議長はFOMC終了後の記者会見で利下げの継続を否定しました。現在の底堅い米国の景気を反映したとはいえ、これは、あまりに愚直なコメントですね。
「米国景気に減速の兆しが見えれば、再度の利下げを検討する」程度のことは言っても良いと思うのですが(苦笑)。この点では、黒田日銀総裁の方がはるかに老練です。
このパウエル議長のコメントに対し、トランプ大統領は早速、不満を表明。「利下げ打ち止め」とみた米国の株式相場は急落し、米国の長期金利は上昇。外為市場でも、円安ドル高が進みました。
ところが、翌1日、トランプ大統領は、中国との通商交渉が思うように進まないことに業を煮やした体で、「9月1日から3000億ドルの中国製品に10%の追加関税を課す」と発言。これにより、戻りかけていた米国株は一転して急落。米国の長期金利も急低下。外為市場でも、円高ドル安が進行するに至りました。
トランプ大統領が来年の大統領選で勝利するためには、景気の浮揚が不可欠であり、早晩中国との間で何らかの妥協を成立させるものと、筆者は考えます。それを効果的なものにするために、あえて「制裁関税第4弾を打ち出した」とも思いたくなります。FRBも利下げの継続に追い込まれ、それは来年以降の米国景気の浮揚に寄与するものと思われます。
いずれにしても、トランプ大統領とパウエル議長の言動に一喜一憂する展開は、まだまだ続きそうですね。
(水島寒月)
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